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「…なにしてんの、」
「…べつに」
「何でこんなに体冷たいのって聞いてんの、唇真っ青だよ!?お湯残ってるよね、もう一回浸かってきな!!」
「いい、はいらない、ねる、」
「ダメに決まってるでしょ、ほらおいで、」
「やだっ、はいらないっ!!」
「風邪ひくよ?うわっ、ほっぺも冷たい!」
「ぁうっ、」
「もーーーー、ほんとに入んないと…って、」
座り込んで体育座りで前をシャツで隠していても、バレるものはバレる。冷水を浴びて収まるものじゃないのだから。
「…出来なかった?」
呆れながら腕を引っ張っていた秋葉さんの声が急に優しくなる。もうこれ以上見ないで。もう、ほっといて。
「…どうやったらおさまる?」
友人は言っていた。何か別の真面目なことを考えたり、萎える映像を思い出したら収まるって。
「どうやったら…って…」
「っぁっ、」
気持ち悪い。頬に手が触れただけなのに。無意識に出てしまう声が自分から発されてるっていう事実がもう死にそう。
「さわ、んないでぇ、」
前、苦しい。寒いのに顔、熱い。クラクラするほど体が跳ねて、無意識に腰を動かしてしまう。
「やっぱり抜くのが1番スッキリするよ?あ、何か動画とか見る?…俺そういうのあんまり詳しくないからあれだけど…」
「いらないっ!!そんな汚いこと、しないっ!!」
前を痛いぐらいに握りしめて、クネクネと尻が動いて。どれほどまでに滑稽だろう。この格好の方がよっぽど汚くて醜い。でも、ジクジクに疼く腹は違和感で、気持ち悪くて。
「汚いことって…宇津希も俺もトイレいくでしょ?それと同じ。生理現象じゃん」
「ちが、ぅ、ちがぅ、」
こんなのが生理現象でたまるか。小便や排便をする時に、こんなに不快な気持ちにならないだろ?『あの時』を鮮明に思い出してしまう、こんなのが。
「やだ、ぜったいしない、やらない、」
「分かったわかった。じゃあせめて、お布団くるまってくれる?」
「ぇ、」
「本当に風邪ひいちゃうから。嫌なら廊下でとくし」
バサリと肩まで分厚い布団を巻き付けられ、水に濡れまくった髪をタオルで乱雑に拭かれ、肩にかけられる。
「はい、これでよし。俺居ない方がいいよね?落ち着くまで待ってるよ」
「ぁ、」
何で。こんな夜中に意味不明なことを言っている人間に、何でこんなに優しいのだろう。
「…ぃぃ、ここ、いて…」
1人、怖い。見られたくないけど、心細い。シャワーの時、それに耐えきれなくなって出てきたくらいに。
「わがまま、わかってるけど、っ、」
「ん、後ろ向いとくね」
防水シーツを剥いだベッドに乗って、反対側を向いてスマホを触る秋葉さん。
「っ、ふ、、」
話し声がないから、静か。聞こえるのは俺のキショい息だけ。寝ようとしても頭は覚醒している。何を考えれば忘れられる?どうすればこの状態から逃げだせる?寒いのに、中心だけが熱い。『あの人』の声が耳のそばで聞こえる。もうどうすれば良いかわからない。体が金縛りみたいで、動けない。
キンと耳が鳴った。
息、苦しい。
「ちょっとごめんね」
「ぁっ、っ………は…」
息できない。吸ってるはずなのに、肺に穴が空いたみたい。
「っ゛、、っっ、」
「体おこしな。大丈夫、過呼吸だから」
布団越しに叩かれる背中。そんで、耳元で聞こえる、秋葉さんの声。
「っ、っ、ぁっ、」
何で。苦しいのに。苦しいのに嫌に腹が疼く。起こされた体は自分で保っていられなくて、目の前の秋葉さんの腕に倒れ込んでしまう。
「寝てたらもっと苦しいよ?ちょっとだけ失礼するね」
優しい優しい、甘い声。また、腰が跳ねた。
肩に乗せられた頭はもう、機能していない。撫でられる背中は布団越しなのに熱い。微かに密着している肩も、顔も、
「大丈夫、息ゆーっくり吸ってみよっか」
耳も。ヒクヒクと痙攣し続けている腰がまた、ビクリと。
「っはぁっ、ぁ、」
おしっこ漏れそう。でも、違うのは分かりきっている。床についた性器が擦れる。
もっと、もっと。股をめいいっぱい広げて、弓みたいに腰をそらせて。
無意識下だった腰の痙攣は今や、チンコを床に擦りつける目的にすり替わっている。
嫌なのに。ダメなのに。タラリと涎が顎を伝った。伝って、秋葉さんの服に吸収されていく。
「っひゃ、だ、ぁ、やだ、」
布団、邪魔。もっと硬い床にぐりぐりしたい。もっと、もっと。
(あれ…おれ、何考えて…)
