25 / 36
3-4
しおりを挟む
「っへぇー…そーやってやるんだ…」
「秋葉さんはひっくり返しすぎ!」
「だって焦げてないか気になるじゃん」
「大丈夫だからっ、ほらお皿出して」
あの日の一件のお礼がしたいというと、じゃあ料理を教えてよ、と言われた。ワンパターンなメニューで飽きてしまって最近はもっぱらコンビニらしい。1人で食べるのも寂しいから、ということで毎週金曜日、こうして一緒に料理を作って食べ、そのまま泊まる、というルーティーンが出来上がったのである。
「ねえねえ、食べていい!?」
「っもー、じゃあ秋葉さんの分一個少なくするから」
「えー…いっぱいあるじゃん…」
「冷凍しとくの!どうせ俺が居ない時は料理しないんでしょ?」
「だって忙しくて…」
「っもー…他の作り置きあるからいいよ。全部食べちゃお」
「やった、」
よく一緒に居るようになって気づいたこと。秋葉さんは結構子供っぽい。オムライスとかハンバーグが大好きで、今日のメニューの唐揚げも揚げたてをつまみ食いさせてとうるさい。でも、作る料理全部を美味しいと言ってくれるのは単純に嬉しい。ご飯を口いっぱいに詰めて頬張る姿は同性視点でも可愛い。でも、いつも思うことがある。
「秋葉さんって彼女居ないの?」
長身で顔も巷で言う塩顔イケメンってやつで、物腰も柔らかで。毎週の金曜と土曜の予定を俺に充てて良い人材ではない。
「んー…今のところは良いかなぁ…だってほら、結構楽しいし。宇津希こそ。毎週来てもらっちゃってるけど良いの?」
「俺もまあ…しばらくは…今のままでいいし」
「今のまま「で」ってどう言うことですかぁ?俺じゃ不満ってことぉ?」
「いや、そんなこと言ってないじゃん、」
「ほんとぉ?野郎2人で味気ないって思ってない?」
「思ってない思ってない。そんなに被害妄想垂れ流すなら唐揚げ食べちゃいますよーっと」
「あ゛っ、良いもんね、宇津希のから取るし」
唐揚げをお互いに一つずつ取った後、何だか壺にハマってしまって。声にならない笑いで息が苦しい。
「んまっ、やっぱ揚げたては良いなぁ」
ご飯粒を口元につけて満足げにほっぺを揺らす秋葉さん。
安心した。職場では皆んな、出会いに必死。俺が先輩の家で夜泣いて拒絶したこともやんわりと広がっていて、同僚に何で、勿体ない、って詰められたから。
男じゃねえじゃん、って言われてちょっとだけ、凹んでいたから。性的な関係って煩わしい。ただご飯を食べて、美味しいってそれだけでいいのに。
(いずれ秋葉さんも…)
いずれ歳を取ったらこうやってご飯食べる時間、なくなるのかな。俺の座っているところは誰かの場所になるのかな。
(この人に彼女、出来て欲しくない…)
「秋葉さんはひっくり返しすぎ!」
「だって焦げてないか気になるじゃん」
「大丈夫だからっ、ほらお皿出して」
あの日の一件のお礼がしたいというと、じゃあ料理を教えてよ、と言われた。ワンパターンなメニューで飽きてしまって最近はもっぱらコンビニらしい。1人で食べるのも寂しいから、ということで毎週金曜日、こうして一緒に料理を作って食べ、そのまま泊まる、というルーティーンが出来上がったのである。
「ねえねえ、食べていい!?」
「っもー、じゃあ秋葉さんの分一個少なくするから」
「えー…いっぱいあるじゃん…」
「冷凍しとくの!どうせ俺が居ない時は料理しないんでしょ?」
「だって忙しくて…」
「っもー…他の作り置きあるからいいよ。全部食べちゃお」
「やった、」
よく一緒に居るようになって気づいたこと。秋葉さんは結構子供っぽい。オムライスとかハンバーグが大好きで、今日のメニューの唐揚げも揚げたてをつまみ食いさせてとうるさい。でも、作る料理全部を美味しいと言ってくれるのは単純に嬉しい。ご飯を口いっぱいに詰めて頬張る姿は同性視点でも可愛い。でも、いつも思うことがある。
「秋葉さんって彼女居ないの?」
長身で顔も巷で言う塩顔イケメンってやつで、物腰も柔らかで。毎週の金曜と土曜の予定を俺に充てて良い人材ではない。
「んー…今のところは良いかなぁ…だってほら、結構楽しいし。宇津希こそ。毎週来てもらっちゃってるけど良いの?」
「俺もまあ…しばらくは…今のままでいいし」
「今のまま「で」ってどう言うことですかぁ?俺じゃ不満ってことぉ?」
「いや、そんなこと言ってないじゃん、」
「ほんとぉ?野郎2人で味気ないって思ってない?」
「思ってない思ってない。そんなに被害妄想垂れ流すなら唐揚げ食べちゃいますよーっと」
「あ゛っ、良いもんね、宇津希のから取るし」
唐揚げをお互いに一つずつ取った後、何だか壺にハマってしまって。声にならない笑いで息が苦しい。
「んまっ、やっぱ揚げたては良いなぁ」
ご飯粒を口元につけて満足げにほっぺを揺らす秋葉さん。
安心した。職場では皆んな、出会いに必死。俺が先輩の家で夜泣いて拒絶したこともやんわりと広がっていて、同僚に何で、勿体ない、って詰められたから。
男じゃねえじゃん、って言われてちょっとだけ、凹んでいたから。性的な関係って煩わしい。ただご飯を食べて、美味しいってそれだけでいいのに。
(いずれ秋葉さんも…)
いずれ歳を取ったらこうやってご飯食べる時間、なくなるのかな。俺の座っているところは誰かの場所になるのかな。
(この人に彼女、出来て欲しくない…)
20
お気に入りに追加
257
あなたにおすすめの小説
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
待てって言われたから…
ふみ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。
//今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて…
がっつり小スカです。
投稿不定期です🙇表紙は自筆です。
華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる