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第三章 ホオズキの街

第97話 ホオズキの街の視察②

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「ノース様には、このままフォーリッシュ様の下で領地経営を学んで頂きます」
「学んで頂くって、なにをしたらいいの?」

そう尋ねるとアメリアさんは困った表情を浮かべる。

「オーダー様より、ノース様には様々な権限が与えられております。いま、この地を治めているのはフォーリッシュ様ですが、まだまだこの地は発展途上。折角ですので、森を開拓して見てはいかがでしょうか?」
「えっ? 森を開拓?? そんなことしてもいいの?」
「はい。もちろんです。この辺り一帯は未開の地。僻地の開拓も辺境伯に課せられた義務の一つです。ご存知ですか? オーダー様は一代で、この辺り一帯を開拓し、辺境伯に上り詰めたのですよ? ノース様もオーダー様と同様にが開拓した土地は、そのままノース様の領地になります。なにせここは辺境ですから。土地の所有者は誰もいません。ただし、開拓するとなると義務も生じますが……」
「義務?」

一体、どんな義務が課せられるのだろうか?

「はい。この地は隣国、ストレリチア王国に近い立地となっております。そのため、開拓後はガーベラ王国の庇護下に入ることになります」
「ガーベラ王国の庇護下に入るとどうなるんですか?」
「はい。ガーベラ王国の庇護下に入ることで既定の税金を納める義務を負います。ただし、開拓したての土地では税収が見込めないため、開拓してから三年間は無税となります。逆に考えれば、それまでに税収が見込める土地にしなければならない義務が生じるという訳です」
「もし、ストレリチア王国に攻め込まれたら?」
「この地に近い領主。この辺り一帯であればオーダー様が助けになってくれます」
「お父さんが!?」

それは心強い!
それなら安心して開拓することができそうだ。

「はい。もちろん、国に属さないという手段もございますが、これはあまりお勧めできません。この地は、ガーベラ王国とストレリチア王国に挟まれた地。国に属さない場合、その土地を巡り、最悪戦争が起きる可能性があります」
「そ、そうなんだ……」

戦争は嫌だな。

「この辺り一帯を開拓したらお父さん、喜んでくれるかな?」

そう質問すると、アメリアさんが微笑みを浮かべた。

「ええ、もちろんです。そのためにも、まずはこの街を視察し、領地経営を学びましょう」
「はい!」

そうなれば話は早い。早速行動に移ろう。

ナビさん。ここにキノコ・ハウスを建ててくれないかな?

心の中でそう言うと、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。

<はい。もちろんです。それでは行きますよ!>

ナビさんがそう文字を浮かべると、視界の端に文字が表示されていく。

<ギフトポイントを10消費し、キノコ・ハウスを作成しました>

すると、目の前にキノコの形をした家が現れた。

「とりあえず、これでよしっ……」

フォーリッシュ兄様は家を建てろと言っていた。
別にギフトの力を使って建ててはいけないとは言われていない。
これで問題ないはずだ。

「それでは、早速、街の視察に行きましょう! って、あれ? アメリアさんどうしました?」

アメリアさんがキノコ・ハウスを前に唖然とした表情を浮かべている。

「やはり、ノース様のギフトは規格外ですね……」
「そうですか?」

最近では、これ位普通のことだと思えるようになってきた。
なにせ、この世界に住む人。一人一人にギフトが与えられているのだ。
森全体を操ることのできるギフト『フォレストマスター』を持つクロユリさんの方が僕では比較にならない位、凄いと思う。

そういえば、クロユリさん静かだな……。

チラリとクロユリさんに視線を向けると、無言で笑顔を返してきた。。
えっ、なに? なんだか怖いんだけど……。

「ク、クロユリさんも街の視察に行くよね?」

そう尋ねると、目を爛々と輝かせ大きな声を上げる。

「はい! もちろんです。ノース様が視察に行くのであれば、当然のごとく私も着いていかせて頂きます!」
「そ、そう? それじゃあ、一緒に視察に向おうか」
「はい!」

最初に向かったのは畑だった。

「うわ~! ここがこの街の食生活を支える畑か!」
「ええ、とてものどかな風景ですね。心が洗われるようです」
「あっ、見て下さい。ノース様。あそこに人が集まっているみたいですよ?」

クロユリさんが指を向ける方向に視線を向けると、そこは多くの人で賑わいを見せていた。向かって見ると、そこでは、筋骨隆々の男達がブーメランパンツをはき太陽と向き合っている。

目に毒だ。

「……な、なにをやっているんですか。これは?」

ブーメランパンツをはき太陽と向き合っている男達にそう尋ねる。
すると、意外な回答が返ってきた。

「そんなことは決まっている。筋肉のカットをよりよく見せるため、植物と共にお日様の光を一身に浴びているのだ!」

突然、筋肉に目覚めてしまった街の住民達が、水分不足で枯れ果てた農作物そっちのけで日光浴をしていた。
アメリアさんに視線を向けると、すぐさま視線を逸らされる。

<この街はもう終わりが近いかもしれませんね。農作物そっちのけで日光浴をするなんて馬鹿のすることです。ノース様。この街、近い内に必ず食糧危機がやってきますよ? さっさと逃げましょう>

僕もそう思う。
でも、いま逃げる訳にはいかない。

「ま、まあ、気を取り直して次の場所に向かいましょう」

一抹の不安を覚えながらも、僕は次の場所の視察に向かうことにした。
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