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おやつを作りましょう!
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さてと、マリエルちゃんも手伝えるようなおやつ……何にしようかな?
あまり時間をかけずにできるもの……そうだ。
私はインベントリからあるものを取り出した。
「え、じゃがいも……?」
マリエルちゃんが首を傾げる。
「そうよ、このじゃがいもでフライドポテトを作ります!」
新じゃがの時にインベントリに収納しておいたものだから、皮ごと使ったフライドポテトにすればいいかな。
「フライドポテト! 大好きですー!」
マリエルちゃんは、わあい! とはしゃいでじゃがいもを見つめる。
「……でも、これをどうするんです? まさか……」
「洗って、カットして、油で揚げます」
「や、やややっぱり……じゃがいもから作るんですね⁉︎」
いや、フライドポテトなんだからじゃがいもから作るに決まってるでしょ?
何から錬成するつもりだったの……?
「洗うのはともかくとして……カットして揚げるとか……そんな、高難易度なこと……」
マリエルちゃんが青い顔をしてブルブル震え出した。
「高難易度って……揚げ物は苦手な人にとっては難しく感じるかもしれないけれど、そんなに大変なことじゃないわよ?」
「クリステアさん、さては料理中にボヤを起こしたことありませんね……?」
「え、ボヤを起こしたこと……あるの?」
マリエルちゃんはこくりと頷く。マジか。
「料理漫画の真似をして、野菜炒めでフランベってやつを試してみたんです。そしたら、火柱が上がって……ふふ……へへへ」
マリエルちゃんが前世を思い出したのか、遠い目をしている。おーい、帰ってきてー!
「わかった。揚げるのは私がやるから! 洗うのとカットを手伝って。ね?」
それなら火事にはならないから。
「カット……クリステアさんは、流血事件を起こしたことは……?」
「あああああ! わかった! わかりました! とにかくじゃがいもを洗うのを手伝って、ね?」
「はい……」
マリエルちゃんに私の割烹着の予備を装着させ、シンクでじゃがいもを洗ってもらう。
マリエルちゃんの料理音痴は深刻そうね……
「クリステアさん、できました!」
きれいに洗い上げたじゃがいもをザルに入れたマリエルちゃんは、ふんす! と鼻息荒くザルを掲げた。
「ええと、それじゃあカットだけど……」
「わかりました。……私、皮むきは指を落とす覚悟で頑張ります!」
「いや、そんな覚悟は要らないからね⁉︎ これは新じゃがだから、皮ごと使うから!」
「あ、なんだ……よかったぁ」
マリエルちゃんは安心したように肩の力を抜いた。
なんでじゃがいもの皮むきごときで指を詰める覚悟がいるのよ⁉︎
マリエルちゃん……なんて恐ろしい子!
「じゃ、じゃあ私がカットするわね……」
じゃがいもをくし切りにして、アク抜きのために水を張ったボウルに入れてさらし、10分程度経ったら取り出して水気を取っておく。
私がカットして、マリエルちゃんがせっせとボウルに移し、黒銀や真白が先にさらしておいた分の水気を風魔法で吹き飛ばすという作業を繰り返し、たくさん準備できたところで揚げ油の用意だ。
「つ、ついに油の出番……ッ」
マリエルちゃんは黒銀の後ろに隠れてビクビクしながらこちらを見ている。
「そんなに怯えなくても……今回はそんなに油を使わないから大丈夫よ」
フライパンにポテトが少し浸るくらいの高さまで油を入れて揚げ焼きにしていくのだ。
ジュワワワワ……
ふわぁ……そういえばフライドポテトは久々かも。
揚げ物の香りってどうしてこうも食欲をそそるのかしら。
ポテトがキツネ色に揚がったら、紙を敷いたバットにポテトを上げていく。
パラパラと塩をふって、完成!
「できたての試食は作った人の特権よ。さあ、どうぞ」
試食用のポテトを差し出すと、マリエルちゃんや黒銀たちが我先にとポテトを頬張った。
「ふわああぁ……ホックホクで、美味しいぃ……!」
「うむ。久々に食べるが、やはりできたては格別だな」
「うん! いくらでもたべられそう……」
皆がうっとりもぐもぐ味わっているのを見てから、私も一つ……ぱくり。
はあ……いいわあ……!
マリエルちゃんの言うとおり、ホックホクの熱々で美味しい!
