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第四章 ノースの街作り
第107話 世界樹の街⑦
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「う、うわぁ……なんだか凄いね」
ナビさんに任せていたらいつの間にか、世界樹の下に街ができ上がってしまった。
街といっても、この街に住む住民は僕とアメリアさんとクロユリさんの三人だけ。
マッシュルーム兵を住民と捉えていいのであれば、既に二百を超える民の住む街となっている。
「あっ! ノース様、見て下さい! 世界樹の幹や枝になにかいますよ?」
「えっ?」
クロユリさんの言葉を聞き、世界樹を見上げると、そこには様々な生物がいた。
世界樹の頂き付近を旋回する鳥型のモンスター。
世界樹の幹を駆けまわるネズミ型モンスター。
その他、世界樹の樹皮を齧るモンスターが多数。
「ほ、本当だね……」
なにあれ??
<ああ、あれは世界樹の頂きに住む雄鶏ヴィゾーヴニルとフレースヴェルグですね。幹を駆け回っているのが、ラタトスクというモンスターで、世界樹の根元にできた泉で水浴びをしているのがニーズヘッグです>
(ええっ!? ほ、本当だっ! 世界樹の根元に泉ができてる!?)
ナビさんに言われるまで気付かなかった。
っていうか、なんでそんな生物が世界樹に棲んでいるの!?
<そんなこと、決まっているじゃありませんか。世界樹は幾つもの世界を支えるとされる大樹です。次元を超越して世界を繫いでいるのですから、なにがいても不思議ではありません>
そ、そういうものなのだろうか??
「……あんな化け物の生息する樹の下に街を作ってしまって良かったのでしょうか?」
唖然とした表情を浮かべながら、アメリアさんがそう呟く。
「う、うん。僕もそう思うよ……」
しかし、僕等にはマッシュルーム兵がついている。
多分、大丈夫なはずだ。
<ええ、マッシュルーム兵がいる限り問題ありません。害になる様であれば、討伐してしまえばいいのです>
ナビさんが異様に心強い。
まあ、ナビさんがそう言うのだから、大丈夫なのだろう。
そういう事にしておく。
「と、とりあえず、街ができたことだし、お父さんに報告を入れようか! 報告した方がいいよね??」
「え、ええ、そうですね……。しかし、大丈夫でしょうか?」
「えっ? なにが??」
そう尋ねると、アメリアさんが難しそうな表情を浮かべる。
「いえ、流れに身を任せるがままに街作りしてしまいましたが、世界樹にマッシュルーム兵という過剰戦力……。森を開拓し世界樹の下に街を築きましたなんて報告すればどうなるか……」
い、言われてみればそうかもしれない。
「ま、まあいいじゃありませんか。多分、なんとかなりますよ。多分……」
「そ、そうでしょうか?」
「うん。きっと、大丈夫ですよ!」
というより、大丈夫でなくては困る。
マッシュルーム兵をどうにかしろと言われても、もはやどうすることもできないからだ。しかし、僕の説得は叶わずアメリアさんが困ったかのような表情を浮かべている。
「そ、それじゃあ、とりあえず、フォーリッシュ兄様に街を作ったことを説明しましょう! それなら問題ないですよね?」
フォーリッシュ兄様の治めるホオズキの街は隣にある。
ご近所付き合い……もとい、兄弟であるフォーリッシュ兄様への報告は大切だ。
「そ、そうですね。まずはフォーリッシュ様に報告することから始めましょう」
「は、はい!」
アメリアさんにそう返事をすると、突然、クロユリさんが声を上げた。
「た、大変です! エルフが! エルフが精霊壁に攻撃を仕掛けています!」
「えっ!? エルフがっ!?」
僕の言葉に、クロユリさんの肩に乗っている森の精霊ドライアドが『キュイ!』と声を上げた。
相変わらず可愛い……。なんて言っている場合じゃない。
いや、一体なんでエルフが精霊壁に攻撃を??
突然の事態に驚愕の表情を浮かべていると、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<エルフにとって世界樹は無償で自身を養ってくれる存在ですからね。おそらく、自身を養ってくれる貢君こと、世界樹を発見したことで、前に住んでいた湧泉を捨て、この地に居住を移してきたのでしょう。しかし、安心して下さい。いま、マッシュルーム・アサシンと、マッシュルーム・ソルジャーを迎撃に向かわせました。精霊壁があれば問題ないとは思いますが、エルフはああ見えて自然と豊かさを司る小神族。もしかしたら、精霊壁を越えてくる可能性もないとはいえません>
ええっ……。
エルフがそんな残念な種族だと初めて知った。
まさか、仕事をせず、他の存在に生活を頼りにするような、そんな酷い種族だったなんて……。
クロユリさんに視線を向けると、何故か、クロユリさんが頷いた。
「はい。ノース様の仰る通りです。私のお父様はお母様に寄生するダニのような存在でした。しかし、安心して下さい。お父様の血を引いておりますが、私はエルフのようにダニのような存在ではありません! むしろ、ノース様のことを甘やかし、私なしには生きていけない。そういう風にしたいとすら考えております」
「ク、クロユリさん……」
なんてことを考えているんだ……。
空恐ろしい。
まさか、クロユリさんがそんなダメンズメーカーような考えを持っているだなんて……。
クロユリさんの言葉に、僕は思わず愕然としてしまった。
ナビさんに任せていたらいつの間にか、世界樹の下に街ができ上がってしまった。
街といっても、この街に住む住民は僕とアメリアさんとクロユリさんの三人だけ。
マッシュルーム兵を住民と捉えていいのであれば、既に二百を超える民の住む街となっている。
「あっ! ノース様、見て下さい! 世界樹の幹や枝になにかいますよ?」
「えっ?」
クロユリさんの言葉を聞き、世界樹を見上げると、そこには様々な生物がいた。
世界樹の頂き付近を旋回する鳥型のモンスター。
世界樹の幹を駆けまわるネズミ型モンスター。
その他、世界樹の樹皮を齧るモンスターが多数。
「ほ、本当だね……」
なにあれ??
