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酷くない⁉︎
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カルド殿下をお通ししたのは、我が家でも一番立派な応接室。
普段使われることのない、特別なお客様をお通しする部屋なので、ドリスタン王国内でここを使うとしたら王族やそれこそレオン様くらい?
当のレオン様は以前「居るだけで気を使うような部屋は面倒だ」と言って普通の来客用の部屋を指定していたし、レイモンド王太子殿下も同じく。
基本、陛下や妃殿下がいらっしゃることなんてないし、使いどころがない部屋だと思ってたけれど、ついに日の目を見たよ……
ちなみに、私も覗いたことがあるだけで、まともに入ったのは初めてだよ!
だって、ここにある調度品をうっかり壊したらと思うと怖くて入れないってば。
クリステアとして生まれて、良い物に囲まれて育ったんならそういうのは気にならなくなるんじゃないのって思うかもしれない。
でもね、むしろ目が肥えた分、前世の庶民魂が待ったをかけるのよ。
これ壊したら、前世の給料何ヶ月分⁉︎ってね。
今も豪華なソファに座ってるだけでムズムズと落ち着かない。
カルド殿下は冷静かつ尊大な態度で上座に座ったけれど、護衛のティカさんは落ち着かない様子で周囲を見渡していた。
お茶の準備が整い、ティカさんが殿下の分のお茶を毒味してから手渡している。
そう、そうだよ。王族なんだから毒味とかするよね! これが正しい姿だよね。
レイモンド王太子殿下、毒入りかどうか鑑定できるとお兄様から聞いたけれど、だからって、ほいほい私の料理を食べちゃうのはどうかと思うよ⁉︎
まあ、毒入りの料理だなんて出す気もないし、お兄様を毒味役にされるのは嫌だけど……っと。
いやいや、今はレイモンド王太子殿下のことよりカルド殿下よね。
チラッとカルド殿下のほうを窺うも、眉間に皺を寄せ気難しい顔をして無言で紅茶を飲んでいるのでどうしたものか。
しばしの間、紅茶を飲みながら無言の状態が続いたがお父様がしびれを切らしたようだ。
「……失礼ながら発言をお許しいただけますかな?」
「許す」
「カルド殿下が何故我が娘といらしたのか教えていただいても? 先ぶれに戻られたせい……ごほん、先ぶれの者の話だけでは要領を得ませんでしたので」
聖獣様、と言いかけましたねお父様?
多分真白は「くりすてあがこうしんりょうのやたいにいたでんかってやつとれおんといっしょにやしきにかえってくる」程度の説明しかしてないと思われ……
お父様はそれだけじゃ意味がわからなくて質問攻めしたのだろうけど、真白からは詳細な情報は得られなかっただろうな。
この点については真白に伝言内容を明確に伝えなかった私のミスだわ。
そんなこんなでお父様はとりあえずレオン様とカルド殿下(香辛料から推測)がいらっしゃるということで大急ぎで出迎えの準備をしたに違いない。いや本当に申し訳ない。
この後の説教は甘んじて受けるしか……でもこんな展開、誰が予想できる⁉︎
無理でしょ!
理不尽な展開にぐぬぬ……となっていると、カルド殿下が私をチラッと見た。ん?
