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それぞれの成長 パーティー編
閑話 面倒見の良い二人(2)
しおりを挟む「能力値だけなら、今のこいつらも、あんときのユーゴと変わらねぇんだけどな」
「あれと比べるのは可哀想だよ。私らとやったとき、ユーゴは、ずっとフィルのこと考えて動いてたからね。フィルに意識向けられなかったろ?」
「ああ、後で気づいた。わざと避け切れない振りして掠らせてたんだってな。こっちをその気にさせて引きつけるなんて真似するか普通? 格上相手だぜ?」
「それも切り札あってのことなんだろうけどね。よく言ってたじゃないか『安全第一』って。基本はその考え方に徹してるんだと思うよ。能力値がいくらあろうが、状況判断能力が優れてる奴には負けちまうって、身をもって教えられた良い経験だったよ」
確かに、とナッシュは苦笑した。マンティコア討伐後、ユーゴとフィルの能力値平均が百程度しかないと聞いて度肝を抜かれたことを思い出す。
(シャフトですら『ステボ確認させろ』って言ったからな)
結果的に、あの場にいた若頭二人とその補佐二人は、それが事実であると知り絶句した。シャフトは驚きすぎてサングラスを外してステボを凝視したくらいだ。
「俺ら、あんとき百五十超えてたもんな。シャフトもマンティコアとやったときのユーゴの動きは、自分と同等だと思ってたらしいぜ。すげーやりやすかったってよ」
「それ、レインも言ってたよ。援護の入り方が上手いってさ。よく見てんだろうね」
ミリーのパーティーとホブゴブリンの戦闘開始から五分が過ぎた。
ミリーが息切れし、ホブゴブリンから離れた。それを見計らい、オライアスが大剣を振りかぶって一気に距離を詰めたが、そこに同じく機を見計らって発射したトロアの【石弾】が飛んでいく。間もなく、【石弾】はオライアスの背に直撃した。
「何やってんのよ!」
ミリーが怒鳴り声を上げた。額に浮いた汗を袖で拭いながら、肩で息をしている。援護になど入れそうもないほど勝手な消耗をしておいて、ホブゴブリンの目の前で転倒した弟の心配よりも、トロアへの叱責を優先した。その態度に、クロエは激怒した。
「ミリー! あんたはリーダーやめちまいな!」
ミリーがビクリと肩を跳ね上げ、クロエの方を向く。その間に、ホブゴブリンの首は胴から離れていた。オライアスとトロアの連携ミスが起きた時点で、ナッシュが【疾駆】で駆け寄り、長剣で撥ねていたのである。
クロエはミリーに歩み寄ると、容赦なく頬を引っ叩いた。
「弟が死んじまうかもしれないってことすら分からないのかい!」
「え……?」
「私とナッシュがいるから大丈夫だとでも思ってんのかい! よく見な!」
オライアスは動かない。トロアが駆け寄り、泣いて謝りながら回復術を掛けていた。ナッシュがクロエとミリーの方を向き、かぶりを振る。
「駄目だ。背骨をやっちまってる。街で診てもらおう」
ナッシュがオライアスを背負う姿を見て、ようやくミリーは何が起きたかを理解した。そして、この状況を招いたのが、仲間に気を配らなかったリーダーの自分にあると気づき、血の気が引いて目の前が真っ暗になった。
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