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2章

3話 ユーリエッセの心臓

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AM10:06 ドミナ

昼下がりのダスティー鉱山の麓。
山道を行軍していた私達ドナドナ部隊の隊列の中心で突如『ガコーン!』という派手な音と共に悲鳴が上がった。

「ええい!また車輪が嵌ったぞ!」

後ろを振り返るとパプリカの人達を閉じ込めた檻の車輪が雨でぬかるんだ溝に嵌ってしまったようだ。
先程まで降り続いていた雨の影響で舗装されていない山道はでこぼこになっている。
あんな大きな檻を載せた馬車では車輪が嵌まってしまうのも無理はない。

「すぐに檻を持ち上げろ!」

近くにいた隊員さんたちは悲鳴を上げるパプリカの人達を怒鳴りつけ、すぐに檻を持ち上げようとする。
その様子を見たブリザード様は肩をすくめ、そして近くに居た隊員さんが慌てる。

「やれやれ、ようやく雨が上がったかと思えばこの様か。路面がこの状態では今日中に砦に辿り着けそうにないな」

「も、申し訳ございません!直ちに動かせるようにしますので!」

「そうしてくれ。のんびりしていては後ろからうるさい連中が追い付いてきそうだ」

ブリザード様は焦る隊員さんにそれだけ言って森の向こうへ目を向ける。

「それにしてもダガーとククリは遅いな?食料を探しに行かせてからもう一時間も経っている。どこで遊んでいるのやら・・・・」

ブリザード様はそこで言葉を切りからかうような笑みを浮かべて私を見る。

「今度からはお前も一緒に行かせた方が良いのかな、ドミナよ?」

「・・・・私なんかでは、あの二人の足手まといになるだけですので・・・・」

「謙遜する事はない。昨晩のお前の力は見事だった。あの光を見ていればあの二人もお前の事を見直しただろう」

・・・・そうは思えない。
私はあの二人、特にククリさんにはハッキリと疎まれている。
こんな足手まといの私なんかをあの子が受け入れてくれるとは到底思えない。
それに、私自身あの二人の事は・・・・恐いもん。

「隊長!後ろから複数の生命反応が接近して来ています!反応からして恐らくホワイトベルです!」

あの二人との関係に悩んでいると索敵係の隊員さんから報告が入った。

「やれやれ、遂に追いつかれたか。うるさくなりそうだ。ドミナ、お前もついてきなさい」

報告を受けたブリザード様は馬から降りて隊列の後方に歩いていき私も後ろを追いかける。
私達が隊の最後尾に着くのと同時に10人くらいのホワイトベルの人達が目の前に現れる。
みんな制服が土で汚れ、所々に傷痕が見られる。
恐らく、この人達もあのゴキブリたちに襲われたんだろう。
みんな険しい顔で私達の事を睨んでくる。
その内、先頭のリーダーと思われる男の人がブリザード様の前に立つ。
この人は確か・・・・昨晩、オールドファームの屋敷前で会ったホワイトベルの警部さんだ。

「ブリザードさん、またお会いしましたね」

「おお、これはこれは!パルチザン警部、でしたかな?随分お疲れのようですな?」

「・・・・お陰様で、昨晩は゛大変お世話になりましたよ゛」

ブリザード様の芝居がかった挨拶を受け流し、低い声で返すパルチザン警部。
どうやら、私達に対して怒ってるみたいだ。
パルチザン警部はブリザード様の後ろにある檻を一瞥し言葉を投げかける。

「色々とお聞きしたいことがあるのですが、まずひとつ。・・・・坑道の入り口を塞いだのはあなた方ですか?」

パルチザン警部の言葉に背筋が凍った。

「坑道?ああ、あのコロニーの事ですかな?ええ、私共の方で対処させて貰いましたよ」

「・・・・昨日から我々が追っている人物の足あとが坑道の中に続いていました。心当たりはありますか?」

「ハッハッハ、先程から恐い顔をされていると思えばそういう事ですか。警部さんそれはちょっと横暴なんじゃないですか?」

「・・・・どういう事でしょう?」

「確かに我々の前を歩いていた賊共が勝手にあのコロニーに入っていったのは我々も確認しています。その後、コロニーを我々が塞いだのも事実ですよ」

そこまで聞いてパルチザン警部は拳をギリギリと握りしめた。

「それではやはりあの夫人は生き埋めに・・・・」

「しかしそれはやむを得ない事でしょう?」

悔しそうに俯く警部さんに対してブリザード様は悪びれもせずに続ける。

「その様子から察するにあなた方もあの正体不明のゴキブリに遭遇したのでしょう?かの者の力は我々の常識を越えていたのです。あのままコロニーの入口から湧き出し続ければ我々の命も危うかったのですよ」

「・・・・だから、塞いだと?」

「そういう事です。あの様な危険なコロニーを今まで放置していたなどと・・・・。本来ならあなた方ホワイトベルが果たすべき責務を我々が代わりに行ったのですよ。それなのに、こうも睨まれるとは、心外ですなぁ・・・・」

心が痛むと言った声色を使ってブリザード様は肩を竦める。
警部さんは目を閉じ無言で肩を震わせている。 
目の前の挑発的なブリザード様に対する怒りを必死で抑え込もうとしているのだろう。
けど、本当はその怒りの矛先を向けられるべき相手は私なんだ。
あのコロニーは私が塞いで、私がロールさんたちを死なせてしまったのだから・・・・。
やがてなんとか怒りを抑えたのか警部さんはフーと大きく息を吐き言葉を発する。

「事情は分かりました。我々に課せられた任務が失敗に終わった事は受け入れましょう。私の力不足で若い命が失われたのは大変申し訳ないと思います」

「残念でしたな。ホワイトベルにもう少し有能な人材が居ればこんな事にはならなかったでしょうに」

「・・・・そうですね、そもそも人手が足りないのは、元はと言えばオタクらセントラル組がその有能な人材を好き勝手引き抜いている為とは言え、あのコロニーを放置していたのは我々の失態です」

「おや?責任転嫁の様に聞こえますな?これだから地方ベルは・・・・」

「しかし!その事とは別にそこの檻について説明頂きたい!捕らえられているのはどう見てもユーリエッセ人には見えませんが!これは一体どういう事でしょうか!」

ブリザード様の煽りを受け堪えきれないと言った表情で怒鳴り声を上げる警部さん。
やはり、その事に触れられてしまった。
言い逃れ出来ない状況だし。

「あの汚い村でも言いましたが我々の任務は機密なんですよ。ホワイトベルとは言えお答えする事は出来ませんな」

「あなた方にはモラルと言うものがないのか!弱っている人間をこんな檻に入れて連行するなど許されるわけがないだろう!」

「我々はただ、お上の指示に従っているだけですよ。それにこれは見方を変えれば保護しているとも言えるのです。こんな魔物だらけの山道で脱走でもされたら流石に我々でも面倒見きれませんからね。檻は罪人を閉じ込めておくだけの物ではないんですよ、警部さん」

「ふざけるのも大概にしろよ!人の土地で好き勝手しやがって!お前らスケルトンがやりたい放題してきたお陰でイーストリザードは今や無法地帯なんだぞ!」

遂に我慢の限界を迎えた警部さんは声を荒げてブリザード様に掴みかかる。

「貴様ぁ!その手を放さんか!」

それを受け隊員さん達も怒鳴りながら武器を抜き、場は一触即発の空気になってしまった。
胸倉を掴まれたブリザード様は無言で右手を上げ斬りかかろうとした隊員さん達を止める。

「・・・・ひとつ教えておきましょう警部さん。我々ユーリエッセ人がなぜ世界最強の民族と呼ばれているかをね」

「・・・・なんの話だ?」

先ほどの人を馬鹿にしたような態度から一変して、冷めた声色に変わったブリザード様に圧され警部さんは警戒した目を向ける。

「さきほどあなたが指摘された通り、あの檻に入れられている者たちは海を越え集めらた異邦人です。我々は力で彼らを支配し、ユーリエッセに使役させる為この大陸に連れ帰りました。力の勝る我々が支配者で敗者の彼らは檻の中。実に分かりやすい構図です。そしてその構図はこのユーリエッセ大陸にも当て嵌められる物なのですよ」

