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第四章 ノースの街作り

第115話 マスターギフトホルダーの真実①

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「ノース様。フォーリッシュ様の件、いかが致しましょうか?」
「う、う~ん。どうしようかな? 少し様子を見てからにしない?」

 僕がそう提案すると、アメリアさんが少し驚いた表情を浮かべる。

「えっ? でも、それではホオズキの街が……」
「う、うん。そうかもしれないけど、そうならないかもしれないじゃない? もし、本当にホオズキの街が他国に侵略されそうな時は、マッシュルーム兵を送り込んで護ればいい訳だし、どうかな?」

 実際、あの規模の街であれば簡単に侵略することが……。いや、護ることは容易い。
 ま、まあ僕は乗り気じゃないけどね?

「そうですか? まあノース様がそう言うならいいのですけれども……」
「う、うん。とりあえず、棚上げしようよ。多分、棚上げしている内になんとかんる気がするな~なんて……」

 具体的にはナビさんが放つ予定のマッシュルーム・アサシン辺りがマニピュレイトタケという名の洗脳キノコをフォーリッシュ兄様に食べさせに行くから、なんとかなるんだけどね……。

 僕は心の中でフォーリッシュ兄様に合掌する。

 ま、まあ、洗脳すると言っても自我を奪う訳じゃないし、勇者のブレイブさんも少しおかしなことを言う人になってしまっただけで、日常生活を送る上では問題ないはずだ。
 そう問題ないはずである。多分……。

 そんなことを考えていると、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。

 <ノース様。大変です。あの筋肉馬鹿。隣国に兵士を送り出しました。ホオズキの街から隣国までは距離があまりに近く、もう一刻の猶予もありません。いかがいたしますか?>

(ええっ!? もう隣国に兵士を送り出しちゃったの!?)

 亡命する気満々じゃん!

 <はい。その通りです。それで、ナビに更なる名案があるのですが、聞いて頂けますか?>

(う、うん。名案ってなに?)

 ナビさんの考える案だ。
 不安は残るけど、ナビさんの言うように名案であることを祈りたい。

 <実はあの筋肉馬鹿が送り出した兵士は、実は既にマニピュレイトタケに寄生されている兵士達なのです。折角なので、この機会を利用して隣国から増援という名の苗床を誘致し、そのまま隣国の領地をマニピュレイトタケに寄生された兵士達に乗っ取らせようと思うのですが、いかがでしょうか?>

 撃退した兵士達にマニピュレイトタケを食べさせて備えていたなんて流石はナビさんだ。ただそれだけに苗床の誘致という言葉が凄く気になる。
 それだけじゃない。
 隣国の領地をマニピュレイトタケに寄生された兵士達に乗っ取らせるってどういうことっ!?

(いや、いかがでしょうかもなにもないような気がするんだけど……)

 <そうですよね? 言われて見れば、ノース様に伺う必要もない位の些事でした。それともう一つ>

(いやっ!? 些事の一言で流さないでっ!? そして、まだなにかあるの!?)

 <はい。良い機会ですので、辺境と呼ばれているこの辺り一帯の土地を開拓したいと思います。なに、マッシュルーム兵が本気を出せば簡単なことです>

(ええっ!? ナ、ナビさん本気で言っているの!?)

 <ええ、ナビは本気です。本気でこの辺り一帯を支配し、国を興そうとすら思っております>

(く、国を興すのっ!?)

 ナ、ナビさんは一体なにを考えているのだろうか!?
 そんな大それたことできるはずが……。

 <ノース様はまだまだナビのことを過小評価しているようですね。甘いです。甘々です。ナビが本気になればその位のこと、簡単にできるに決まっているじゃありませんか>

 いや、一切過小評価なんてしていませんけど!?
 どうしよう。ナビさんのポテンシャルが留まる所を知らない。青天井だ。

 <所でノース様は国家の興し方をご存知ですか?>

(い、いや、知らないけど……)

 <でしたら教えて差し上げましょう。国家は一般的に領土、人民、主権のから成るもので、土地があり、そこに住む人がいて、その国の政治を自分達で決める権利を有していること。たったそれだけの要件で簡単に作ることができます。つまり、今日からここがナビ達の国だと宣言し、他国の侵略を排除できるほどの力を持っていれば簡単に国を興すことができるのです>

(えっ? でもこの街はお父さんの庇護下に入るんだよね? そうだとしたら、この街はガーベラ王国に編入されるんじゃ……)

 <いえ? そんなことをする気はありませんよ?>

(ええっ!? そうなのっ!?)

 <それはそうですよ。誰が好き好んで弱い国の支配下に入らなければならないのですか? ノース様は気付いていないかもしれませんが、ここには人智を超えたマスターギフトホルダーが二人もいるんですよ?>

(で、でもその理屈だと、ガーベラ王国側にもマスターギフトホルダーがいるかもしれないじゃん!)

 そう言うとナビさんは呆れたかのような顔文字を浮かべた。

 <(*´Д`)=3ハァ……。ノース様はまだまだ、なにもわかっていないみたいですね>

 いますぐその人を小馬鹿にしたような顔文字を止めろといいたい。

(なにがわかっていないって言うのさ!)

 するとナビさんから意外な回答が返ってきた。

 <そんなこと、決まっているじゃありませんか。この国の主要戦力にマスターギフトホルダーはおりません。なぜならば、マスターギフトホルダーはその危険性から冷遇されているからです>

(ええっ!? そうなの!?)

 初めて知る事実に、俺は驚きの表情を浮かべた。
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