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第2話 救われた世界の中で勇者はというと……
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勇者マコトと大魔王コサカの間で世界の支配権を巡る契約が成った瞬間、世界中を覆っていた闇が晴れ、光が世界を包み込む。
「国王陛下! 外を、外を見て下さい!」
「おお、光が……勇者マコト。ついに魔王を倒したのだな。」
勇者を異世界から召喚し、魔王討伐に送り出したハジマリノ王国の国王は、世界が魔王の恐怖から解き放たれ平和を取り戻したことに安堵する。
「先代の国王様方。勇者マコトが魔王を倒し、世界を救ってくれました。」
城の外を眺めると、国民たちも一様に歓喜の表情を浮かべている。
一方、その頃、大魔王コサカと勇者マコトは南極大陸にいた。
「お、おい、これはどういう事だ?」
氷点下50℃の極寒の世界に急に放り出された勇者マコトは、寒さにガクブルと震えながら大魔王コサカに話しかける。
しかし返事がない。まるで屍のようだ。
「誰が屍かぁ! 死んでないわ!」
「心を読むな! だったら返事しろやぁぁぁぁ!」
大魔王コサカも勇者マコトと同じようにガクブルと震えながら、口を開く。
「煩いわ! お主のせいだろうが! お主が欲張って世界の半分を南極大陸とそれ以外に分けたからこんな事になっているんだろうがぁぁぁぁ!」
「俺を嵌めようと思っていた張本人が開き直るんじゃねぇぇぇ!」
大魔王コサカと勇者マコトが、『はぁはぁ、ぜぃぜぃ』と息を吐くとまるでダイヤモンドダストのように息が氷の粒へと変わっていく。
「煩い煩い煩いわ! お主のお陰で、魔王軍は今とんでもない事になっているんだぞ! 周りを見てみろ! お主が欲張って世界の半分を南極大陸とそれ以外に分けたせいで、お主が支配する世界にいた魔物たちが全部南極大陸に強制転移させられてしまったではないか! どうすんだこれ、どうすんのこれ!」
周囲を見渡すと、あちらこちらに凍ったスライムや、寒さに震えるキラーパンサーの姿が見える。
「やったじゃねーか! 本当の意味で魔王軍を倒す事が出来て万々歳だわ! っていうかその言葉、世界の半分をくれてやる発言をしたお前にだけは言われたくねーよ!」
「ぐっ、仕方がない。勇者マコトと言い争っていても仕方がない。魔王城を召喚し、少しでも我が魔物たちを保護しなければっ……。」
「【魔王城召喚】。」
大魔王コサカがそう呟くと、目の前にボロボロの魔王城が現れる。
隙間風が入り込んできそうな風貌で実に居心地が悪そうだ。
大魔王コサカは、ボロボロの魔王城を見て呆然としている。
「な、なぜ魔王城がボロボロにっ!」
大魔王コサカとの戦いは数日間に渡り魔王城で行われた。
そう。最強呪文の撃ち合いを、魔王城の中で行ったのだ。むしろボロボロにならない方がおかしい。
しかし、倒壊寸前の魔王城であっても、氷点下50℃の世界では、建物の風貌を保っているだけまだマシである。
「よし、良くやったぞ大魔王コサカ。褒めて遣わす。俺は魔王城の煉獄の間に籠るからあとは好きにしてくれ。」
「ちょっと待てぃ! なにを貴様、一番暖かい場所をキープしようとしているのだ! ワシがそこを使うに決まっているだろ!」
大魔王コサカは勇者マコトの肩を掴むと、そう口にする。
「俺の肩を掴むんじゃねー! 寒いんだよ! つーか、なんで俺まで南極大陸に跳ばされてんだ! おかしいだろうがぁぁぁぁ!」
「ワシがお主を道連れにしたからに決まっているだろ!」
勇者マコトは大魔王コサカの腕を掴むと、捻り上げて背負い投げをきめた。
「テメェのせいかぁぁぁぁ!」
大魔王コサカは、着地を失敗しモロに背中から落ちてしまう。
「なぜ俺を道連れにした!」
「ぐふぅっ! き、決まっているだろ、お主にだけ良い思いをさせてなるものか。その思いただ一つよ! 此処から逃れる為には転移魔法が必要なのだ、ざまぁみろ!」
大魔王コサカがそう呟くと、勇者マコトは驚いた様な表情で呟く。
「えっ、そんなんで帰れるの⁉︎」
「なっ、お主……まさか転移魔法を使えるのか⁉︎」
大魔王コサカは『しまった!』と言わんばかりの表情を浮かべる。
「ああ、じゃあな大魔王コサカ! 俺は南の島でバカンスを楽しんでくるぜ! お前も南極大陸でバカンスを楽しめよ! スキーが出来て羨ましいぜ! じゃあなっ! アデュー!」
「お、お主、まさか一人であの暖かい世界に帰る気か! 待て、待たんか! おいっ!」
大魔王コサカが一生懸命に手を伸ばすもあと一歩手が届かない。
「お前と会うのもこれが最後かと思うと嬉しいぜ! 餞別に俺の元いた世界にあった夏の風物詩、≪かき氷機≫でもくれてやるよ! これでそこら辺の氷をガリガリ削って甘いストロベリーシロップでもかけて食べるんだな! 【転移】。」
勇者マコトはかき氷機を大魔王コサカに投げつけると、勇者マコトの支配する世界、魔王城跡地へと転移した。
勇者マコトが魔王城跡地へ転移すると、温かい光が差してくる。
「大魔王コサカ……強敵だった。俺以外が勇者だったら倒す事が出来なかっただろう。」
勇者マコトはさり気なく自分を自画自賛すると、満足げな表情を浮かべる。
