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「っへぇー…そーやってやるんだ…」
「秋葉さんはひっくり返しすぎ!」
「だって焦げてないか気になるじゃん」
「大丈夫だからっ、ほらお皿出して」
あの日の一件のお礼がしたいというと、じゃあ料理を教えてよ、と言われた。ワンパターンなメニューで飽きてしまって最近はもっぱらコンビニらしい。1人で食べるのも寂しいから、ということで毎週金曜日、こうして一緒に料理を作って食べ、そのまま泊まる、というルーティーンが出来上がったのである。
「ねえねえ、食べていい!?」
「っもー、じゃあ秋葉さんの分一個少なくするから」
「えー…いっぱいあるじゃん…」
「冷凍しとくの!どうせ俺が居ない時は料理しないんでしょ?」
「だって忙しくて…」
「っもー…他の作り置きあるからいいよ。全部食べちゃお」
「やった、」
よく一緒に居るようになって気づいたこと。秋葉さんは結構子供っぽい。オムライスとかハンバーグが大好きで、今日のメニューの唐揚げも揚げたてをつまみ食いさせてとうるさい。でも、作る料理全部を美味しいと言ってくれるのは単純に嬉しい。ご飯を口いっぱいに詰めて頬張る姿は同性視点でも可愛い。でも、いつも思うことがある。
「秋葉さんって彼女居ないの?」
長身で顔も巷で言う塩顔イケメンってやつで、物腰も柔らかで。毎週の金曜と土曜の予定を俺に充てて良い人材ではない。
「んー…今のところは良いかなぁ…だってほら、結構楽しいし。宇津希こそ。毎週来てもらっちゃってるけど良いの?」
「俺もまあ…しばらくは…今のままでいいし」
「今のまま「で」ってどう言うことですかぁ?俺じゃ不満ってことぉ?」
「いや、そんなこと言ってないじゃん、」
「ほんとぉ?野郎2人で味気ないって思ってない?」
「思ってない思ってない。そんなに被害妄想垂れ流すなら唐揚げ食べちゃいますよーっと」
「あ゛っ、良いもんね、宇津希のから取るし」
 唐揚げをお互いに一つずつ取った後、何だか壺にハマってしまって。声にならない笑いで息が苦しい。
「んまっ、やっぱ揚げたては良いなぁ」
ご飯粒を口元につけて満足げにほっぺを揺らす秋葉さん。
 安心した。職場では皆んな、出会いに必死。俺が先輩の家で夜泣いて拒絶したこともやんわりと広がっていて、同僚に何で、勿体ない、って詰められたから。
男じゃねえじゃん、って言われてちょっとだけ、凹んでいたから。性的な関係って煩わしい。ただご飯を食べて、美味しいってそれだけでいいのに。
(いずれ秋葉さんも…)
いずれ歳を取ったらこうやってご飯食べる時間、なくなるのかな。俺の座っているところは誰かの場所になるのかな。
(この人に彼女、出来て欲しくない…)
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