「……貴公が事の次第をどれだけ把握しているかは知らぬが、先日ご息女に媚薬の原料を与えたのは私だ。それを巡っていざこざが起きようとしたところをこちらのレオ殿に諌められ、ここへ招待いただいたのだ」
……大分端折ってる感があるけど、嘘は言ってないな。
「……あの媚薬は殿下が? どうしてまたそんな事態に? 我が娘との接点などございませんでしょうに」
「ドリスタン王国でどの程度売れるものなのか興味があったので、商人に身をやつして香辛料を扱う屋台を出したのだ。そこでレオ殿の紹介でご息女……クリステア嬢と引き合わされたのだ」
「レオ……殿? ですか。そうですか、この方の紹介ですか……」
ほぉん? みたいな顔でお父様がレオン様を見るけれど、レオン様はニヤニヤと笑っているだけなので、お父様は諦めたようにため息をひとつ吐いた。
「この方の紹介であればしかたありませんな。娘も疑うことなくついていったのでしょうから」
お父様にジロッと睨まれ、ぼーっとやり取りと眺めていた私は慌てて身を縮こまらせた。
確かにレオン様が私に悪意を向けるわけなんかないって思ってるからほいほいついていったので言い訳のしようもない。ぐぬぬ。
「媚薬を巡ってドリスタン王国の貴族がどう動くのか興味があった。このように幼い令嬢が、媚薬の使い道など詳しく知る由もなかろうから、紹介については当てが外れたが」
今度はカルド殿下が私のほうをチラッと見た。苦情はレオン様にお願いします。
「考えようによっては年嵩の者に相談するなりして中身が何か明らかになれば、取り上げられ、その相談者なり親なり、何らかの方法で接触があろうから、それはそれで都合がよかった」
まあ、相談はしたし、実際にチョコレートは検証用としてほとんど取り上げられたからその狙いは間違ってない。
「そうなれば、密かに利を得ようとする者、欲に溺れる者、はたまた正義の下に排除しようとする者……どのような者が湧いてくるのか期待していたら普通に香辛料の一つであるかのように下男が使いにやってくるではないか。話にならんと思い、主人を連れてこいとクリステア嬢を呼び寄せれば料理に使っただの、アレの有用性を暴くだのと、意味がわからぬ!」
え、そうは言われましても。
お父様やお母様だって追加購入やチョコレート増産に関しては賛成でしたよね⁉︎
だから料理長がシンにおつかいに行かせたんだし、それで買えなかったからしかたなく私が出張ったわけだし。
バッとお父様たちを見ると鎮痛な面持ちで額に手を当てて深いため息を吐いていた。
「ついに我々もクリステアに毒されてしまったか……」と嘆くとか、酷くありませんか⁉︎
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普段使われることのない、特別なお客様をお通しする部屋なので、ドリスタン王国内でここを使うとしたら王族やそれこそレオン様くらい?
当のレオン様は以前「居るだけで気を使うような部屋は面倒だ」と言って普通の来客用の部屋を指定していたし、レイモンド王太子殿下も同じく。
基本、陛下や妃殿下がいらっしゃることなんてないし、使いどころがない部屋だと思ってたけれど、ついに日の目を見たよ……
ちなみに、私も覗いたことがあるだけで、まともに入ったのは初めてだよ!
だって、ここにある調度品をうっかり壊したらと思うと怖くて入れないってば。
クリステアとして生まれて、良い物に囲まれて育ったんならそういうのは気にならなくなるんじゃないのって思うかもしれない。
でもね、むしろ目が肥えた分、前世の庶民魂が待ったをかけるのよ。
これ壊したら、前世の給料何ヶ月分⁉︎ってね。
今も豪華なソファに座ってるだけでムズムズと落ち着かない。
カルド殿下は冷静かつ尊大な態度で上座に座ったけれど、護衛のティカさんは落ち着かない様子で周囲を見渡していた。
お茶の準備が整い、ティカさんが殿下の分のお茶を毒味してから手渡している。
そう、そうだよ。王族なんだから毒味とかするよね! これが正しい姿だよね。
レイモンド王太子殿下、毒入りかどうか鑑定できるとお兄様から聞いたけれど、だからって、ほいほい私の料理を食べちゃうのはどうかと思うよ⁉︎
まあ、毒入りの料理だなんて出す気もないし、お兄様を毒味役にされるのは嫌だけど……っと。
いやいや、今はレイモンド王太子殿下のことよりカルド殿下よね。
チラッとカルド殿下のほうを窺うも、眉間に皺を寄せ気難しい顔をして無言で紅茶を飲んでいるのでどうしたものか。
しばしの間、紅茶を飲みながら無言の状態が続いたがお父様がしびれを切らしたようだ。
「……失礼ながら発言をお許しいただけますかな?」
「許す」
「カルド殿下が何故我が娘といらしたのか教えていただいても? 先ぶれに戻られたせい……ごほん、先ぶれの者の話だけでは要領を得ませんでしたので」
聖獣様、と言いかけましたねお父様?
