8 / 50
歓迎しない客と提案
しおりを挟む
「君のおかげで俺は村から出られるようになったんだよ、ありがとう」
領主様の家で会った人にそう言われた。
俺がこの国へ来た経緯を話した時から領主様たちは色々と考えていたそうだ。
教会でスキルを貰った後にあのまま村へ帰っていたら、俺は農作業をしながらたまに荷物を運ぶ生活をして一生を終えたかも知れないですねと言ったのがずっと気になっていたそうで、農村や貧民街で有効利用されずに埋もれているスキル持ちが今もいるかも知れないと考えてスキルの確認をさせたのだとか。
お礼を言った人は算術スキル持ちの農民だった。
身体がそんなに強くなかったこともあり両親や兄弟からあまり良い扱いをされてなかったらしく、村人のスキルを確認しに来た人に街へ連れて来られることになって生活が良くなったそうだ。
幼い頃に結婚の約束をしたものの算術と言う村だと役立たないスキルを手に入れたことで合わせる顔がないと距離を取っていた彼女さんと一緒に街へ来て結婚したらしい。
彼女さんは彼女さんで火属性の魔術を簡単に扱えるようになるスキルを持っていたのだが、薪に火を付けるのに便利程度の使い方しかしてなかったとか。
これまでの生活に必要なかった力を手に入れても使い方がわからない人や使う場所が無い人がわりと多いと言うことなんだろうと思う。
*
事前に準備していたこと、俺が一度に運ぶ量が増えたことで新しい街や村の建設はそんなに忙しくなかった。
農村や貧民街、元盗賊や犯罪者の奴隷などから開拓や整備に使えるスキル持ちを連れて行ったのも俺の仕事が減った理由か。
既に抜かれてる木を収納するだけで良いから長居する事もなく、日が暮れる前に帰宅することも多かった。
身体が成長したことで飛竜に乗っても疲れにくくなったし、去年の苦労が嘘のようだ。
今回の開拓は必要なスキル持ちを派遣する計画の試験運用なのだとか。
スキルによって派遣向き定住向きなど調べるらしい。
難しいことはわからないが、手に入れたスキルを活かして稼げる人が増えるなら良いことだと思う。
*
「お前が収納スキル持ちのアベルだな」
「そうだけど、誰?」
「一緒に来てもらおうか!」
街を歩いていたら数人に取り囲まれたので収納した。
気配察知でわかっていたので裏通りに移動したのだけれど、なんも疑わずに出てきたところを見るとこの手の事に慣れていないのかも知れない。
お、なかなか良いスキル持ちだな。
隠密、診断、双剣、剣術、拳闘、早駆け、瞬足と、今まで持ってなかったスキルが増えて美味しいなぁ。
診断スキルを手に入れたからなのか、収納庫内に有る物の状態がわかるようになったのはすごく嬉しい。
*
尋問の結果、俺が元住んでいた国から来た連中らしい。
元は我が国の者なのだから返すのが当たり前だろうとか、我が国が有効に使ってやるとか言っていたそうだ。
「帰るか?」
「絶対嫌ですね」
俺の仕事を領地内に留めていてくれる領主様と違って隣の国の全域に派遣されそうだし。
飛竜が居ないから移動は馬車か馬になるってのも無理。
自由じゃないけど不自由は感じていない今の生活を捨てるとか有り得ない。
「これからも似たようなのが来るんですかね」
「可能性は高いな」
「嫌ですね」
「じゃあ、貴族になるか」
「は?」
何言ってるんですか竜騎士さん…。
「何故と訊いても?」
「平民が誘拐されても国は何もしないが貴族が誘拐されたら国は取り戻す為に交渉し時には兵を出す」
「そうなんですか?」
「貴族からの信用が無くなったら国も困るからな。国は貴族が居ないと運用出来ない、自分を守ってくれない国に意味は無いと貴族に思われたら国が終わる」
「でも、そんな簡単になれるものでもないでしょう」
「兄貴は前からその気だし、俺も同意見だ」
そう言えば、この人領主様の弟さんだったな。
「考えてみます」
「そうしろ、悪いようにはしない」
**
「アベルは何か言ってたか?」
「貴族になる事を考えてみるだとよ」
「ほう」
「貴族になれば簡単に連れて行かれないと言ったらその気になったみたいだな」
「あいつらを見逃した効果が出たか」
「…やっぱりか。誘拐が成功したらどうするつもりだったんだよ」
「危害を加えてきそうな相手は収納しろと言ってるから大丈夫だろ」
「そうだろうけどよ」
「もう近づけないさ」
*****
診断スキルは健康状態を確認する医療スキルの一種。
この世界には人の強さを数値で表すような便利スキルはない。
竜騎士さんはいつも同じ人である。
声が緑川光に似ていると言う設定? しか無かった人だったんだけど何故か領主の弟になっていたwhy
領主様の家で会った人にそう言われた。
俺がこの国へ来た経緯を話した時から領主様たちは色々と考えていたそうだ。
