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第一章 キノコマスター
第1話 ハズレギフト『キノコマスター』を授かりました
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「ノース様……あなたに与えられたギフトは『キノコマスター』です」
「えっ、キ、キノコマスターですか?」
ここは、教会。
十歳の誕生日を迎えた僕は、誕生日を迎えた月、教会の神官様より『キノコマスター』という名の謎ギフトを与えられた。
ギフトはこの世界に生まれた者が十歳の誕生月を迎えると、教会の神官様により贈られる祝福のことである。
しかし『キノコマスター』なんてギフト聞いたこともない。なにかの間違いじゃないだろうか?
神官様が告げた言葉により静まり返った教会に、僕の言葉がよく響く。
「は、はい。『キノコマスター』で間違いありません」
「そ、それは一体、どの様な力を持つギフトなのですか?」
あまりに不可解なギフトを与えられた僕がそう聞き返すと、神父様も困惑した表情を浮かべた。
「それは……申し訳ございません。私には判りかねます。なにせ、この様なスキルが発現したのは、初めてのことですので……」
「そ、そうですか……」
神父様の回答に僕は落胆の表情を浮かべる。
呆然自失と言った様子で天を仰いでいると、後ろに並んでいた孤児院のルームメイトが声を掛けてきた。
その表情は不満気で、早くそこを退けと言わんばかりだ。
「おい『キノコマスター』、お前はもうギフトを貰っただろっ? さっさとそこを退けよ」
「う、うん……」
言われた通り、僕は列から離れて行く。
いま、僕にそう言ってきたのは、同じ孤児院に住んでいるルームメイトのウエストだ。
規程によれば、孤児院に住むことができるのは十歳の誕生月まで。
十歳の誕生月を迎えると、少しのお金を持たされ、孤児院を卒業しなければならない。
孤児院卒業という言葉が頭に過り、僕は「はあっ」とため息をついた。
孤児院を卒業する者の進路は、神父様により頂いたギフト次第で決まる。
大半の人は、孤児院から貰った少しのお金を冒険者協会の加盟料にあてダンジョンに潜ったり、森で薬草や鉱石、動物を狩り冒険者協会に売ることで生計をたてる。
しかし、孤児院の中には、時よりとんでもないギフトを発現する者も現れる。
「ウエスト様、あなたに与えられたギフトは『剣聖』です。おめでとうございます」
神父様がルームメイトのウエストにそう言うと、教会内ので歓声が起きる。
そう。僕のルームメイト、ウエストが発現させたギフト『剣聖』。
『剣聖』とは、剣士系と言われるギフトの最上位に位置するギフト。剣の道に優れ、奥義を極める者に与えられるギフトである。
剣士系ギフトと魔導系ギフト、生産系ギフト保持者は、孤児院出身であったとしても優遇される。
孤児院の中で、それらのギフトは『優遇ギフト』と呼ばれていた。
「サウス様、あなたに与えられたスキルは『魔法士』です。おめでとうございます」
「イースト様、あなたに与えられスキルは『鍛冶士』です。おめでとうございます」
次々とルームメイトに与えられていく優遇ギフト。
優遇ギフトを発現したルームメイト達の表情は明るい。
それに比べて、僕に発現したギフトは見たことも聞いたこともない『キノコマスター』。
歓声を上げ、早速、国の人間からスカウトを受けているルームメイト達を尻目に、僕は呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
翌日、少量のお金を持たされると、フラナガン院長に一礼する。
孤児院で生活を始めること十年。
孤児院には大変お世話になった。
「フラナガン院長、この十年、ありがとうございました」
「いえいえ、私達もノース君のお陰で楽しい毎日を送ることができました。ノース君も体調に気をつけて下さい」
「はい。あの……ルームメイトの皆は……」
すると、フラナガン院長は悲しそうな表情を浮かべた。
「あの子達は、昨日の内にこの孤児院から出立しました……挨拶はありませんでしたが、仕方のないことです。なにしろあの子達は国への士官が決まっているのですから仕方のないことです。私は皆さんの幸せを願っております。近くに来たら、また寄って下さいね」
「はい! もちろんです。フラナガン院長も体調に気を付けて下さい。次に顔を見せる時は立派な冒険者になった時です!」
「ふふふっ、楽しみにしていますよ。それでは、またね」
「はいっ!」
僕はフラナガン院長に挨拶をすると、お金を握りしめ、冒険者協会へと向かって足を踏みしめた。
孤児院からの始めの一歩を踏みしめて、十数歩進んだところで僕は足を止める。
「そ、そういえば、街ってどうやって向かったらいいんだろう?」
よく考えてみれば、僕は街のある場所を知らない。
孤児院で育つこと十年。街に出たのは先日の教会が初めてのことだった。
チラリと後ろを振り向くと、フラナガン院長が手を振っている。
『次に顔を見せる時は立派な冒険者になった時です!』といった手前、もの凄く恥ずかしいけど、一度戻って、フラナガン院長に街のある場所を教えてもらおうか……。
僕はもう一度だけ後ろを振り向いた。
フラナガン院長が不思議そうな表情を浮かべている。
うん。やっぱり恥ずかしいし止めておこう。
確か道なりに行けば、街にたどり着くことができたはずだ。
進路を示す標識も立っていたし問題ない。
僕はフラナガン院長に手を振り前を向くと、冒険者協会のある街に向かうことにした。
「えっ、キ、キノコマスターですか?」
ここは、教会。
十歳の誕生日を迎えた僕は、誕生日を迎えた月、教会の神官様より『キノコマスター』という名の謎ギフトを与えられた。
ギフトはこの世界に生まれた者が十歳の誕生月を迎えると、教会の神官様により贈られる祝福のことである。
しかし『キノコマスター』なんてギフト聞いたこともない。なにかの間違いじゃないだろうか?
