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試作その三
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皆を談話室に移動するように促し、私とミリアだけ厨房に戻った。
「クリステア様、湯を沸かしますので少しお待ちいただけますか?」
ミリアがテキパキとやかんを手に取るのを静止する。
「あ、温め用のお湯とは別に水とミルクを合わせて温めてもらえるかしら?」
「え……あ、はい。かしこまりました」
ミリアは私の言葉で何をしたいのかわかったのか、心得たとばかりに片手鍋を手に冷蔵室へミルクを取りに向かった。
さすがミリア。
ミリアが茶器の準備をしている間にインベントリからスパイスを取り出す。
「あら、ミルクティーを淹れるのではないのですか? ……あ、お茶菓子に使うのですか?」
ミリアが沸かしたお湯をカップやポットに注ぎ入れて温めながら私の手元を見てこてん、と首を傾げた。
「ううん、お菓子じゃなくてミルクティーに入れるのよ」
私は調合したスパイスとは別にいくつかのスパイスを取り出していた。
ええと、淹れ方は色々あるけど、簡単なやつにしておこうかな。
水とミルクを合わせて温めた小鍋に、前世のアッサムに似た茶葉を放り込む。
それから、スパイス。
取り出していたのはガラムマサラにカルダモン、クローブ、シナモンスティック。
どれも粉状にしておいたものだ。
それらも小鍋に加えて蜂蜜で甘めに仕上げる。
スプーンで少し味見。
……うん、美味しくできた。
ミリアにも味見してもらう。
「まあ! いつものミルクティーが複雑な香りと味に……! これ、美味しいです!」
うむ、お茶マスターのミリアの合格点が出たのでよしとする。
「これを茶漉しで漉して……と」
温めておいたポットの中のお湯を捨て、茶漉しをセットして鍋の中身を注ぎ入れた。
「さあ、温かいうちに持っていきましょう」
「はい! 私がすぐに運びますので、クリステア様は先に談話室へどうぞ」
人数分のカップの中のお湯を捨てながらミリアが言うので、ここはまかせて皆が待つ談話室に向かった。
「あ、クリステアさん! あれ? お茶は……」
真白が黒銀との間に空けているスペースをペシペシと叩くので苦笑しつつもそこへ座る。
「すぐにミリアが運んでくるわ。それで、今のところ試作した品は使えると思う?」
「もちろんですよ! どれもなつかし……いえ、斬新で美味しかったです!」
マリエルちゃんが懐かしいと言いかけて慌てて訂正しつつも絶賛してくれた。
前世では食べ慣れた味でも、ドリスタン王国では食べたことないものね。
「おお、どれも食べたことない味で美味かったぜ。あとは、ボリュームと肉の量だな」
白虎様もにこやかに感想を述べつつも注文をつけてきた。
あー、あれじゃ食べ足りなかったって顔をしてるよ。
いやあれは試食だって言ったよね?
それにボリュームと肉の量って……結局のところ肉が足りないってことよね?
「主に文句があるなら、我が相手になるが?」
「くりすてあのごはんにけちつけるならたべさせないけど?」
ええと、私の左右で地味に威圧かけるのやめてほしい。
私は二人の魔力に慣れてるからいいけど、マリエルちゃんが「ひえっ」って怯えてるじゃないの。
「おっと、わりぃ。ケチつける気はないって。美味いのに食べらんねぇのはお預けみたいじゃん?」
「む、それはまあ……」
「たしかに」
こらこら、手のひらくるっとして白虎様に同意しないの君たち!
「トラ、あれは試作であり試食だとわかっているだろう。それに、美味いものを少しだけいただくほうが印象に残ることもあるのだ。提供する量も考慮に入れるべきだろう」
「へーい」
セイが嗜めると、白虎様はさして反省してもいない風に返事をした。これは懲りてないな?
しかし、セイの言い分ももっともかもしれない。美味しいものが少しだけ食べて「もっと食べたい!」と思うほうが後々印象に残りやすいかも。
聖獣の皆様がたくさん食べるせいもあって、いつも大衆食堂レベルに大盛りだもんね。
盛り付けも合わせて提供する量も料理長に相談してみなきゃ。
いいアドバイスをもらったわ。
「お待たせいたしました」
ミリアがワゴンを押して入ってくると、独特の香りが漂ってきた。
「あ、これって……?」
さすがマリエルちゃんは気づいたみたいね。
ミリアが全員にサーブするのを待って、皆に紹介した。
「これが試作第三弾。チャイよ」
「やっぱり!」
私の言葉にマリエルちゃんが破顔した。
お、マリエルちゃんはチャイ好きなのかな?