教会でスキルを貰った後にあのまま村へ帰っていたら、俺は農作業をしながらたまに荷物を運ぶ生活をして一生を終えたかも知れないですねと言ったのがずっと気になっていたそうで、農村や貧民街で有効利用されずに埋もれているスキル持ちが今もいるかも知れないと考えてスキルの確認をさせたのだとか。
お礼を言った人は算術スキル持ちの農民だった。
身体がそんなに強くなかったこともあり両親や兄弟からあまり良い扱いをされてなかったらしく、村人のスキルを確認しに来た人に街へ連れて来られることになって生活が良くなったそうだ。
幼い頃に結婚の約束をしたものの算術と言う村だと役立たないスキルを手に入れたことで合わせる顔がないと距離を取っていた彼女さんと一緒に街へ来て結婚したらしい。
彼女さんは彼女さんで火属性の魔術を簡単に扱えるようになるスキルを持っていたのだが、薪に火を付けるのに便利程度の使い方しかしてなかったとか。
これまでの生活に必要なかった力を手に入れても使い方がわからない人や使う場所が無い人がわりと多いと言うことなんだろうと思う。
*
事前に準備していたこと、俺が一度に運ぶ量が増えたことで新しい街や村の建設はそんなに忙しくなかった。
農村や貧民街、元盗賊や犯罪者の奴隷などから開拓や整備に使えるスキル持ちを連れて行ったのも俺の仕事が減った理由か。
既に抜かれてる木を収納するだけで良いから長居する事もなく、日が暮れる前に帰宅することも多かった。
身体が成長したことで飛竜に乗っても疲れにくくなったし、去年の苦労が嘘のようだ。
今回の開拓は必要なスキル持ちを派遣する計画の試験運用なのだとか。
スキルによって派遣向き定住向きなど調べるらしい。
難しいことはわからないが、手に入れたスキルを活かして稼げる人が増えるなら良いことだと思う。
*
「お前が収納スキル持ちのアベルだな」
「そうだけど、誰?」
「一緒に来てもらおうか!」
街を歩いていたら数人に取り囲まれたので収納した。
気配察知でわかっていたので裏通りに移動したのだけれど、なんも疑わずに出てきたところを見るとこの手の事に慣れていないのかも知れない。
お、なかなか良いスキル持ちだな。
隠密、診断、双剣、剣術、拳闘、早駆け、瞬足と、今まで持ってなかったスキルが増えて美味しいなぁ。
診断スキルを手に入れたからなのか、収納庫内に有る物の状態がわかるようになったのはすごく嬉しい。
*
尋問の結果、俺が元住んでいた国から来た連中らしい。
元は我が国の者なのだから返すのが当たり前だろうとか、我が国が有効に使ってやるとか言っていたそうだ。
「帰るか?」
「絶対嫌ですね」
俺の仕事を領地内に留めていてくれる領主様と違って隣の国の全域に派遣されそうだし。
飛竜が居ないから移動は馬車か馬になるってのも無理。
自由じゃないけど不自由は感じていない今の生活を捨てるとか有り得ない。
「これからも似たようなのが来るんですかね」
「可能性は高いな」
「嫌ですね」
「じゃあ、貴族になるか」
「は?」
何言ってるんですか竜騎士さん…。
「何故と訊いても?」
「平民が誘拐されても国は何もしないが貴族が誘拐されたら国は取り戻す為に交渉し時には兵を出す」
「そうなんですか?」
「貴族からの信用が無くなったら国も困るからな。国は貴族が居ないと運用出来ない、自分を守ってくれない国に意味は無いと貴族に思われたら国が終わる」
「でも、そんな簡単になれるものでもないでしょう」
「兄貴は前からその気だし、俺も同意見だ」
そう言えば、この人領主様の弟さんだったな。
「考えてみます」
「そうしろ、悪いようにはしない」
**
「アベルは何か言ってたか?」
「貴族になる事を考えてみるだとよ」
「ほう」
「貴族になれば簡単に連れて行かれないと言ったらその気になったみたいだな」
「あいつらを見逃した効果が出たか」
「…やっぱりか。誘拐が成功したらどうするつもりだったんだよ」
「危害を加えてきそうな相手は収納しろと言ってるから大丈夫だろ」
「そうだろうけどよ」
「もう近づけないさ」
*****
診断スキルは健康状態を確認する医療スキルの一種。
この世界には人の強さを数値で表すような便利スキルはない。
竜騎士さんはいつも同じ人である。
声が緑川光に似ていると言う設定? しか無かった人だったんだけど何故か領主の弟になっていたwhy
1
お気に入りに追加
186
あなたにおすすめの小説
その最弱冒険者、実は査定不能の規格外~カースト最底辺のG級冒険者ですが、実力を知った周りの人たちが俺を放っておいてくれません~
詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
※おかげさまでコミカライズが決定致しました!