神官様が告げた言葉により静まり返った教会に、僕の言葉がよく響く。
「は、はい。『キノコマスター』で間違いありません」
「そ、それは一体、どの様な力を持つギフトなのですか?」
あまりに不可解なギフトを与えられた僕がそう聞き返すと、神父様も困惑した表情を浮かべた。
「それは……申し訳ございません。私には判りかねます。なにせ、この様なスキルが発現したのは、初めてのことですので……」
「そ、そうですか……」
神父様の回答に僕は落胆の表情を浮かべる。
呆然自失と言った様子で天を仰いでいると、後ろに並んでいた孤児院のルームメイトが声を掛けてきた。
その表情は不満気で、早くそこを退けと言わんばかりだ。
「おい『キノコマスター』、お前はもうギフトを貰っただろっ? さっさとそこを退けよ」
「う、うん……」
言われた通り、僕は列から離れて行く。
いま、僕にそう言ってきたのは、同じ孤児院に住んでいるルームメイトのウエストだ。
規程によれば、孤児院に住むことができるのは十歳の誕生月まで。
十歳の誕生月を迎えると、少しのお金を持たされ、孤児院を卒業しなければならない。
孤児院卒業という言葉が頭に過り、僕は「はあっ」とため息をついた。
孤児院を卒業する者の進路は、神父様により頂いたギフト次第で決まる。
大半の人は、孤児院から貰った少しのお金を冒険者協会の加盟料にあてダンジョンに潜ったり、森で薬草や鉱石、動物を狩り冒険者協会に売ることで生計をたてる。
しかし、孤児院の中には、時よりとんでもないギフトを発現する者も現れる。
「ウエスト様、あなたに与えられたギフトは『剣聖』です。おめでとうございます」
神父様がルームメイトのウエストにそう言うと、教会内ので歓声が起きる。
そう。僕のルームメイト、ウエストが発現させたギフト『剣聖』。
『剣聖』とは、剣士系と言われるギフトの最上位に位置するギフト。剣の道に優れ、奥義を極める者に与えられるギフトである。
剣士系ギフトと魔導系ギフト、生産系ギフト保持者は、孤児院出身であったとしても優遇される。
孤児院の中で、それらのギフトは『優遇ギフト』と呼ばれていた。
「サウス様、あなたに与えられたスキルは『魔法士』です。おめでとうございます」
「イースト様、あなたに与えられスキルは『鍛冶士』です。おめでとうございます」
次々とルームメイトに与えられていく優遇ギフト。
優遇ギフトを発現したルームメイト達の表情は明るい。
それに比べて、僕に発現したギフトは見たことも聞いたこともない『キノコマスター』。
歓声を上げ、早速、国の人間からスカウトを受けているルームメイト達を尻目に、僕は呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
翌日、少量のお金を持たされると、フラナガン院長に一礼する。
孤児院で生活を始めること十年。
孤児院には大変お世話になった。
「フラナガン院長、この十年、ありがとうございました」
「いえいえ、私達もノース君のお陰で楽しい毎日を送ることができました。ノース君も体調に気をつけて下さい」
「はい。あの……ルームメイトの皆は……」
すると、フラナガン院長は悲しそうな表情を浮かべた。
「あの子達は、昨日の内にこの孤児院から出立しました……挨拶はありませんでしたが、仕方のないことです。なにしろあの子達は国への士官が決まっているのですから仕方のないことです。私は皆さんの幸せを願っております。近くに来たら、また寄って下さいね」
「はい! もちろんです。フラナガン院長も体調に気を付けて下さい。次に顔を見せる時は立派な冒険者になった時です!」
「ふふふっ、楽しみにしていますよ。それでは、またね」
「はいっ!」
僕はフラナガン院長に挨拶をすると、お金を握りしめ、冒険者協会へと向かって足を踏みしめた。
孤児院からの始めの一歩を踏みしめて、十数歩進んだところで僕は足を止める。
「そ、そういえば、街ってどうやって向かったらいいんだろう?」
よく考えてみれば、僕は街のある場所を知らない。
孤児院で育つこと十年。街に出たのは先日の教会が初めてのことだった。
チラリと後ろを振り向くと、フラナガン院長が手を振っている。
『次に顔を見せる時は立派な冒険者になった時です!』といった手前、もの凄く恥ずかしいけど、一度戻って、フラナガン院長に街のある場所を教えてもらおうか……。
僕はもう一度だけ後ろを振り向いた。
フラナガン院長が不思議そうな表情を浮かべている。
うん。やっぱり恥ずかしいし止めておこう。
確か道なりに行けば、街にたどり着くことができたはずだ。
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僕はフラナガン院長に手を振り前を向くと、冒険者協会のある街に向かうことにした。
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