「これは、さっき調合したガラムマサラにカルダモン、クローブ、シナモンを合わせてミルクティーに混ぜたものなの。独特の味と香りが特徴で慣れると病みつきになるわよ」
私の説明を聞きながら皆がチャイを口にした。
「うわあ、美味しい! ガラムマサラでチャイが作れるんですね! カレーに入れるものだと思ってました!」
「ガラムマサラのスパイスはマサラチャイのスパイスと同じようなものが使われているのよ。だから、手軽にチャイが作れるってわけ。これにすりおろした生姜を入れてもいいけど、今回は甘めのレシピにしてみたわ」
だから、前世ではよく作っていたのよね。
カレー以外にも使うので、ガラムマサラは切らさないようにしていたっけ。
「へえぇ! 知らなかったですー」
マリエルちゃんは嬉しそうにごくごくとチャイを飲んでいた。
マリエルちゃんは抹茶ラテも好きだし、ミルク系のお茶が好みみたいね。
「我には少し甘いようだが、この香りは癖になりそうだ」
「おれ、これだいすきー!」
黒銀にはちょっと甘すぎたみたいだけど概ね好評、真白は甘いの好きだからスパイスの風味が問題なければ好みの味だと思ったわ。
セイや白虎様はヤハトゥールのお茶を飲み慣れているからか、ミルク系のお茶は少し苦手みたい。でも、面白い味だって楽しんでいたから大丈夫かな?
ミリアも淹れ方を覚えたので今後はスパイスさえあれば自分だけでも淹れられます! と言ってくれたので王宮では指導役になってもらうとしよう。さすミリ!
皆とチャイをいただきながら試作の感想を述べ合ってから、残りの試作は明日に持ち越すことにして私たちはおやすみの挨拶をし、それぞれ自室に戻ったのだった。
---------------------------
いつもコメントandエールポチッとありがとうございます!
執筆の励みになっておりますー!
ありがたやー!(≧∀≦)
「クリステア様、湯を沸かしますので少しお待ちいただけますか?」
ミリアがテキパキとやかんを手に取るのを静止する。
「あ、温め用のお湯とは別に水とミルクを合わせて温めてもらえるかしら?」
「え……あ、はい。かしこまりました」
ミリアは私の言葉で何をしたいのかわかったのか、心得たとばかりに片手鍋を手に冷蔵室へミルクを取りに向かった。
さすがミリア。
ミリアが茶器の準備をしている間にインベントリからスパイスを取り出す。
「あら、ミルクティーを淹れるのではないのですか? ……あ、お茶菓子に使うのですか?」
ミリアが沸かしたお湯をカップやポットに注ぎ入れて温めながら私の手元を見てこてん、と首を傾げた。
「ううん、お菓子じゃなくてミルクティーに入れるのよ」
私は調合したスパイスとは別にいくつかのスパイスを取り出していた。
ええと、淹れ方は色々あるけど、簡単なやつにしておこうかな。
水とミルクを合わせて温めた小鍋に、前世のアッサムに似た茶葉を放り込む。
それから、スパイス。
取り出していたのはガラムマサラにカルダモン、クローブ、シナモンスティック。
どれも粉状にしておいたものだ。
それらも小鍋に加えて蜂蜜で甘めに仕上げる。
スプーンで少し味見。
……うん、美味しくできた。
ミリアにも味見してもらう。
「まあ! いつものミルクティーが複雑な香りと味に……! これ、美味しいです!」
うむ、お茶マスターのミリアの合格点が出たのでよしとする。
「これを茶漉しで漉して……と」
温めておいたポットの中のお湯を捨て、茶漉しをセットして鍋の中身を注ぎ入れた。
「さあ、温かいうちに持っていきましょう」
「はい! 私がすぐに運びますので、クリステア様は先に談話室へどうぞ」
人数分のカップの中のお湯を捨てながらミリアが言うので、ここはまかせて皆が待つ談話室に向かった。
「あ、クリステアさん! あれ? お茶は……」
真白が黒銀との間に空けているスペースをペシペシと叩くので苦笑しつつもそこへ座る。
「すぐにミリアが運んでくるわ。それで、今のところ試作した品は使えると思う?」
「もちろんですよ! どれもなつかし……いえ、斬新で美味しかったです!」
マリエルちゃんが懐かしいと言いかけて慌てて訂正しつつも絶賛してくれた。
前世では食べ慣れた味でも、ドリスタン王国では食べたことないものね。
「おお、どれも食べたことない味で美味かったぜ。あとは、ボリュームと肉の量だな」
白虎様もにこやかに感想を述べつつも注文をつけてきた。
あー、あれじゃ食べ足りなかったって顔をしてるよ。
いやあれは試食だって言ったよね?