やめなきゃ、腰止まれ。変な声も出すな。
「ぁっ、っっ、っん、」
どんどん、声、湿っぽくなってる。息が熱い。
「だいじょうぶ。ゆーっくり吐いてみ?」
この苦しさはどっちだろう。息は多分、出来ている。苦しいけど、手先が痺れているけど。ゼエゼエと全力疾走をした後の苦しみに変わっている。多分、そっち。チリチリと疼いていた腹は今はもう、暴れ狂っているみたい。先端は濡れて、ぐちゅりと音にならない嫌な感触。
「ごめ、なさっ、っひぃ、」
ごめんなさい、ごめんなさい。誰に謝っているのだろう。脳裏にはあの日の記憶がベッタリとへばりついていて、遠くで幻聴が聞こえて、また息ができなくなりそう。こんなに怖いのに、我慢できないというふうに治ってくれないソコは刺激を求めていて。
秋葉さんの手が髪の毛に触れる。
「っっ、ぁっ、」
声にならないほどの快楽で、全身に電流が走った。強張っていた体はぐったりと抜けて、さらに重く秋葉さんによりかかる。目の前がチカチカして、手も腰も、ビクビクと痙攣したままで。
「ぁ、ぅあ、」
ごめんなさい、また小さく呟いて、罪悪感。介抱してくれた、何の下心もない人でイった。パンツはまたぐちょぐちょに濡れている。
情緒はもう、ぐちゃぐちゃ。どうしようもなく不快で、逃げ出したい。
「落ち着いた?」
くしゃりと撫でられる頭は気持ちいい。撫でられる背中も気持ちいい。下はもう、みたくない。現実逃避だ。
「…きしょくてごめん」
そう呟くのが限界だった。もう目は涙でいっぱいなのに、また泣きそうで息が引き攣る。
「何で謝るの。悪い事してないのに」
だって、もう。もう、そういう行為、全部がトラウマなんだもん。ずっとずっと逃げてきたツケが回ってきたのかな。食欲、性欲、睡眠欲。逃げられるわけ、ないか。
「お着替えする?もう一回お風呂で暖まってきな」
支えられるように立たされれば、いやでも見える地面。しっとりと濡れた布団に多分、いや絶対、秋葉さんも気づいている。
「したぎ、すてたい…」
「洗えばいーよ」
「すてたい…ぜんぶ…お金はらうから…おねがい、」
頭はボーッとして、眠くて、疲れて、頭、熱くて。平衡感覚が分かんなくてまた、崩れ落ちる。
「宇津希?」
あ、もう目、開けられないや。
「…べつに」
「何でこんなに体冷たいのって聞いてんの、唇真っ青だよ!?お湯残ってるよね、もう一回浸かってきな!!」
「いい、はいらない、ねる、」
「ダメに決まってるでしょ、ほらおいで、」
「やだっ、はいらないっ!!」
「風邪ひくよ?うわっ、ほっぺも冷たい!」
「ぁうっ、」
「もーーーー、ほんとに入んないと…って、」
座り込んで体育座りで前をシャツで隠していても、バレるものはバレる。冷水を浴びて収まるものじゃないのだから。
「…出来なかった?」
呆れながら腕を引っ張っていた秋葉さんの声が急に優しくなる。もうこれ以上見ないで。もう、ほっといて。
「…どうやったらおさまる?」
友人は言っていた。何か別の真面目なことを考えたり、萎える映像を思い出したら収まるって。
「どうやったら…って…」
「っぁっ、」
気持ち悪い。頬に手が触れただけなのに。無意識に出てしまう声が自分から発されてるっていう事実がもう死にそう。
「さわ、んないでぇ、」
前、苦しい。寒いのに顔、熱い。クラクラするほど体が跳ねて、無意識に腰を動かしてしまう。
「やっぱり抜くのが1番スッキリするよ?あ、何か動画とか見る?…俺そういうのあんまり詳しくないからあれだけど…」
「いらないっ!!そんな汚いこと、しないっ!!」
前を痛いぐらいに握りしめて、クネクネと尻が動いて。どれほどまでに滑稽だろう。この格好の方がよっぽど汚くて醜い。でも、ジクジクに疼く腹は違和感で、気持ち悪くて。
「汚いことって…宇津希も俺もトイレいくでしょ?それと同じ。生理現象じゃん」
「ちが、ぅ、ちがぅ、」
こんなのが生理現象でたまるか。小便や排便をする時に、こんなに不快な気持ちにならないだろ?『あの時』を鮮明に思い出してしまう、こんなのが。
「やだ、ぜったいしない、やらない、」
「分かったわかった。じゃあせめて、お布団くるまってくれる?」
「ぇ、」
「本当に風邪ひいちゃうから。嫌なら廊下でとくし」
バサリと肩まで分厚い布団を巻き付けられ、水に濡れまくった髪をタオルで乱雑に拭かれ、肩にかけられる。
「はい、これでよし。俺居ない方がいいよね?落ち着くまで待ってるよ」
「ぁ、」