「これが俺の(守った)世界か……。」
勇者マコトは自分の支配する世界を、魔王城跡地の展望から見渡すと、爽やかな笑みを浮かべた。
「国王陛下! 外を、外を見て下さい!」
「おお、光が……勇者マコト。ついに魔王を倒したのだな。」
勇者を異世界から召喚し、魔王討伐に送り出したハジマリノ王国の国王は、世界が魔王の恐怖から解き放たれ平和を取り戻したことに安堵する。
「先代の国王様方。勇者マコトが魔王を倒し、世界を救ってくれました。」
城の外を眺めると、国民たちも一様に歓喜の表情を浮かべている。
一方、その頃、大魔王コサカと勇者マコトは南極大陸にいた。
「お、おい、これはどういう事だ?」
氷点下50℃の極寒の世界に急に放り出された勇者マコトは、寒さにガクブルと震えながら大魔王コサカに話しかける。
しかし返事がない。まるで屍のようだ。
「誰が屍かぁ! 死んでないわ!」
「心を読むな! だったら返事しろやぁぁぁぁ!」
大魔王コサカも勇者マコトと同じようにガクブルと震えながら、口を開く。
「煩いわ! お主のせいだろうが! お主が欲張って世界の半分を南極大陸とそれ以外に分けたからこんな事になっているんだろうがぁぁぁぁ!」
「俺を嵌めようと思っていた張本人が開き直るんじゃねぇぇぇ!」
大魔王コサカと勇者マコトが、『はぁはぁ、ぜぃぜぃ』と息を吐くとまるでダイヤモンドダストのように息が氷の粒へと変わっていく。
「煩い煩い煩いわ! お主のお陰で、魔王軍は今とんでもない事になっているんだぞ! 周りを見てみろ! お主が欲張って世界の半分を南極大陸とそれ以外に分けたせいで、お主が支配する世界にいた魔物たちが全部南極大陸に強制転移させられてしまったではないか! どうすんだこれ、どうすんのこれ!」
周囲を見渡すと、あちらこちらに凍ったスライムや、寒さに震えるキラーパンサーの姿が見える。
「やったじゃねーか! 本当の意味で魔王軍を倒す事が出来て万々歳だわ! っていうかその言葉、世界の半分をくれてやる発言をしたお前にだけは言われたくねーよ!」
「ぐっ、仕方がない。勇者マコトと言い争っていても仕方がない。魔王城を召喚し、少しでも我が魔物たちを保護しなければっ……。」
「【魔王城召喚】。」
大魔王コサカがそう呟くと、目の前にボロボロの魔王城が現れる。
隙間風が入り込んできそうな風貌で実に居心地が悪そうだ。
大魔王コサカは、ボロボロの魔王城を見て呆然としている。
「な、なぜ魔王城がボロボロにっ!」
大魔王コサカとの戦いは数日間に渡り魔王城で行われた。
そう。最強呪文の撃ち合いを、魔王城の中で行ったのだ。むしろボロボロにならない方がおかしい。
しかし、倒壊寸前の魔王城であっても、氷点下50℃の世界では、建物の風貌を保っているだけまだマシである。
「よし、良くやったぞ大魔王コサカ。褒めて遣わす。俺は魔王城の煉獄の間に籠るからあとは好きにしてくれ。」
「ちょっと待てぃ! なにを貴様、一番暖かい場所をキープしようとしているのだ! ワシがそこを使うに決まっているだろ!」
大魔王コサカは勇者マコトの肩を掴むと、そう口にする。
「俺の肩を掴むんじゃねー! 寒いんだよ! つーか、なんで俺まで南極大陸に跳ばされてんだ! おかしいだろうがぁぁぁぁ!」
「ワシがお主を道連れにしたからに決まっているだろ!」
勇者マコトは大魔王コサカの腕を掴むと、捻り上げて背負い投げをきめた。
「テメェのせいかぁぁぁぁ!」
大魔王コサカは、着地を失敗しモロに背中から落ちてしまう。
「なぜ俺を道連れにした!」
「ぐふぅっ! き、決まっているだろ、お主にだけ良い思いをさせてなるものか。その思いただ一つよ! 此処から逃れる為には転移魔法が必要なのだ、ざまぁみろ!」
大魔王コサカがそう呟くと、勇者マコトは驚いた様な表情で呟く。
「えっ、そんなんで帰れるの⁉︎」
「なっ、お主……まさか転移魔法を使えるのか⁉︎」
大魔王コサカは『しまった!』と言わんばかりの表情を浮かべる。
「ああ、じゃあな大魔王コサカ! 俺は南の島でバカンスを楽しんでくるぜ! お前も南極大陸でバカンスを楽しめよ! スキーが出来て羨ましいぜ! じゃあなっ! アデュー!」
「お、お主、まさか一人であの暖かい世界に帰る気か! 待て、待たんか! おいっ!」
大魔王コサカが一生懸命に手を伸ばすもあと一歩手が届かない。
「お前と会うのもこれが最後かと思うと嬉しいぜ! 餞別に俺の元いた世界にあった夏の風物詩、≪かき氷機≫でもくれてやるよ! これでそこら辺の氷をガリガリ削って甘いストロベリーシロップでもかけて食べるんだな! 【転移】。」
勇者マコトはかき氷機を大魔王コサカに投げつけると、勇者マコトの支配する世界、魔王城跡地へと転移した。
勇者マコトが魔王城跡地へ転移すると、温かい光が差してくる。
「大魔王コサカ……強敵だった。俺以外が勇者だったら倒す事が出来なかっただろう。」
勇者マコトはさり気なく自分を自画自賛すると、満足げな表情を浮かべる。
「これが俺の(守った)世界か……。」
勇者マコトは自分の支配する世界を、魔王城跡地の展望から見渡すと、爽やかな笑みを浮かべた。
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