多分真白は「くりすてあがこうしんりょうのやたいにいたでんかってやつとれおんといっしょにやしきにかえってくる」程度の説明しかしてないと思われ……
お父様はそれだけじゃ意味がわからなくて質問攻めしたのだろうけど、真白からは詳細な情報は得られなかっただろうな。
この点については真白に伝言内容を明確に伝えなかった私のミスだわ。
そんなこんなでお父様はとりあえずレオン様とカルド殿下(香辛料から推測)がいらっしゃるということで大急ぎで出迎えの準備をしたに違いない。いや本当に申し訳ない。
この後の説教は甘んじて受けるしか……でもこんな展開、誰が予想できる⁉︎
無理でしょ!
理不尽な展開にぐぬぬ……となっていると、カルド殿下が私をチラッと見た。ん?
「……貴公が事の次第をどれだけ把握しているかは知らぬが、先日ご息女に媚薬の原料を与えたのは私だ。それを巡っていざこざが起きようとしたところをこちらのレオ殿に諌められ、ここへ招待いただいたのだ」
……大分端折ってる感があるけど、嘘は言ってないな。
「……あの媚薬は殿下が? どうしてまたそんな事態に? 我が娘との接点などございませんでしょうに」
「ドリスタン王国でどの程度売れるものなのか興味があったので、商人に身をやつして香辛料を扱う屋台を出したのだ。そこでレオ殿の紹介でご息女……クリステア嬢と引き合わされたのだ」
「レオ……殿? ですか。そうですか、この方の紹介ですか……」
ほぉん? みたいな顔でお父様がレオン様を見るけれど、レオン様はニヤニヤと笑っているだけなので、お父様は諦めたようにため息をひとつ吐いた。
「この方の紹介であればしかたありませんな。娘も疑うことなくついていったのでしょうから」
お父様にジロッと睨まれ、ぼーっとやり取りと眺めていた私は慌てて身を縮こまらせた。
確かにレオン様が私に悪意を向けるわけなんかないって思ってるからほいほいついていったので言い訳のしようもない。ぐぬぬ。
「媚薬を巡ってドリスタン王国の貴族がどう動くのか興味があった。このように幼い令嬢が、媚薬の使い道など詳しく知る由もなかろうから、紹介については当てが外れたが」
今度はカルド殿下が私のほうをチラッと見た。苦情はレオン様にお願いします。
「考えようによっては年嵩の者に相談するなりして中身が何か明らかになれば、取り上げられ、その相談者なり親なり、何らかの方法で接触があろうから、それはそれで都合がよかった」
まあ、相談はしたし、実際にチョコレートは検証用としてほとんど取り上げられたからその狙いは間違ってない。
「そうなれば、密かに利を得ようとする者、欲に溺れる者、はたまた正義の下に排除しようとする者……どのような者が湧いてくるのか期待していたら普通に香辛料の一つであるかのように下男が使いにやってくるではないか。話にならんと思い、主人を連れてこいとクリステア嬢を呼び寄せれば料理に使っただの、アレの有用性を暴くだのと、意味がわからぬ!」
え、そうは言われましても。
お父様やお母様だって追加購入やチョコレート増産に関しては賛成でしたよね⁉︎
だから料理長がシンにおつかいに行かせたんだし、それで買えなかったからしかたなく私が出張ったわけだし。
バッとお父様たちを見ると鎮痛な面持ちで額に手を当てて深いため息を吐いていた。
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