「さあ、じゃんじゃん揚げていくわよ!」
冷めないよう残りはインベントリに入れて、次々に揚げていく。
収納した瞬間、マリエルちゃんたちが「あ……」って、残念そうな顔をしたけれど、ここでつまみ食いしてたらそれだけでお腹いっぱいになっちゃうからね。
談話室にも腹ペコ男子たちが待ってるんだから、早く持っていってあげなくちゃ。
「お待たせしました!」
談話室に入る直前にインベントリからフライドポテトを取り出してワゴンに乗せたので熱々の状態だ。
フライドポテトに添えたのはケチャップ、マスタード。それからマリエルちゃんのリクエストでマヨネーズも用意した。
「こ、これは……?」
エイディー様は初めて見るフライドポテトの山に戸惑っている。
「これはフライドポテトといって、じゃがいもを切って油で揚げて塩をふったものですわ。こうして指でつまんで食べるのです」
私が実際に食べて見せると、エイディー様はごくりと喉を鳴らし、ポテトをひとつつまみ上げた。
「あ、熱い……?」
「これは熱いうちにいただくのが美味しいのです。さあ、どうぞ」
皆が次々にポテトを手に取り口に運んでいるのをキョロキョロと見ていたエイディー様は、意を決したようにポテトを口に放り込んだ。
「……! 熱っ! でも美味っ!」
キラキラお目目がフライドポテトをロックオンしたかと思うと、数本まとめてつまみあげて頬張り、モッシャモッシャと咀嚼しはじめた。
よかった、気に入ったみたい。
あ、そうそう、これもおすすめしなきゃ。
「そのままでも美味しいのですが、このケチャップやマスタードをつけても美味しいですよ?」
「マヨネーズもおすすめです!」
私がケチャップやマスタードを小皿に取ってエイディー様に勧めると、すかさずマリエルちゃんがマヨネーズもプッシュしてきた。
「あ、それからこのマヨネーズとケチャップを混ぜて……はい! これもおすすめです!」
……オーロラソースまで。
マリエルちゃんのマヨネーズ推しがすごい。
「ん! これ、どれをつけても美味い!」
色んな味で変化がつけられるので、エイディー様の手が止まる気配がない。
あんまり食べすぎると喉が渇いちゃうよ……と思ったところでミリアがお茶のおかわりを注いでくれた。さすがミリア。
「俺らも負けちゃいらんねーな!」
白虎様たちもエイディー様の勢いに負けじと参戦したので、たくさん揚げたはずのフライドポテトはあっという間になくなってしまった。
「はー……美味かったなぁ。なあ、これまた食いにきていい?」
空になったお皿を指してエイディー様が言う。
「そうですね……今回はお客様としておもてなししましたけれど、次回からは友人としてお手伝いいただきますよ? 特別寮のモットーは『働かざるもの食うべからず』ですので」
「俺も……これを作るのを手伝うのか?」
「はい」
毎回おやつ目当てに遊びに来られても困るからね。嫌なら来なくていいのよ?
集まっておしゃべりするだけならカフェテリアやサロン棟だってあるんだから。
ある程度線引きしなきゃ、これが当たり前だと思われたくないものね。
「やったー! やるやる! 作り方を覚えたら、家でもこれが食べられるんだろ? 絶対手伝う!」
「えっ? あ、はい……」
え、いいんだ? おぼっちゃまだから料理やお手伝いなんて嫌がるかと思ったのに。
「ど、どうしよう……女子力で男子に負けてしまう……」
マリエルちゃん、ボソッと発言しているけれど貴女の場合、それ以前の問題だからね……?
エイディー様は嬉しそうに立ち上がり、マリエルちゃんに手を差し伸べた。
「じゃあまたくる! マリエル嬢、そろそろ寮に戻る時間だから一緒に帰ろうぜ!」
「ふえっ⁉︎ は、はひっ? い、いっひょにでふか?」
マリエルちゃん……可愛いのに本当に残念な子だよ……可愛いからいいけど。
「どうせ帰り道は一緒だし、すぐそこだからさ、行こうぜ!」
「は、はいぃ!」
エイディー様はそろそろと出したマリエルちゃんの手をつかみグイッと立ち上がらせ、玄関に向かった。え、強引だな⁉︎
慌てて私たちもその後に続いて玄関に向かい、二人を見送ったのだった。
……乙女ゲームならエイディー様は強引系の俺様脳筋キャラって感じだわね。
二人並んで寮に向かう後ろ姿は幼くも微笑ましいカップルにも見えるけれど……残念だったな、片方は残念腐令嬢だ。
きっとエイディー様と二人きりで返答するのにテンパりながらも「このシチュエーションならああしてこうなって……ぐふふ」とか考えてるに違いない。うん。
前世の友人がそうだったからね……(遠い目)
---------------------------
コミカライズ版、文庫版ともに「転生令嬢は庶民の味に飢えている」三巻が発売中です!
