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第二章 アベコベの街

第47話 蒼い宝石:ブルースライムを探して三千里②

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「な、なにっ!? 『蒼い宝石:ブルースライム』のグラム当たり単価が二万コルだとっ!? どういうことだっ! なぜそんなにグラム当たり単価が高騰している!」

 スライムの洞窟を後にした私達は『蒼い宝石:ブルースライム』を求めて商業協会に足を運んだ。
 そして、協会員にブルースライムを買いたいと伝えた所、言われたグラム当たり単価が二万コルだった。

「数日前まではグラム当たり単価三千コルだったではないか! 法外な金額もいい所だろうがっ!」

 私がそう声を荒げると、負けず劣らずと協会員も言い返してくる。

「仕方がないんですよ! 突然、スライムの洞窟から『蒼い宝石:ブルースライム』が採取できなくなってしまったんです! このグラム単価でご了承頂けないのであれば、別に無理して購入頂かなくて結構です!」
「ぐっ……こっちが下手に出ていれば貴様ぁぁぁぁ!」
「どの辺りが下手に出ているというのですか! どう考えても恫喝しているでしょう! これ以上、難癖を付けるのであれば、立入禁止命令を出しますよ!」
「た、立入禁止命令だとっ!?」

 そんなことをされては『蒼い宝石:ブルースライム』が購入できなくなってしまう。
 しかし、グラム当たり二万コルは流石に高すぎる。

 国からの依頼だから断ることもできないし、既に前金を貰っている。
 グラム当たり三千コル以上は完全に赤字だ。

「わ、私は国からの依頼を受けてここにいるんだぞ! どうしても十キログラムのブルースライムが必要なのだ!」
「そんなことを言われましても、商業協会と致しましては、グラム当たり二万コル以下でお売りすることはできかねます。他を当たって下さいますか?」
「ぐっ……貴様っ!?」

 心の中で三千コル以上だと赤字になると言っているだろうがっ!
 なぜ、総額三千万コル未満で仕入れようとしていたブルースライムを二億コルで購入しなければならない!
 そんな法外な金額で仕入れたらどうなると思っているんだ!
 一億七千万コルの赤字だぞ!?

「……冒険者に依頼を出せば、もっと安く購入することができるかもしれませんよ? 商業協会のグラム当たり単価より安く購入したいのであれば、冒険者協会を当たってはいかがでしょうか? まあ冒険者協会に依頼を出した所で、最低グラム当たり単価一万コルは取られるでしょうけれどもね」
「ぐうっ!? それじゃあ、困るんだよ! なんとかならないのか!」

 私がそう言うと、協会員が警備の者に視線を向けた。
 まずい。これ以上の問答は確実に追い出される。

 すると、協会員はため息交じりながらも、ここで初めて有益な情報をくれた。

「はあっ……スライムの洞窟の最終階層にいるキングスライムを倒せば、かなり低い確率でブルースライムを落とす……らしいです。スライムの洞窟の地下一階層でブルースライムの採取ができなくなったいま、そちらの方がまだ希望があるんじゃありませんか?」

 最初からそう言えばいいのに、勿体ぶりおって……。
 しかし、グラム当たり単価二万コルで、ブルースライムを購入するよりかは現実的だ。

「よし! スライムの洞窟のキングスライムだな!」

 そういうと私達は、再度、スライムの洞窟に向かうことにした。
 商業協会を出ると、御者にスライムの洞窟に向かうよう指示を出す。
 すると、護衛の一人が声をかけてきた。

「スレイブ様。お急ぎの所、大変申し訳ないのですが、まだこの街に宿を取っておりません。キングスライムは逃げませんし、スライムの洞窟に再挑戦するのは、宿を取ってからに致しませんか?」
「た、確かにそうだな……」

 よく考えて見たらキングスライムを倒すにも、ダンジョン攻略用の武器が必要となる。これ以上余計な経費はかけたくないが、グラム当たり二万コルでブルースライムを仕入れるより遥かにマシだ。

「よし。まずは宿を確保するぞ。宿を確保後、冒険者協会でダンジョン攻略に必要な武器を入手し、明日よりダンジョン攻略を開始する。時間は惜しいが、ここで手間を惜しんで失敗したくはないからな……今日は英気を養って明日に備えてくれ」

 そういって、護衛一人一人に一万コルを手渡した。

「英気を養うといっても羽目を外し過ぎない程度にな」
「「「はい。ありがとうございます!」」」
「御者の君にも渡しておこう。それでは、宿の確保に出発するぞ」
「はい!」

 そういうと、私は御者に一万コルを手渡し、宿屋のある区画へと向かうことにした。
 宿屋にたどり着くと、看板には『名ばかり平民御用達、宿屋ぼったくり』と書いてある。

「お、おい。本当にこんな所に泊まるのか?」

 ぼったくりって、なんだか嫌な予感しかしないのだが……。
 そもそも、なんでこんな所を選んだんだ?
 他にも宿屋がありそうなものだが……。

 そんな心の内が伝わったのか、御者がこの宿を選定した理由を教えてくれた。

「はい。他の宿屋には『名ばかり貴族御用達、宿屋りーずなぶる』という宿屋しかありませんでした。貴族御用達ともなれば法外な金額が飛んでいきそうなので、こちらを選んだのですが……」
「ふむっ……」

 確かに貴族御用達となれば、法外な値段を請求される可能性がある。
 名前は物騒だが、それなら『名ばかり平民御用達、宿屋ぼったくり』に泊まった方がいいだろう。

「よし、それではここに泊まるぞ。さっさと荷物を運び出せ!」
「「「はい!」」」

 こうして私達は『名ばかり平民御用達、宿屋ぼったくり』に宿泊することとなった。
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