時は魔法適正を査定することによって冒険者ランクが決まっていた時代。
冒険者である少年ランスはたった一人の魔法適正Gの最弱冒険者としてギルドでは逆の意味で有名人だった。なのでランスはパーティーにも誘われず、常に一人でクエストをこなし、ひっそりと冒険者をやっていた。
実はあまりの魔力数値に測定不可能だったということを知らずに。
しかしある日のこと。ランスはある少女を偶然助けたことで、魔法を教えてほしいと頼まれる。自分の力に無自覚だったランスは困惑するが、この出来事こそ彼の伝説の始まりだった。
「是非とも我がパーティーに!」
「我が貴族家の護衛魔術師にならぬか!?」
彼の真の実力を知り、次第にランスの周りには色々な人たちが。
そしてどんどんと広がっている波紋。
もちろん、ランスにはそれを止められるわけもなく……。
彼はG級冒険者でありながらいつしかとんでもない地位になっていく。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
隠密スキルでコレクター道まっしぐら
たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。
その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。
しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。
奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。
これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。
二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す
SO/N
ファンタジー
主人公、ウルスはあるどこにでもある小さな町で、両親や幼馴染と平和に過ごしていた。
だがある日、町は襲われ、命からがら逃げたウルスは突如、前世の記憶を思い出す。
前世の記憶を思い出したウルスは、自分を拾ってくれた人類最強の英雄・グラン=ローレスに業を教わり、妹弟子のミルとともに日々修行に明け暮れた。
そして数年後、ウルスとミルはある理由から魔導学院へ入学する。そこでは天真爛漫なローナ・能天気なニイダ・元幼馴染のライナ・謎多き少女フィーリィアなど、様々な人物と出会いと再会を果たす。
二度も全てを失ったウルスは、それでも何かを守るために戦う。
たとえそれが間違いでも、意味が無くても。
誰かを守る……そのために。
【???????????????】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
*この小説は「小説家になろう」で投稿されている『二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す』とほぼ同じ物です。こちらは不定期投稿になりますが、基本的に「小説家になろう」で投稿された部分まで投稿する予定です。
また、現在カクヨム・ノベルアップ+でも活動しております。
各サイトによる、内容の差異はほとんどありません。
婚約破棄されて満足したので聖女辞めますね、神様【完結、以降おまけの日常編】
佐原香奈
恋愛
聖女は生まれる前から強い加護を持つ存在。
人々に加護を分け与え、神に祈りを捧げる忙しい日々を送っていた。
名ばかりの婚約者に毎朝祈りを捧げるのも仕事の一つだったが、いつものように訪れると婚約破棄を言い渡された。
婚約破棄をされて喜んだ聖女は、これ以上の加護を望むのは強欲だと聖女引退を決意する。
それから神の寵愛を無視し続ける聖女と、愛し子に無視される神に泣きつかれた神官長。
婚約破棄を言い出した婚約者はもちろんざまぁ。
だけどどうにかなっちゃうかも!?
誰もかれもがどうにもならない恋愛ストーリー。
作者は神官長推しだけど、お馬鹿な王子も嫌いではない。
王子が頑張れるのか頑張れないのか全ては未定。
勢いで描いたショートストーリー。
サイドストーリーで熱が入って、何故かドタバタ本格展開に!
以降は甘々おまけストーリーの予定だけど、どうなるかは未定
ハプスブルク家の姉妹
Ruhuna
ファンタジー
ハプスブルク家には美しい姉妹がいる
夜空に浮かぶ月のように凛とした銀髪黒眼の健康な姉
太陽のように朗らかな銀髪緑眼の病弱な妹
真逆な姉妹だがその容姿は社交界でも折り紙付きの美しさだった
ハプスブルク家は王族の分家筋の準王族である
王族、身内と近親婚を繰り返していた
積み重なったその濃い血は体質だけではなく精神も蝕むほどの弊害を生み出してきているなど
その当時の人間は知る由もない
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる