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1.聞こえてきた会話
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「あの子は私の好みではないよ」
そう笑いながら言っているのは、私の婚約者。
「え!?かわいい婚約者じゃないか。外見も性格も悪く聞くことはないぞ。婿入り先としての家格も十分だろう?どこが不満なんだよ?」
「そうだなぁ・・・」
驚きすぎて動けない。
話し声がするのは1つ年上の婚約者ライル・コーディのクラス。授業はだいぶん前に終わり、残っている生徒もまばらだ。
約束はしていないが、まだ残っているなら一緒に帰ろうと会いにきた。そこで聞こえてきたのがこの会話だ。私がいることには気づきそうもない。まあ、教室にたどり着く前に立ち止まってしまっただけだが。教室の中には二人だけのようだ。一緒にいるのはライルの親しい友人なのだろう、口調がくだけている。
少し冷静になった私は、持っていた録音の魔道具を起動した。念の為にと持たされ、何気ない情報を集めるくらいにしか使っていなかったが、まさかこうして自分のために使う日がくるとは思いもしなかった。
彼らの話は続いている。
「ユーリアは婚約者として申し分ないよ。気もきくし、教養も問題ない。けれど子どもの頃からずっと一緒にいて、正直女性として見れないんだ。妹みたいでさ。」
ユーリアとは間違いなく私ユーリア・リードのことだろう。侯爵家の一人娘だ。
同じ侯爵家のライルとは彼が話した通り、私が8才のときから8年間婚約関係にある。
「ユーリアは背も小さくてふんわりとした雰囲気で確かにかわいいけれど。本音を言わせてもらえればシェリー嬢が好みど真ん中かな」
「トラヴィス伯爵家のシェリー嬢?雰囲気真逆じゃないか?」
彼の友人の言う通りシェリー・トラヴィスといえば私と同じ学年の女生徒で、学園でも有名な美少女の1人だ。銀髪・碧眼で背も高くスラッとした体型をしており、かつトラヴィス家は武門の家系のためか、剣術も得意だときく。キリリとした文武両道の美人さんだ。
「ユーリアと歩む未来が、全く思い描けないんだ。子どもも作れる気がしない。お先真っ暗だよ。」
そこまで聞いて、私は教室に足を踏み入れた。
「ごきげんよう、ライル様。」
「っ、ユーリア!?」
目を見開いて驚く婚約者とご友人。
「一緒に帰れないかと伺いにきましたところ、話が聞こえて参りました。立ち聞きする形になり、申し訳ございません。」
「・・っどこから、聞いて・・」
「好み云々の辺りからでしょうか。話が盛り上がっていたのもあるのでしょうが、少々お声を抑えた方がよろしいかと。廊下まで声が響いておりましたわ。」
顔色を悪くしたご友人様を一瞥し、口をはくはくさせ何か言おうとしているライル様と視線を合わせた。
「お話は聞かせて頂きました。私たちの婚約は当主同士が決めたことですが、政略的な意味はございません。この件は我が家に持ち帰り、当主の判断を仰ぎたく存じます。私たちの婚約がなくなれば、シェリー・トラヴィス様へ思いを告げることも出来るようになるでしょう。」
「っ、ユーリア!僕は、」
「ライル様の明るい未来のため、今のお話は私も父・当主に伝えましょう。それでは失礼致します。」
退室を告げ、私はその場を離れた。
そう笑いながら言っているのは、私の婚約者。
「え!?かわいい婚約者じゃないか。外見も性格も悪く聞くことはないぞ。婿入り先としての家格も十分だろう?どこが不満なんだよ?」
「そうだなぁ・・・」
驚きすぎて動けない。
話し声がするのは1つ年上の婚約者ライル・コーディのクラス。授業はだいぶん前に終わり、残っている生徒もまばらだ。
約束はしていないが、まだ残っているなら一緒に帰ろうと会いにきた。そこで聞こえてきたのがこの会話だ。私がいることには気づきそうもない。まあ、教室にたどり着く前に立ち止まってしまっただけだが。教室の中には二人だけのようだ。一緒にいるのはライルの親しい友人なのだろう、口調がくだけている。
少し冷静になった私は、持っていた録音の魔道具を起動した。念の為にと持たされ、何気ない情報を集めるくらいにしか使っていなかったが、まさかこうして自分のために使う日がくるとは思いもしなかった。
彼らの話は続いている。
「ユーリアは婚約者として申し分ないよ。気もきくし、教養も問題ない。けれど子どもの頃からずっと一緒にいて、正直女性として見れないんだ。妹みたいでさ。」
ユーリアとは間違いなく私ユーリア・リードのことだろう。侯爵家の一人娘だ。
同じ侯爵家のライルとは彼が話した通り、私が8才のときから8年間婚約関係にある。
「ユーリアは背も小さくてふんわりとした雰囲気で確かにかわいいけれど。本音を言わせてもらえればシェリー嬢が好みど真ん中かな」
「トラヴィス伯爵家のシェリー嬢?雰囲気真逆じゃないか?」
彼の友人の言う通りシェリー・トラヴィスといえば私と同じ学年の女生徒で、学園でも有名な美少女の1人だ。銀髪・碧眼で背も高くスラッとした体型をしており、かつトラヴィス家は武門の家系のためか、剣術も得意だときく。キリリとした文武両道の美人さんだ。
「ユーリアと歩む未来が、全く思い描けないんだ。子どもも作れる気がしない。お先真っ暗だよ。」
そこまで聞いて、私は教室に足を踏み入れた。
「ごきげんよう、ライル様。」
「っ、ユーリア!?」
目を見開いて驚く婚約者とご友人。
「一緒に帰れないかと伺いにきましたところ、話が聞こえて参りました。立ち聞きする形になり、申し訳ございません。」
「・・っどこから、聞いて・・」
「好み云々の辺りからでしょうか。話が盛り上がっていたのもあるのでしょうが、少々お声を抑えた方がよろしいかと。廊下まで声が響いておりましたわ。」
顔色を悪くしたご友人様を一瞥し、口をはくはくさせ何か言おうとしているライル様と視線を合わせた。
「お話は聞かせて頂きました。私たちの婚約は当主同士が決めたことですが、政略的な意味はございません。この件は我が家に持ち帰り、当主の判断を仰ぎたく存じます。私たちの婚約がなくなれば、シェリー・トラヴィス様へ思いを告げることも出来るようになるでしょう。」
「っ、ユーリア!僕は、」
「ライル様の明るい未来のため、今のお話は私も父・当主に伝えましょう。それでは失礼致します。」
退室を告げ、私はその場を離れた。
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