何で。こんな夜中に意味不明なことを言っている人間に、何でこんなに優しいのだろう。
「…ぃぃ、ここ、いて…」
1人、怖い。見られたくないけど、心細い。シャワーの時、それに耐えきれなくなって出てきたくらいに。
「わがまま、わかってるけど、っ、」
「ん、後ろ向いとくね」
防水シーツを剥いだベッドに乗って、反対側を向いてスマホを触る秋葉さん。
「っ、ふ、、」
話し声がないから、静か。聞こえるのは俺のキショい息だけ。寝ようとしても頭は覚醒している。何を考えれば忘れられる?どうすればこの状態から逃げだせる?寒いのに、中心だけが熱い。『あの人』の声が耳のそばで聞こえる。もうどうすれば良いかわからない。体が金縛りみたいで、動けない。
キンと耳が鳴った。
息、苦しい。
「ちょっとごめんね」
「ぁっ、っ………は…」
息できない。吸ってるはずなのに、肺に穴が空いたみたい。
「っ゛、、っっ、」
「体おこしな。大丈夫、過呼吸だから」
布団越しに叩かれる背中。そんで、耳元で聞こえる、秋葉さんの声。
「っ、っ、ぁっ、」
何で。苦しいのに。苦しいのに嫌に腹が疼く。起こされた体は自分で保っていられなくて、目の前の秋葉さんの腕に倒れ込んでしまう。
「寝てたらもっと苦しいよ?ちょっとだけ失礼するね」
優しい優しい、甘い声。また、腰が跳ねた。
肩に乗せられた頭はもう、機能していない。撫でられる背中は布団越しなのに熱い。微かに密着している肩も、顔も、
「大丈夫、息ゆーっくり吸ってみよっか」
耳も。ヒクヒクと痙攣し続けている腰がまた、ビクリと。
「っはぁっ、ぁ、」
おしっこ漏れそう。でも、違うのは分かりきっている。床についた性器が擦れる。
もっと、もっと。股をめいいっぱい広げて、弓みたいに腰をそらせて。
無意識下だった腰の痙攣は今や、チンコを床に擦りつける目的にすり替わっている。
嫌なのに。ダメなのに。タラリと涎が顎を伝った。伝って、秋葉さんの服に吸収されていく。
「っひゃ、だ、ぁ、やだ、」
布団、邪魔。もっと硬い床にぐりぐりしたい。もっと、もっと。
(あれ…おれ、何考えて…)
やめなきゃ、腰止まれ。変な声も出すな。
「ぁっ、っっ、っん、」
どんどん、声、湿っぽくなってる。息が熱い。
「だいじょうぶ。ゆーっくり吐いてみ?」
この苦しさはどっちだろう。息は多分、出来ている。苦しいけど、手先が痺れているけど。ゼエゼエと全力疾走をした後の苦しみに変わっている。多分、そっち。チリチリと疼いていた腹は今はもう、暴れ狂っているみたい。先端は濡れて、ぐちゅりと音にならない嫌な感触。
「ごめ、なさっ、っひぃ、」
ごめんなさい、ごめんなさい。誰に謝っているのだろう。脳裏にはあの日の記憶がベッタリとへばりついていて、遠くで幻聴が聞こえて、また息ができなくなりそう。こんなに怖いのに、我慢できないというふうに治ってくれないソコは刺激を求めていて。
秋葉さんの手が髪の毛に触れる。
「っっ、ぁっ、」
声にならないほどの快楽で、全身に電流が走った。強張っていた体はぐったりと抜けて、さらに重く秋葉さんによりかかる。目の前がチカチカして、手も腰も、ビクビクと痙攣したままで。
「ぁ、ぅあ、」
ごめんなさい、また小さく呟いて、罪悪感。介抱してくれた、何の下心もない人でイった。パンツはまたぐちょぐちょに濡れている。
情緒はもう、ぐちゃぐちゃ。どうしようもなく不快で、逃げ出したい。
「落ち着いた?」
くしゃりと撫でられる頭は気持ちいい。撫でられる背中も気持ちいい。下はもう、みたくない。現実逃避だ。
「…きしょくてごめん」
そう呟くのが限界だった。もう目は涙でいっぱいなのに、また泣きそうで息が引き攣る。
「何で謝るの。悪い事してないのに」
だって、もう。もう、そういう行為、全部がトラウマなんだもん。ずっとずっと逃げてきたツケが回ってきたのかな。食欲、性欲、睡眠欲。逃げられるわけ、ないか。
「お着替えする?もう一回お風呂で暖まってきな」
支えられるように立たされれば、いやでも見える地面。しっとりと濡れた布団に多分、いや絶対、秋葉さんも気づいている。
「したぎ、すてたい…」
「洗えばいーよ」
「すてたい…ぜんぶ…お金はらうから…おねがい、」
頭はボーッとして、眠くて、疲れて、頭、熱くて。平衡感覚が分かんなくてまた、崩れ落ちる。
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