どちらも書き下ろし番外編がおまけについていますので、お楽しみいただけると思いますのでぜひぜひ~!( ´ ▽ ` )
あまり時間をかけずにできるもの……そうだ。
私はインベントリからあるものを取り出した。
「え、じゃがいも……?」
マリエルちゃんが首を傾げる。
「そうよ、このじゃがいもでフライドポテトを作ります!」
新じゃがの時にインベントリに収納しておいたものだから、皮ごと使ったフライドポテトにすればいいかな。
「フライドポテト! 大好きですー!」
マリエルちゃんは、わあい! とはしゃいでじゃがいもを見つめる。
「……でも、これをどうするんです? まさか……」
「洗って、カットして、油で揚げます」
「や、やややっぱり……じゃがいもから作るんですね⁉︎」
いや、フライドポテトなんだからじゃがいもから作るに決まってるでしょ?
何から錬成するつもりだったの……?
「洗うのはともかくとして……カットして揚げるとか……そんな、高難易度なこと……」
マリエルちゃんが青い顔をしてブルブル震え出した。
「高難易度って……揚げ物は苦手な人にとっては難しく感じるかもしれないけれど、そんなに大変なことじゃないわよ?」
「クリステアさん、さては料理中にボヤを起こしたことありませんね……?」
「え、ボヤを起こしたこと……あるの?」
マリエルちゃんはこくりと頷く。マジか。
「料理漫画の真似をして、野菜炒めでフランベってやつを試してみたんです。そしたら、火柱が上がって……ふふ……へへへ」
マリエルちゃんが前世を思い出したのか、遠い目をしている。おーい、帰ってきてー!
「わかった。揚げるのは私がやるから! 洗うのとカットを手伝って。ね?」
それなら火事にはならないから。
「カット……クリステアさんは、流血事件を起こしたことは……?」
「あああああ! わかった! わかりました! とにかくじゃがいもを洗うのを手伝って、ね?」
「はい……」
マリエルちゃんに私の割烹着の予備を装着させ、シンクでじゃがいもを洗ってもらう。
マリエルちゃんの料理音痴は深刻そうね……
「クリステアさん、できました!」
きれいに洗い上げたじゃがいもをザルに入れたマリエルちゃんは、ふんす! と鼻息荒くザルを掲げた。
「ええと、それじゃあカットだけど……」
「わかりました。……私、皮むきは指を落とす覚悟で頑張ります!」
「いや、そんな覚悟は要らないからね⁉︎ これは新じゃがだから、皮ごと使うから!」
「あ、なんだ……よかったぁ」
マリエルちゃんは安心したように肩の力を抜いた。
なんでじゃがいもの皮むきごときで指を詰める覚悟がいるのよ⁉︎
マリエルちゃん……なんて恐ろしい子!
「じゃ、じゃあ私がカットするわね……」
じゃがいもをくし切りにして、アク抜きのために水を張ったボウルに入れてさらし、10分程度経ったら取り出して水気を取っておく。
私がカットして、マリエルちゃんがせっせとボウルに移し、黒銀や真白が先にさらしておいた分の水気を風魔法で吹き飛ばすという作業を繰り返し、たくさん準備できたところで揚げ油の用意だ。
「つ、ついに油の出番……ッ」
マリエルちゃんは黒銀の後ろに隠れてビクビクしながらこちらを見ている。
「そんなに怯えなくても……今回はそんなに油を使わないから大丈夫よ」
フライパンにポテトが少し浸るくらいの高さまで油を入れて揚げ焼きにしていくのだ。
ジュワワワワ……
ふわぁ……そういえばフライドポテトは久々かも。
揚げ物の香りってどうしてこうも食欲をそそるのかしら。
ポテトがキツネ色に揚がったら、紙を敷いたバットにポテトを上げていく。
パラパラと塩をふって、完成!
「できたての試食は作った人の特権よ。さあ、どうぞ」
試食用のポテトを差し出すと、マリエルちゃんや黒銀たちが我先にとポテトを頬張った。
「ふわああぁ……ホックホクで、美味しいぃ……!」
「うむ。久々に食べるが、やはりできたては格別だな」
「うん! いくらでもたべられそう……」
皆がうっとりもぐもぐ味わっているのを見てから、私も一つ……ぱくり。
はあ……いいわあ……!
マリエルちゃんの言うとおり、ホックホクの熱々で美味しい!