・・・・淀みなく、一切の疑念を持たない表情でブリザード様は続ける。

「この大陸を一つの体と例えるならそこに住む我々人間の持つ神秘の力、”エターナル”は血液です。我々という血が絶えず回り続け、この大きな体を正常に機能させているのですよ。しかし、血液というものには鮮度がある。新しく新鮮な血が生まれる中、古く流れの悪い者も当然出てくる。その様な者が留まり続ければこの体は正常に機能しなくなってしまう。だから新しい血を臓器に送り、古く腐った者を排出する器官が必要になってくる。それこそが”心臓”・・・・我々スケルトンケアなのだよ」

ブリザード様は胸倉を掴んでいる警部さんの右腕にそっと手を添える。

「言うなればお前たちがのさばるこのイーストリザードは腐った血液の墓場、ユーリエッセの恥部なんだよ。我々が作り上げているのは汚れたお前たちの世界では見上げることも出来ないユーリエッセという最強の肉体だ。我々がこの大陸の心臓になっているからこそお前たちは自分たちの世界で威張っていられるんだよ。番犬は首輪に繋がれたまま小屋の前で吠えていればいい」

右腕に添えたブリザード様の手が怪しく光りだす・・・・。

「じゃれるなよ、犬コロ・・・・!」

「くっ!」

凄みながらまさに魔法を使おうとしたその瞬間、警部さんはブリザード様の腕を振り払い後ずさる。
同時に振り払った右腕の服の上から数本の線が入り、かまいたちにやられた様にパラパラと切れ目の入った繊維が地面に散っていく。
ブリザード様の魔法にやられた警部さんの右腕は皮膚が露出し、あと一瞬振り払うのが遅れていたら右腕に致命傷を負わせられていたことが想像できる。

「おや?逃げられましたか?中々いい勘をされている。腐ってもホワイトベルの警部という事ですかな」

先ほどまでの口調から一変して、また元の人を食ったようなしゃべり方に戻ったブリザード様。

「貴様ぁ!」

挑発された警部さんは腰からホワイトベルに支給されるサーベルを抜き周りの部下達も戦闘態勢に入る。
それを受けこちらの隊員さん達も応戦する為、武器を構える。

「ブ、ブリザード様!」

唐突な展開に私は戸惑い戦いを止めて貰うよう目で訴えながらブリザード様を見上げる。
しかし、ブリザード様は私の事など目に入っておらず、嬉しそうな表情で状況を楽しんでいる。
どうしよう、このままじゃ・・・・殺し合いになっちゃう!
双方まさにぶつかり合いそうになったその時、森の方からガサガサと音が聞こえてきた。

「あ~!つっかれたあ~!ブリザード様~♪おっきな熊ちゃん捕まえましたよ~♪」

一触即発の場にそぐわぬ明るく甘えた声が響き渡り、茂みの向こうから一人の少女が顔を出す。
コバルトブルーの瞳にブロンドヘアーの小さな女の子・・・・ククリさんだ。

「よ~い、しょっと!」

ククリさんは満面の笑みを浮かべながら右手で引きずっていたそれを上空に放り投げる。
まるでゴミ袋の様に放り上げられたそれは私達とホワイトベルの間に巨大な影を落とす。
やがて重力に従って轟音と共にそれは目の前の地面に叩きつけられ、そして・・・・

