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明かされる真実編

13.そんな馬鹿なと言うに値する話(5)

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「お陰で二人とも同じスキル持ちになっちゃったんだよ。能力値も同じくカンストしてるし、弱ったもんさ」

「何を弱るかは知らんが、話が逸れておるぞ。坊主、もう分かったじゃろうが、ラグナス帝国は桃花仙トウカセンと繋がっておる。妾たちが亜人を得る為にのう」

 自分で飼料を作り、食べて、交尾して、勝手に増えていく家畜であり実験動物。それが桃花仙に住む者から見た亜人という存在。

 ギーと、ニルリティ含めトウゲンたちは定期的に桃花仙へのを開いて運搬し、工場で食糧に加工、各家庭に届くようにスーパーなどで流通させているらしい。

 更に、桃花仙には魔物が増えたら儀来ニーラに排出する仕組みが確立されているという。儀来で魔素溜まりが生じ、魔物の氾濫が起こる原因はそこにあった。

 つまるところ、俺たちの世界、二大仙ニタイセンに住む者がこの儀来に転移する素因は、桃花仙が世界を繋ぐ術を開発し、魔物の排出の為に使用しているからだったということだ。

 事情は分かるが、傍迷惑はためいわくにも程がある。生きる為とはいえ、一体どれだけの者を不幸にしているのか。

 気づけば眉根が寄っていた。そんな俺の反応を見て、ニルリティが寂しげに微笑む。

「不服じゃろうな。二大仙から渡った者からすると、そういう反応になっても不思議はない。じゃが妾たちとて必死じゃ。同胞を守る為にやっておるだけのこと。恨むなら、妾たちをこんな風に仕上げた神を恨むんじゃな。妾たちのように」

「ま、そういうこったね。桃花仙の人族は気の毒だよ、本当に」

 被害者面か。と思ったが、話された状況は相手の立場に立って考えれば確かに困ったものだった。

 桃花仙では、この四百年ほどの間、一部地域で魔物を排出できない事態が続いているらしい。

 年々魔物の数が増え続け、更には強化され、知恵までついた。どうにか討伐してはいるが、近年では深刻な問題になっているのだとか。

 理由はイノリノミヤ神教の神職が魔物の氾濫を防いでいるからに他ならない。

 桃花仙からの渡り人、トウゲンたちは何度もそれをめさせようと試みてきたが、成果は出ていないという。

「成果が出ない理由は……見た方が早いか。論より証拠だな」

 そう言って、ギーが【光球】を浮かべて手招きする。そのままクリス王国の国境付近まで三人で移動した。

「何をするんです?」

「ニルリティ、頼む」

「はぁ、やはりそうなるか。嫌じゃのう」

 ニルリティが左手を前に出した状態でゆっくりと国境へ向かい近づく。すると、ある時点でパンッという破裂音が鳴り血飛沫が舞った。

「ぐぅっ!」

 という呻きを上げ、ニルリティが素早く後退して振り返る。俺は目の前の光景に唖然とした。ニルリティの左手首から先がなくなっており、だらだらと血が流れ出ていた。

「うう、痛いのう。忌々しや、イノリノミヤめぇ」

「何が……起きたんですか?」

「さてね。それが分かりゃあ苦労しない。いや、それでも苦労はするか」

 ギーは肩を竦めてそう言うと、ニルリティの左手首を掴み、溢れ出る血をべろりと一舐めした。そして、薄闇に映える淡い光を放つ回復術を、先が欠損したニルリティの左手首に掛けながら言葉を続けた。

「トウゲンがクリス王国領に入るとさ、こうなっちゃうんだよ。酷いだろ? 話し合いも何もあったもんじゃない」

 攻撃しているのはおそらくイノリノミヤだろうというところまでは推測が立った。というより他に思い当たる存在がいないので断定されているらしい。

 だが、それが分かったところで、まるで対処できずに犠牲が増えるばかり。能力値が最高値に達していようが、関係なく殺されてしまう。

 その恐ろしさから、桃花仙ではイノリノミヤを邪神として扱っているという。
 
 
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