それにボリュームと肉の量って……結局のところ肉が足りないってことよね?
「主に文句があるなら、我が相手になるが?」
「くりすてあのごはんにけちつけるならたべさせないけど?」
ええと、私の左右で地味に威圧かけるのやめてほしい。
私は二人の魔力に慣れてるからいいけど、マリエルちゃんが「ひえっ」って怯えてるじゃないの。
「おっと、わりぃ。ケチつける気はないって。美味いのに食べらんねぇのはお預けみたいじゃん?」
「む、それはまあ……」
「たしかに」
こらこら、手のひらくるっとして白虎様に同意しないの君たち!
「トラ、あれは試作であり試食だとわかっているだろう。それに、美味いものを少しだけいただくほうが印象に残ることもあるのだ。提供する量も考慮に入れるべきだろう」
「へーい」
セイが嗜めると、白虎様はさして反省してもいない風に返事をした。これは懲りてないな?
しかし、セイの言い分ももっともかもしれない。美味しいものが少しだけ食べて「もっと食べたい!」と思うほうが後々印象に残りやすいかも。
聖獣の皆様がたくさん食べるせいもあって、いつも大衆食堂レベルに大盛りだもんね。
盛り付けも合わせて提供する量も料理長に相談してみなきゃ。
いいアドバイスをもらったわ。
「お待たせいたしました」
ミリアがワゴンを押して入ってくると、独特の香りが漂ってきた。
「あ、これって……?」
さすがマリエルちゃんは気づいたみたいね。
ミリアが全員にサーブするのを待って、皆に紹介した。
「これが試作第三弾。チャイよ」
「やっぱり!」
私の言葉にマリエルちゃんが破顔した。
お、マリエルちゃんはチャイ好きなのかな?
「これは、さっき調合したガラムマサラにカルダモン、クローブ、シナモンを合わせてミルクティーに混ぜたものなの。独特の味と香りが特徴で慣れると病みつきになるわよ」
私の説明を聞きながら皆がチャイを口にした。
「うわあ、美味しい! ガラムマサラでチャイが作れるんですね! カレーに入れるものだと思ってました!」
「ガラムマサラのスパイスはマサラチャイのスパイスと同じようなものが使われているのよ。だから、手軽にチャイが作れるってわけ。これにすりおろした生姜を入れてもいいけど、今回は甘めのレシピにしてみたわ」
だから、前世ではよく作っていたのよね。
カレー以外にも使うので、ガラムマサラは切らさないようにしていたっけ。
「へえぇ! 知らなかったですー」
マリエルちゃんは嬉しそうにごくごくとチャイを飲んでいた。
マリエルちゃんは抹茶ラテも好きだし、ミルク系のお茶が好みみたいね。
「我には少し甘いようだが、この香りは癖になりそうだ」
「おれ、これだいすきー!」
黒銀にはちょっと甘すぎたみたいだけど概ね好評、真白は甘いの好きだからスパイスの風味が問題なければ好みの味だと思ったわ。
セイや白虎様はヤハトゥールのお茶を飲み慣れているからか、ミルク系のお茶は少し苦手みたい。でも、面白い味だって楽しんでいたから大丈夫かな?
ミリアも淹れ方を覚えたので今後はスパイスさえあれば自分だけでも淹れられます! と言ってくれたので王宮では指導役になってもらうとしよう。さすミリ!
皆とチャイをいただきながら試作の感想を述べ合ってから、残りの試作は明日に持ち越すことにして私たちはおやすみの挨拶をし、それぞれ自室に戻ったのだった。
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