「きゃあああああああ!!」

突然現れた惨い光景に私は悲鳴を上げてしまった。
それは恐怖に怯え、目から血の涙を流して絶命した・・・・巨大な熊だった。

「な、なんだこれは・・・・!?」

あまりの出来事にホワイトベルの人達も恐怖し後ずさる。

「あれあれぇ?みんな武器構えてどうしたんですかぁ?ひょっとして喧嘩中でしたかぁ?」

「なあに、少しこの警部さんとエキサイティングな握手を交わしていただけだ。遅いと思ったらこんな大きな獲物を狩っていたのか。ここまで持ってくるのに苦労しただろう?」

「そうなんですよ~!ダガーちゃんは全然手伝ってくれないし大変でしたよ~!」

唖然とする私達をよそにブリザード様とククリさんは呑気に言葉を交わし合う。
やっぱりこの人たちは異常だ・・・・私にはついていけない。

「一体何なんだこれは?その少女は一体?」

「驚かれましたか警部殿?この娘は私の弟子のククリと言います。齢11にして我らドナドナ部隊のNo3にのし上がった天才ですよ」

「ククリで~す♪よろしくね警部さん♪」

驚愕する警部さんに明るい声で自己紹介するククリさん。

「ちなみに今あなたの後ろに居るのがククリの姉弟子のダガーです」

「何!?」

ブリザード様の言葉に驚いて後ろを振り向く警部さん。
そこにはニッコリと笑顔を浮かべて警部さんを見上げるダガーさんの姿があった。

「バカな!?いつの間に!?」

ククリさんの衝撃的な登場に動揺していたとは言え、後ろ取られた事にショックを隠せない警部さん。
私も全く気が付かなかった。

「ダガーと申します。この度は師匠が大変失礼しました。どうかお許しください」

丁寧にあいさつを交わしペコリと頭を下げるダガーさん。
濡れ羽色の艶やかな髪に透明感のある肌、アーモンド形の綺麗な目とまっすぐ通った鼻梁。
まだ12歳だけど将来美人になるであろうことが予想される整った顔立ちの美少女だ。
そして、この部隊でブリザード様に次ぐ実力者でその戦闘力は底が知れない・・・・。

「おやおや、見てもいないのに私が悪者にされるのか?いつもながら手厳しいなダガーは」

「すみません。でも師匠が笑っている時はいつも悪いことをしている時ですから」

「私もそう思いま~す♪い~っぱい人殺す時の顔してるもんね~♪」

「おやおや、お前たちも人の事は言えないと思うがね。この熊も随分恐い思いをさせたのだろう?死んでなお絶望に染まった顔をしてるじゃないか」

「えへへへ♪バレちゃった♪あんまり可愛い顔するからちょっと遊びすぎちゃったんですよね~♪」

和やかに、あまりにも自然と物騒な会話を交わす3人。
隊長のブリザード様とその愛弟子のダガーさんとククリさん。
極悪非道なドナドナ部隊の中でも飛びぬけた戦闘力と残虐性を持った3人。
困っている人を助けるために旅に出た私を絶望の底に叩き落とした、言い方は悪いけど悪魔の様な存在だ・・・・。

「なんなんだこいつらは?いかれてる・・・・」

警部さんも完全に戦意を失ってブリザード様達から距離を取る。
私が初めてこの人達と出会った時とおんなじだ。
こんな人達を目の前にしたらやっぱり怖いよね・・・・。
ひとしきり二人を労ったブリザード様は再び警部さんに向き直る。

「すっかり毒気が抜かれてしまいましたな。まあ、我々も本気でホワイトベルと事を構える気はありませんよ。その服のお詫びと言ってはなんですが食事でも一緒にどうですかな?」

「・・・・懐柔するつもりか?」

「人聞きが悪いですな。私はただ同じギルドに所属する者同士、互いの苦労を労おうと思っただけですよ。それに・・・・」

ブリザード様はそこで言葉を切り目の前の熊の頭を掴み上げる。

「ここで我々が争っても結果は見えているでしょう?」

恐怖に怯えながら絶命した熊の顔を見せて挑発するブリザード様。
まるでこうなりたくなければ矛を納めろと脅しているようだ。
警部さんはじっとブリザード様を睨み付け、やがて諦めて自分の部下達にサーベルを仕舞うよう指示する。

「・・・・オタクはまるで狂犬だな。ホワイトベルを手にかけることを何とも思っていなさそうだ」

「滅相もない。我々だってあなた方と揉めるのは気が咎めますよ。しかし、こちらも上の期待に応えるには手段を選べない立場でしてね。出来ればあなた方にはこの辺で引き下がって欲しいんですよ」

「・・・・見なかった事にしろと?」

「警部さん達の任務は失敗に終わったのでしょう?心苦しいとは思いますが署に帰って上に報告するしかないのでは?」

ブリザード様の提案を受け警部さんは静かに目を閉じた。
これから自分が取るべき行動に迷っているのだろう。
後ろには彼の部下達がいる。
彼等はみな目に隈を作り姿勢を正してはいるが疲労困憊なのは明白だ。
出来れば私も引いてほしい。
もう血は見たくない・・・・。
やがて決心した警部さんは真っ直ぐブリザード様を見つめて言った。

