理想とは違うけど魔法の収納庫は稼げるから良しとします

水野忍舞

文字の大きさ
上 下
33 / 50

大型魔獣処理法

しおりを挟む
「俺の土地に倉庫を作りたいんだけど、どうすれば良いかわかる?」
「商業ギルドからの紹介かしらね。あの更地を倉庫にするの?」
「俺に何かあった時に収納庫の中身まで失うのは勿体ないかなと思ってね」

何かの間違いで強い精霊を収納庫の中に入れてしまった時のことを考えると今までのように持ちっぱなしと言うのは怖いから、空いてる土地を倉庫として使おうと考えた。
生きた魔物の処理もこれからは積極的にやっていくつもりだ。
幸い? 雪の精霊の力を手に入れたことで大型魔獣の安全な処理法が思い付いたし後で試してみようと思う。
一部はこれまで通り騎士団に任せるつもりだし、小さいのは今まで通り檻水槽で頼むつもりだ。頼まなくなった理由を訊かれた時に答え難いからね。

「そう言うことなら販売も含めてうちで請け負いましょうか? 貴方が持ってる物が欲しいって父が他の商会に相談されることが時々あるのよ」
「そうなのか? 言ってくれたら良いのに」
「陛下の持ち物に頼み事は出来ないわよ、今回みたいな提案じゃないとね」

俺の立場を理解してる人ほどその辺り厳しいよな。
商家の子供と高位貴族子女より、下位貴族の子供の方がどちらかと言うとゆるい。ドゥーンハルト家の息子ってだけだったらここまでではないんだろうけどな。

「なら頼む。いや、そうだな任せるよ」
「任せる?」
「君の家なら俺を騙そうとはしないだろう? それにこの国で1番俺に詳しい商人は君だからな」
「わかったわ、やってみる」

なんだか決意したような顔をしてるけど、俺には交渉とか無理だから押し付けたのが本音だったり…。

「倉庫の報酬は王国金貨と帝国金貨、もしくは各種素材。販売の方は売った金額の3割くらいで良いかな?」
「3割は貰いすぎでしょ。それと帝国金貨も持ってるの?」
「有るよ、はい」

魔車や魔獣や魚を売った代金として貰ったものだ。
父たちが子供から受け取るほど困っていないし色彩鯉関連のお金が家に入っているので自由にして良いと言うからお金が減らないんだよね。

「帝国古金貨じゃない…」
「帝国古金貨?」
「魔王大戦前に造られたもので今は製造技術が失われているから数に限りが有って出回ることは殆どないのよ」
「そんなに貴重な物なのか」
「お金の価値としては大金貨の10倍でしかないとされているから普通は使われないのよ」
「俺との取引は普通ではなかったと」
「思っていたよりも皇帝の友人と言う立場は重いものなのね」

その後話を聞いていた商家の生徒たちが自分にも見せて欲しいとやってきた。
触っても良いと言ったら隣の子も含めて全員手を洗いに行ったのでそれほどなのかと驚いた。
学校へ通ってこのクラスになって本当に良かったと涙目でお礼を言ってきた子も何人か居て、帝国古金貨の価値がいまいち分からない俺はついていけなかった。

「この大陸の商人はみんな帝国古金貨を手にするのが夢なのよ」
「夢なのか?」
「商人にだけ伝えられる話しを幼い頃から聞かされてるからね」

商人にだけ伝わる話か。
興味はあるが俺は商人ではないからな…。



森林の奥まで飛び、木を収納した後穴を掘り土を固める。
そこに水の精霊から手に入れた力を使って水を出しある程度の高さまで溜まったら大型魔獣を落とし、そして雪の精霊から手に入れた力で水を凍らせる。
30分くらい待ってから魔物だけを収納、魔物の状態は死亡で身体は凍っていると言うことはなさそうだ。
氷は1時間後に溶け始めるようにしてあるのでそのうち水になるだろう。
何事もなければこの場所を大型魔獣の処理場に使う予定だ。

実験として小さな魔物を直接凍らせて殺した時は魔物が解けるまで時間掛かるし、溶け出すと変な汁が出たから氷で窒息させることにしたんだ。
解体まで考えると溺死や窒息が処理法には向いている。

「問題は解体なんだよな…」

大型魔獣の安全な処理法は見つかったけど解体は出来ないからなぁ。
ギルドに頼むとしても大型魔獣は倒せるのに小型は檻水槽なのかと言う疑問が出るだろうし…。
作る倉庫の中に解体する場所を作ってもらいギルドに頼らないと言うのはどうだろう。

自分の力で魔物を倒せるようになりました、方法は聞くなで誤魔化せてくれないだろうか?
それで行くか。
陽が傾いてきたのでその日は家に帰り、明日冒険者ギルドへ行くことにする。

昨日考えたがあまり利用してない王都の冒険者ギルドではなく、念の為一番馴染みのあるこの国で最初に拠点とした街のギルドへ向かうことにした。仮に大型魔獣を殺せる力を手にしたとしてもあのギルドなら俺を怖がったりしないと思ったからだ。

精霊の力に身体が馴染んだおかげなのか、王都からここまで3時間くらいで来れるようになっていて驚く。
今なら早朝に出れば帝国日帰りも可能な気がする。

「収納スキルって成長すると中に入った魔物も殺せるようになるんだね」

なんだと。
なるほど知らない人はそう考えるものなのか?

「めんどくさい手順に結構な時間も掛かりますけどね」
「中に入った人を間違って殺さない為には仕方がないんじゃない?」
「そうですね。簡単に殺せては中に入る人も怖いでしょうし」

このギルドはいつも悩みを解決してくれる良いところだと思う。

その日はライナスさんやカチュアさんたちと久しぶり会い、解体した魔物やクラーケン、海の魚を放出してみんなで騒いだ。
ライナスさんに今度来る時は酒買って来いと言われたので次は持って来ようと思う。

「魔王の大陸に美味い酒を作る魔物が居るらしいから取って来いよ」
「行きたくないですよ」
「そりゃそうだぜライナス」
「だよなあ!」

そんな馬鹿みたいなやりとりが楽しい。
やはり俺は貴族に向いていないと思う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。

まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」 ええよく言われますわ…。 でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。 この国では、13歳になると学校へ入学する。 そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。 ☆この国での世界観です。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

隠密スキルでコレクター道まっしぐら

たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。 その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。 しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。 奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。 これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。

【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様

岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです 【あらすじ】  カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。  聖女の名前はアメリア・フィンドラル。  国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。 「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」  そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。  婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。  ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。  そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。  これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。  やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。 〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。  一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。  普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。  だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。  カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。  些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

処理中です...