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完結後おまけ編
閑話 因縁の対決(2)
しおりを挟む(妾の背後を取るじゃと……⁉)
目を見開いて、心で呟く。苦しみに噎せると、どぷりと血が吐き溢れた。
ギーは目を疑っていた。煙草が口から離れて落ちる。
「お前……!」
ニルリティの背後から、リンドウが姿を現した。
その顔は不敵に笑んでいた。
「久し振りやのう、ギー。元気そうで良かったわ」
(どうやった⁉ 【影転移】か⁉ いや、影はねぇ! 何しやがったんだ⁉)
ギーは困惑した。リンドウがやったのは、かつてギーがユーゴに対して行ったことと同じ。【影転移】で地面に移動し、また上空へ舞い上がったというだけ。ただ一つだけ違うことがある。それは探知に捉えられない【気配断ち】を使っているということ。
ギーとニルリティは、探知に頼り過ぎていた為、肌に触れる空気の動きに気づけなかったのである。或いは、ユーゴのことさえ考えていなければ、慢心があったとしても、これほどの窮地に陥ることもなかった。だが、もう遅い。
鉄扇が更に深く突きこまれ、遂にはリンドウの手がニルリティの胸を貫く。
「ぐぶっ」
「ニル!」
ギーはニルリティに向かい手を伸ばす。
刹那、その手に線が閃く。
「あ? 痛っ⁉」
鋭い痛みに襲われ、ギーは咄嗟に腕を引く。だが肘から先は空中に置いてきぼりになった。それは血を噴き出して、地面に向かって落ちていく。
ギーは顔をしかめ、攻撃が放たれたと思しき方へと顔を向ける。
そこには、血払いもせず、静かに刀を鞘に戻すスズランの姿があった。
カチン――。
「『ただの一振り。されどその一振りに勝るものなし』。ギーよ、覚えているか。我が父オモト、我が兄カラタチが目指した剣技のことを」
毎日、ただの一刀も振れなくなる程に剣を振り続けた。
手の皮は剥け、豆ができ、血に濡れる。
回復術で治癒すると、得た感覚を失うとイノリノミヤに言われ、自然に任せて癒やし、何も得られず葛藤し、それでも諦めずに、肉が裂けても剣を振るのを止めなかった。その努力は実を結んだ。スズランは父と兄が目指した境地に辿り着いたのだ。
刃は血脂に濡れず、血煙すら上げず、ただ通り抜ける一本の線となる。
「抜刀唯一。貴様を屠る技の名だ」
ギーは言葉を失った。
スズランの背後に、オモト、カラタチ、ウカノの姿が見えた。
皆、スズランの肩に触れ、憐れむような目で自分を見ていた。
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