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5‐2 捜索パーティー(中編)
しおりを挟むまたタイミングの悪いことに、イルマが大量の通貨が入った袋を渡してきた。
『セイジさん、小粒金の換金が済みましたよ』ってな。
思うに、これは作為的なもんだったんだろうな。
イルマは俺が奢らざるを得ない状況に追い込んだ訳だ。商魂逞しいことで。
当たり前のように四人掛けのテーブルに移動させられて三人の昼飯を奢らされた。リンシャオが言うには『歓迎してあげるんだから、あんたが払って当然でしょ』だとさ。
『奢らないなんてけち臭いこと言うなよ? おっさん』
『二人とも、セイジさんはパーティーに入ると決めた訳じゃないんですよ』
『え、そんなこと言われても困るわよ。もう注文しちゃったし』
『そうそう。俺ら金ねぇから。おっさんに任せときゃいいって』
『まったくもう。すみませんセイジさん。あとで返しますんでお願いします』
まぁこんな感じでたかられた訳だ。あとで返すなんて言われてもみっともなくて催促できんわそんなもん。その辺りを突いてくるオットーもいやらしいよな。
元がタダだし時間も勿体ないから止むなく聞き入れたが、そうじゃなかったら絶対に奢ってないからな。ケチだなんだと言われようが知ったことかと突っぱねるね。
なんでこんな厚かましいアホ共に俺が飯を奢らないといけないんだよ。いくらトラブルを避けたい俺でも腹に据えかねるわ。不愉快にならん方がおかしいぞこんなもん。
どう見ても十代後半から二十代前半なのに初対面から敬語や丁寧語を使わない。
俺を舐めてかかってるから明らかに自分たちの方が上であるという態度を取る。
エンゲンには武器を訊かれてトレンチナイフを見せたら『そんなもんじゃゴブリン殺すのも一苦労だろ』と指を差して笑われたし、リンシャオには『ちょっとオットー、こいつ本当に大丈夫なの?』と目の前でひそひそと俺のことについて相談された。
あんたとか、こいつとか、お前とか、おっさんとか。
俺はおっさんだがおっさんだからといっておっさん呼びするのは問題だぞ。
こんな奴らと組んでるなんてよっぽど寛大な子なんだろうなカザマ君。早く助けてやらんと気の毒だ。君のことを一切心配してないぞこのアホ共は。
オットーぐらいか。最初に心配してる感じを出したのは。
とはいえこいつもちょいちょい俺の情弱ぶりを小馬鹿にしてくるんだよな。そんなもん仕方ないだろうが俺はこの国の文化に触れるのが初めてなんだからよお。
ああ腹立つわこのクソガキ共。危険な目に遭っても助けてやらねぇからな。
ホログラムカードの戦闘状態を知らせる機能をオフにしといてよかったわ。どう考えたって反応しない方がおかしいだろ。何回もイラッときてるからな既に。
「なぁ、ところでよ。おっさんはシュウと同郷ってのは本当か?」
「はい、本当ですよ」
「どこにあるの? シュウは『遠いところ』としか言わなくてさ」
俺はちょっと考えてから天を指差して笑顔を作る。
「空から来ました。神様の使いみたいなもんなんですよ。俺たちは」
「はぁ? 何言ってんだおっさん」
エンゲンはあからさまに顔を怪訝なものにしたが、リンシャオはオットーに近寄り俺をちらちら見ながらまた小声で喋り出した。俺の正気を疑ったのだろう。
でも本当のことだからな。実際エレスは『神の御使い』だし。俺はそのエレスと魂で繋がってるから御使いみたいなもんだ。特に使命とかはないけどな。
別に知られたところでどうこうなるものでもない。冗談で済まされるだろうと思ったがエンゲンもリンシャオも馬鹿にされたと思ったようだ。
二人は不機嫌そうな顔をした。オットーまで渋い顔をしている。
「セイジさん、今のは流石に良くないです。捜索に誘ってあげたんですから空気を良くするようにしてもらわないと。僕ばっかり頑張ってるじゃないですか」
ん? 聞き間違いかな?
「誘ってあげた?」
俺は首を傾げて三人に視線を巡らす。こっちは捜索を引き受けた側なんだが、どうして恩着せがましい言い方をされるんだろうな。そんで和を乱してるのが俺だってか。
ああ、なるほどそうか。これはあれだな。類は友を呼ぶってやつだ。
オットーも駄目だわ。ただ丁寧に話せて上辺を取り繕えるだけだったな。
心配してるってのは俺の勘違いか。三人が三人とも、子供を返せないと金を払わなきゃいけないから仕方なく捜すってことね。
よくわかった。こいつらしっかりクズだわ。
そうとわかれば早々に誤解を解いた方がいいか。アホの子ってだけなら憐れみの目で見てられるがクズだからな。つけ上がられても気分悪いしな。
「それで、誘ってあげたというのはどういうことですかね?」
物腰柔らかく訊くと、オットーが鼻を鳴らした。
「言葉通りですよ。誘ってあげたじゃないですか。あなたみたいな世間知らずのおぼっちゃまを。同胞を捜すのに僕らの協力が必要だったでしょう?」
「ちょっと意味がわからないんですが。そちらが協力を要請したんでしょう?」
「おい、おっさん! なんだその態度は! ふざけてんのか!」
「そうよ。貴族みたいに喋っちゃってさ。たかが商家の馬鹿息子が何様なの? どうせ一人じゃ何もできやしない癖に。一丁前な口きいてんじゃないわよ」
「二人が怒るのも無理はありませんよ。さっきも空から来た神様の使いだとか言ってましたね。人を馬鹿にするのも大概にしてもらいたいものですね」
俺は頭を掻く。話にならん。
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