<ああ、あれは世界樹の頂きに住む雄鶏ヴィゾーヴニルとフレースヴェルグですね。幹を駆け回っているのが、ラタトスクというモンスターで、世界樹の根元にできた泉で水浴びをしているのがニーズヘッグです>
(ええっ!? ほ、本当だっ! 世界樹の根元に泉ができてる!?)
ナビさんに言われるまで気付かなかった。
っていうか、なんでそんな生物が世界樹に棲んでいるの!?
<そんなこと、決まっているじゃありませんか。世界樹は幾つもの世界を支えるとされる大樹です。次元を超越して世界を繫いでいるのですから、なにがいても不思議ではありません>
そ、そういうものなのだろうか??
「……あんな化け物の生息する樹の下に街を作ってしまって良かったのでしょうか?」
唖然とした表情を浮かべながら、アメリアさんがそう呟く。
「う、うん。僕もそう思うよ……」
しかし、僕等にはマッシュルーム兵がついている。
多分、大丈夫なはずだ。
<ええ、マッシュルーム兵がいる限り問題ありません。害になる様であれば、討伐してしまえばいいのです>
ナビさんが異様に心強い。
まあ、ナビさんがそう言うのだから、大丈夫なのだろう。
そういう事にしておく。
「と、とりあえず、街ができたことだし、お父さんに報告を入れようか! 報告した方がいいよね??」
「え、ええ、そうですね……。しかし、大丈夫でしょうか?」
「えっ? なにが??」
そう尋ねると、アメリアさんが難しそうな表情を浮かべる。
「いえ、流れに身を任せるがままに街作りしてしまいましたが、世界樹にマッシュルーム兵という過剰戦力……。森を開拓し世界樹の下に街を築きましたなんて報告すればどうなるか……」
い、言われてみればそうかもしれない。
「ま、まあいいじゃありませんか。多分、なんとかなりますよ。多分……」
「そ、そうでしょうか?」
「うん。きっと、大丈夫ですよ!」
というより、大丈夫でなくては困る。
マッシュルーム兵をどうにかしろと言われても、もはやどうすることもできないからだ。しかし、僕の説得は叶わずアメリアさんが困ったかのような表情を浮かべている。
「そ、それじゃあ、とりあえず、フォーリッシュ兄様に街を作ったことを説明しましょう! それなら問題ないですよね?」
フォーリッシュ兄様の治めるホオズキの街は隣にある。
ご近所付き合い……もとい、兄弟であるフォーリッシュ兄様への報告は大切だ。
「そ、そうですね。まずはフォーリッシュ様に報告することから始めましょう」
「は、はい!」
アメリアさんにそう返事をすると、突然、クロユリさんが声を上げた。
「た、大変です! エルフが! エルフが精霊壁に攻撃を仕掛けています!」
「えっ!? エルフがっ!?」
僕の言葉に、クロユリさんの肩に乗っている森の精霊ドライアドが『キュイ!』と声を上げた。
相変わらず可愛い……。なんて言っている場合じゃない。
いや、一体なんでエルフが精霊壁に攻撃を??
突然の事態に驚愕の表情を浮かべていると、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<エルフにとって世界樹は無償で自身を養ってくれる存在ですからね。おそらく、自身を養ってくれる貢君こと、世界樹を発見したことで、前に住んでいた湧泉を捨て、この地に居住を移してきたのでしょう。しかし、安心して下さい。いま、マッシュルーム・アサシンと、マッシュルーム・ソルジャーを迎撃に向かわせました。精霊壁があれば問題ないとは思いますが、エルフはああ見えて自然と豊かさを司る小神族。もしかしたら、精霊壁を越えてくる可能性もないとはいえません>
ええっ……。
エルフがそんな残念な種族だと初めて知った。
まさか、仕事をせず、他の存在に生活を頼りにするような、そんな酷い種族だったなんて……。
クロユリさんに視線を向けると、何故か、クロユリさんが頷いた。
「はい。ノース様の仰る通りです。私のお父様はお母様に寄生するダニのような存在でした。しかし、安心して下さい。お父様の血を引いておりますが、私はエルフのようにダニのような存在ではありません! むしろ、ノース様のことを甘やかし、私なしには生きていけない。そういう風にしたいとすら考えております」
「ク、クロユリさん……」
なんてことを考えているんだ……。
空恐ろしい。
まさか、クロユリさんがそんなダメンズメーカーような考えを持っているだなんて……。
クロユリさんの言葉に、僕は思わず愕然としてしまった。
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