翔べない翼

古代 こしろ

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 もっと早くこうできていたら、変わることもあっただろうか。

 翔べない理由を尋ねられたら、こたえられない。

 今はこうしていられればいいと、ねがっていた。


 あったかい・・・ 。体があついのだけれど、気持ちいい。

 人に抱きしめられたのは初めてかもしれない。

「どうして」

 ぽつりとつぶやく。ラズリル様は御使いだ。

「どうやってここに来たの」

 小さい頃どこかにいた。他の子もいた。食事をさせてくれて、寝るところがあって。

親じゃない人達がみてた。

「孤児院に行ったときに、預けられていた子供達のなかで、君のことが気になったんだ。

翼のある子は他にもいたが。すぐに引き取ろうと決めた」

「すぐなの」

 ラズリルはくすくすと笑う。こんな笑い方をするのを見るのは初めてだ。

「そう。その日のうちに手続きをした」

 信じがたい。

 ラズリル様が引き取っていなかったらまだ、こじいんにいただろうか。


「正式に御使いになることが決まっていた。誰かのものにはなれない。直に接することはできなくなる。なんとしても尊石を引き取りたかった私は条件をのんだ」

 声がとても近くの聞こえる。やさしくあたたかい。やわらかい声というのだろう。

「すまない」

 さらにぎゅっと抱きしめられる。温もりを初めて感じる。ずっとこうしていたい気もする。

「お祈りの時間行かなくていいの」

「行かない。かわってもらったから。今日だけでも尊石といる」

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