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第四章 ノースの街作り
第108話 世界樹の街⑧
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「おおっ……。あれは正しく世界樹」
エルフの集落を治めていた長、ダチュラは世界樹を見上げると感嘆とした声を上げる。
エルフにとって世界樹は自分の命と生活の次に大切な存在。
他のエルフ達も世界樹を見て笑みを浮かべている。
「それにしても、これは一体……」
世界樹を求め、いままで住んでいた湧泉から移動してみれば、そこには世界樹を大きく取り囲むように壁が建てられていた。
触って見ると、中々、素晴らしくいい感触がする。
なんだろう。なんとなく安心するというか、私達、エルフを守り生活を支えてくれる精霊と同等のなにかのような感じだ。
もしや、これは精霊壁?
いや、そんなはずがない。あれはお伽噺の中で出てくる架空の存在だ。
なにより、精霊壁であるとすれば、精霊が私達を邪魔したことになる。
私達が世界樹の下に向かうことを精霊が邪魔をするはずがない。
精霊は私達の美貌を讃え、私達に感謝されることを悦びに生活を盲目に支えてくれる奴隷のような存在。
私達に甘い精霊が、世界樹の下に移動したいと願う私達を妨げるような行動をするはずがない。
いや、もしかしたら、そうなのか?
世界樹はすべての精霊の故郷。いわば、私達を甘やかしたい数多の精霊の住まう場所。
私達からの寵愛を独り占めしたい精霊達が邪魔をしていると……そういうことか?
――あり得る。
非常にあり得るから困る。
しかし、私達の生活が精霊の献身の上に成り立っているのもまた事実。
無碍にはできない。
しかし、私達が豊かな生活を送るためには世界樹の存在が不可欠。なにを犠牲にしてでも、手に入れなければならない。
くっ、一体どうすれば……。
思考を巡らせていると、一つの答えにたどり着いた。
そうだ。やっぱり、この壁を壊そうと。
精霊に愛されている私達のやることなら、精霊達は許してくれるはずだ。
昔、私がまだ子供だった頃、祖父が大事にしていた百万コルもするトネリコの樹を、基地作りをする為に知らずに伐採してしまった事がある。
その時、祖父は笑って許してくれた。
まあ、その後、意気消沈する祖父を見た祖母と母に滅茶苦茶怒られたが、祖父と同じように私達の進路を妨害する精霊壁を破壊するためなら精霊達も笑って許してくれるだろう。
「よし。それでは皆さん。これを破壊し、私達は前に進みます。攻撃開始!」
「「はい!」」
私達は一度壁から離れると、精霊の力を借り、壁に魔法をぶつけていく。
エルフは精霊との親和性が高く、精霊の力を借りて魔法を行使することにより、通常より高威力の魔法を放つことができる。
なのに……。
なのに……まったく壁が壊れない。
それ所か、傷一つ付かずにいた。
「そ、そんな……どうなっているのですっ!?」
ズカズカ、バカバカと音を立てて、火や水、風や土属性の魔法が壁に当たるも、まったくの無傷。
それ所か壁に向けて放った魔法が倍の強さになって跳ね返ってくる始末だ。
「くっ! これでは埒があきません。皆さん、大規模魔法を展開しますよ!」
エルフの長、ダチュラはそう言うと、跳ね返ってくる魔法を避け、壁から離れる。
ダチュラが離れた事を確認すると、エルフ達は円陣を組み精霊から魔力を集め始めた。
エルフの使う大規模魔法。
それは精霊から集めた魔力を長のダチュラに集中し放つ魔法。
エルフの集落の中でも、魔力を集め放つことができるのは副長を除き他にはいない。
「さあ、いきますよ!」
そう言うとダチュラに魔力が集まっていく。
ダチュラは銃を撃つようなポーズを取ると、そのまま引き金に見立てた指を折り曲げた。
すると、とんでもない威力の魔力がダチュラの指先から放出される。
魔力が放出された瞬間、壁の前に数体のモンスターが立ち塞がった。
そのモンスターは、持っていた盾で放った魔力を弾き飛ばすと、ダチュラに向かって剣を向けてくる。
「い、一体、なんなのっ……。このフォルム。まさかキノコ??」
マッシュルーム・ソルジャーとマッシュルーム・アサシンは、エルフを前に盾と剣を構えると、にじり寄る。
「くっ!? な、なんなのよ。このモンスターは!?」
こんなモンスターがこの森にいるなんて聞いていない。
それになんだ。私達の魔力をたかが盾一つで弾き飛ばしたっ!?
あ、あり得ない……そんなこと、あってはならない。
見渡すと、周囲をキノコ型モンスターが取り囲んでいた。
「ダ、ダチュラ様……。一体どうしたら……」
「そ、そんなこと、私が聞きたい位よ!」
そう叫び声を上げるも、キノコ型モンスターがにじり寄ってくる。
「ち、近寄るんじゃない! 近寄るんじゃありません!」
「ダチュラ様!」
魔法を放ちキノコ型モンスターを迎撃しようとするも、キノコ型モンスターに魔法は通じない。魔法は盾により弾き飛ばされ、剣により持っていた武器は破壊されてしまう。
「も、もう限界です! わ、私達はこれから一体どうなるのでしょうかっ!?」
「し、知る訳ないでしょう!」
私達ににじり寄るキノコ型モンスターはどこからか取り出した紐を手に持つと私達を縛り上げ、車輪の付いた荷台に乗せていく。
「わ、私達を一体、どこに連れていく気なのよー!」
私達は紐に縛られ拘束されると荷台に乗せられ、そのままどこかへと運ばれていった。
エルフの集落を治めていた長、ダチュラは世界樹を見上げると感嘆とした声を上げる。
エルフにとって世界樹は自分の命と生活の次に大切な存在。
他のエルフ達も世界樹を見て笑みを浮かべている。
「それにしても、これは一体……」
世界樹を求め、いままで住んでいた湧泉から移動してみれば、そこには世界樹を大きく取り囲むように壁が建てられていた。
触って見ると、中々、素晴らしくいい感触がする。
なんだろう。なんとなく安心するというか、私達、エルフを守り生活を支えてくれる精霊と同等のなにかのような感じだ。
もしや、これは精霊壁?
いや、そんなはずがない。あれはお伽噺の中で出てくる架空の存在だ。
なにより、精霊壁であるとすれば、精霊が私達を邪魔したことになる。
私達が世界樹の下に向かうことを精霊が邪魔をするはずがない。
精霊は私達の美貌を讃え、私達に感謝されることを悦びに生活を盲目に支えてくれる奴隷のような存在。
私達に甘い精霊が、世界樹の下に移動したいと願う私達を妨げるような行動をするはずがない。
いや、もしかしたら、そうなのか?
世界樹はすべての精霊の故郷。いわば、私達を甘やかしたい数多の精霊の住まう場所。
私達からの寵愛を独り占めしたい精霊達が邪魔をしていると……そういうことか?
――あり得る。
非常にあり得るから困る。
しかし、私達の生活が精霊の献身の上に成り立っているのもまた事実。
無碍にはできない。
しかし、私達が豊かな生活を送るためには世界樹の存在が不可欠。なにを犠牲にしてでも、手に入れなければならない。
くっ、一体どうすれば……。
思考を巡らせていると、一つの答えにたどり着いた。
そうだ。やっぱり、この壁を壊そうと。
精霊に愛されている私達のやることなら、精霊達は許してくれるはずだ。
昔、私がまだ子供だった頃、祖父が大事にしていた百万コルもするトネリコの樹を、基地作りをする為に知らずに伐採してしまった事がある。
その時、祖父は笑って許してくれた。
まあ、その後、意気消沈する祖父を見た祖母と母に滅茶苦茶怒られたが、祖父と同じように私達の進路を妨害する精霊壁を破壊するためなら精霊達も笑って許してくれるだろう。
「よし。それでは皆さん。これを破壊し、私達は前に進みます。攻撃開始!」
「「はい!」」
私達は一度壁から離れると、精霊の力を借り、壁に魔法をぶつけていく。
エルフは精霊との親和性が高く、精霊の力を借りて魔法を行使することにより、通常より高威力の魔法を放つことができる。
なのに……。
なのに……まったく壁が壊れない。
それ所か、傷一つ付かずにいた。
「そ、そんな……どうなっているのですっ!?」
ズカズカ、バカバカと音を立てて、火や水、風や土属性の魔法が壁に当たるも、まったくの無傷。
それ所か壁に向けて放った魔法が倍の強さになって跳ね返ってくる始末だ。
「くっ! これでは埒があきません。皆さん、大規模魔法を展開しますよ!」
エルフの長、ダチュラはそう言うと、跳ね返ってくる魔法を避け、壁から離れる。
ダチュラが離れた事を確認すると、エルフ達は円陣を組み精霊から魔力を集め始めた。
エルフの使う大規模魔法。
それは精霊から集めた魔力を長のダチュラに集中し放つ魔法。
エルフの集落の中でも、魔力を集め放つことができるのは副長を除き他にはいない。
「さあ、いきますよ!」
そう言うとダチュラに魔力が集まっていく。
ダチュラは銃を撃つようなポーズを取ると、そのまま引き金に見立てた指を折り曲げた。
すると、とんでもない威力の魔力がダチュラの指先から放出される。
魔力が放出された瞬間、壁の前に数体のモンスターが立ち塞がった。
そのモンスターは、持っていた盾で放った魔力を弾き飛ばすと、ダチュラに向かって剣を向けてくる。
「い、一体、なんなのっ……。このフォルム。まさかキノコ??」
マッシュルーム・ソルジャーとマッシュルーム・アサシンは、エルフを前に盾と剣を構えると、にじり寄る。
「くっ!? な、なんなのよ。このモンスターは!?」
こんなモンスターがこの森にいるなんて聞いていない。
それになんだ。私達の魔力をたかが盾一つで弾き飛ばしたっ!?
あ、あり得ない……そんなこと、あってはならない。
見渡すと、周囲をキノコ型モンスターが取り囲んでいた。
「ダ、ダチュラ様……。一体どうしたら……」
「そ、そんなこと、私が聞きたい位よ!」
そう叫び声を上げるも、キノコ型モンスターがにじり寄ってくる。
「ち、近寄るんじゃない! 近寄るんじゃありません!」
「ダチュラ様!」
魔法を放ちキノコ型モンスターを迎撃しようとするも、キノコ型モンスターに魔法は通じない。魔法は盾により弾き飛ばされ、剣により持っていた武器は破壊されてしまう。
「も、もう限界です! わ、私達はこれから一体どうなるのでしょうかっ!?」
「し、知る訳ないでしょう!」
私達ににじり寄るキノコ型モンスターはどこからか取り出した紐を手に持つと私達を縛り上げ、車輪の付いた荷台に乗せていく。
「わ、私達を一体、どこに連れていく気なのよー!」
私達は紐に縛られ拘束されると荷台に乗せられ、そのままどこかへと運ばれていった。
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