「悪いがそれは出来ません。我々には新たな護衛対象が出来ましたのでね」

「新たな護衛対象?」

警部さんの言葉にブリザード様は眉をひそめる。

「あなた方ですよ。例の正体不明のゴキブリの事もある。安全圏までは我々が護衛しますよ」 

「あのゴキブリの事でしたら問題ないでしょう。今朝から一匹も遭遇しておりませんので。もう奴等の縄張りは抜けたのでしょう」

「ですが確証はない。もし奴等が大軍で襲ってくればあなた方でも命の保証はないはずだ」

申し出を流そうとするブリザード様に対して一歩も引かない警部さん。
護衛と言うのは建前で私達の事を監視するのが目的なのは明白だ。

「それにこの先の平原は野盗の縄張りになっている。山道を抜けても安全ではない」

「ハッハッハ!我々ドナドナ部隊がその様な者に遅れをとるとお思いですか?」

「実は平原の先にあるブリーズファームの近くに゛とある野盗の砦゛がありましてね、我々も手を焼いているのですよ」

警部さんの言葉にブリザード様がピクリと反応する。

「ほお、野盗の砦ですか?それは初耳ですな」

「そうですか?私の情報によると゛ある組織゛がその野盗達と随分懇意にしているようでしてね。ちょうどその調査に向かわねばと思っていたんですよ」

視線を交えながらお互いの腹を探り合う二人。
警部さんは睨みながら。
ブリザード様は笑みを張り付けながら。

「同じギルドに所属する者同士お互い助けあおうではありませんか、ブリザード隊長」

警部さんは先程の意趣返しとばかりに言い放つ。
その言葉に折れたブリザード様は小さく嘆息し両手を上げる。

「あなたの熱意には負けましたよ。よろしい、護衛をお願いしましょう」

「ありがとうございます。では我々が先導しましょう」

「その前に食事にしましょう。あなたも後ろの方々も酷くお疲れの様だ」 

「・・・・そうですね、ですが我々の食料は自分たちで調達させて貰いますよ。とてもじゃないがオタクらと同じ釜で食事は取れそうもないのでね」

「おや、それは残念ですな?せっかく愛弟子が仕留めた獲物なんですが。まあ、好きにされると良い・・・・」

そう言ってお互い部下に指示を出し合う。
どうやら話がまとまったみたいだ。
結局、私はなにもできなかった。

「あら?ドミナ様ってば居たんですか?全然存在感ないから気づきませんでした」

「あ、ククリさん・・・・」

俯いていると後ろからククリさんの冷めた声がかけられた。
ブリザード様にするような甘えた声とは程遠い軽蔑しきった声だ。

「やめなさいククリ。ドミナも疲れているのだ。お前も食事の用意が出来るまで休んでいなさい」

「・・・・は~い」

ブリザード様に止められククリさんは不満顔で離れていく。

「それとダガー、お前にやって貰いたいことがある」

「なんですか?」

ブリザード様は次いでダガーさんを呼び耳元で何かを囁く。

「・・・・分かりました。この位置だと少し時間が掛かりそうですが構いませんか?」

「まあ、仕方ないだろう。のんびりと時間を稼がせてもらうさ」

不敵な笑みでホワイトベルを横目に見ながら呟くブリザード様。
先ほどのダガーさんの言葉ではないけど、明らかに悪だくみしている顔だ。

「分かりました、ではその様に・・・・」

何かを指示されたダガーさんはくるりと背を向けて歩き出す。
振り向きざまに私を一瞥し、薄い笑みを浮かべた。
私を蔑むかのような、それとも憐れんでいるかのようなどちらとも言えない表情だった。
・・・・やっぱりこの二人からは嫌われてる。
ダガーさんは表情が読み取りづらく考えてる事が読めないけど・・・・・だけど、ククリさんは分かりやすい。
私に対する嫌悪感を隠そうともしない。
よっぽど私の事が気に入らないんだろうな・・・・。
憂うつな気持ちを抱えながら私は食事の準備をする隊員さん達を手伝いに行った・・・・。
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