「さあ、じゃんじゃん揚げていくわよ!」
冷めないよう残りはインベントリに入れて、次々に揚げていく。
収納した瞬間、マリエルちゃんたちが「あ……」って、残念そうな顔をしたけれど、ここでつまみ食いしてたらそれだけでお腹いっぱいになっちゃうからね。
談話室にも腹ペコ男子たちが待ってるんだから、早く持っていってあげなくちゃ。
「お待たせしました!」
談話室に入る直前にインベントリからフライドポテトを取り出してワゴンに乗せたので熱々の状態だ。
フライドポテトに添えたのはケチャップ、マスタード。それからマリエルちゃんのリクエストでマヨネーズも用意した。
「こ、これは……?」
エイディー様は初めて見るフライドポテトの山に戸惑っている。
「これはフライドポテトといって、じゃがいもを切って油で揚げて塩をふったものですわ。こうして指でつまんで食べるのです」
私が実際に食べて見せると、エイディー様はごくりと喉を鳴らし、ポテトをひとつつまみ上げた。
「あ、熱い……?」
「これは熱いうちにいただくのが美味しいのです。さあ、どうぞ」
皆が次々にポテトを手に取り口に運んでいるのをキョロキョロと見ていたエイディー様は、意を決したようにポテトを口に放り込んだ。
「……! 熱っ! でも美味っ!」
キラキラお目目がフライドポテトをロックオンしたかと思うと、数本まとめてつまみあげて頬張り、モッシャモッシャと咀嚼しはじめた。
よかった、気に入ったみたい。
あ、そうそう、これもおすすめしなきゃ。
「そのままでも美味しいのですが、このケチャップやマスタードをつけても美味しいですよ?」
「マヨネーズもおすすめです!」
私がケチャップやマスタードを小皿に取ってエイディー様に勧めると、すかさずマリエルちゃんがマヨネーズもプッシュしてきた。
「あ、それからこのマヨネーズとケチャップを混ぜて……はい! これもおすすめです!」
……オーロラソースまで。
マリエルちゃんのマヨネーズ推しがすごい。
「ん! これ、どれをつけても美味い!」
色んな味で変化がつけられるので、エイディー様の手が止まる気配がない。
あんまり食べすぎると喉が渇いちゃうよ……と思ったところでミリアがお茶のおかわりを注いでくれた。さすがミリア。
「俺らも負けちゃいらんねーな!」
白虎様たちもエイディー様の勢いに負けじと参戦したので、たくさん揚げたはずのフライドポテトはあっという間になくなってしまった。
「はー……美味かったなぁ。なあ、これまた食いにきていい?」
空になったお皿を指してエイディー様が言う。
「そうですね……今回はお客様としておもてなししましたけれど、次回からは友人としてお手伝いいただきますよ? 特別寮のモットーは『働かざるもの食うべからず』ですので」
「俺も……これを作るのを手伝うのか?」
「はい」
毎回おやつ目当てに遊びに来られても困るからね。嫌なら来なくていいのよ?
集まっておしゃべりするだけならカフェテリアやサロン棟だってあるんだから。
ある程度線引きしなきゃ、これが当たり前だと思われたくないものね。
「やったー! やるやる! 作り方を覚えたら、家でもこれが食べられるんだろ? 絶対手伝う!」
「えっ? あ、はい……」
え、いいんだ? おぼっちゃまだから料理やお手伝いなんて嫌がるかと思ったのに。
「ど、どうしよう……女子力で男子に負けてしまう……」
マリエルちゃん、ボソッと発言しているけれど貴女の場合、それ以前の問題だからね……?
エイディー様は嬉しそうに立ち上がり、マリエルちゃんに手を差し伸べた。
「じゃあまたくる! マリエル嬢、そろそろ寮に戻る時間だから一緒に帰ろうぜ!」
「ふえっ⁉︎ は、はひっ? い、いっひょにでふか?」
マリエルちゃん……可愛いのに本当に残念な子だよ……可愛いからいいけど。
「どうせ帰り道は一緒だし、すぐそこだからさ、行こうぜ!」
「は、はいぃ!」
エイディー様はそろそろと出したマリエルちゃんの手をつかみグイッと立ち上がらせ、玄関に向かった。え、強引だな⁉︎
慌てて私たちもその後に続いて玄関に向かい、二人を見送ったのだった。
……乙女ゲームならエイディー様は強引系の俺様脳筋キャラって感じだわね。
二人並んで寮に向かう後ろ姿は幼くも微笑ましいカップルにも見えるけれど……残念だったな、片方は残念腐令嬢だ。
きっとエイディー様と二人きりで返答するのにテンパりながらも「このシチュエーションならああしてこうなって……ぐふふ」とか考えてるに違いない。うん。
前世の友人がそうだったからね……(遠い目)
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