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明かされる真実編

4.知らされぬ脅威を知り愚か者と知る(4)

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 軍隊の陣形に乱れが生じ、騒然とする。いけるかと思ったが、逃げ出したのはごく僅か。おそらく千人いるかどうかといったところ。

 駄目か。これは先が長そうだ。

 そう心でひとちた直後、俺は目を疑った。

「何を――」

 逃げた兵に向かい一部の兵士が弩を構え、即座に矢を放った。逃亡兵がばたばたと倒れていく。眉をひそめずにはいられない光景が視界を埋める。

「なんだよそれ……」

 騎馬隊から十数騎の騎兵が駆け出して散開し、矢を受けて倒れた逃亡兵に槍を突き刺していく。躊躇ためらいなく死刑が執行される様を見て俺は身震いした。軍規の厳しさにおののく。まだ敵を甘く見ていたのだと気づかされる。

 かなり高く飛んでいるにも拘らず、怒号と悲鳴が届く。だがそれもすぐに消えた。処刑は速やかに済まされ、総指揮官と思しき者からの号令と太鼓の合図ですぐに「応! 応!」と鬨の声が上がり、二つの軍隊が一つに組み直される。

 そして、陣形を組んだまま北東の平原へと向かい移動し始めた。騎馬隊を先頭に、歩兵が駆け足でついていく。竜巻の進行方向だ。隊を分けて魔の森に逃げ込めばやり過ごせるのに、何故かそうしない。

 理由は何だ? ああ、そうか。魔物からの被害を考慮したのか。

 ちょっと空を通過しただけでハーピーの群れに襲われた。魔の森には魔物が多く棲息しているのかもしれない。そこに隊を分断して侵入する方が危険だと判断した結果、竜巻が逸れる方に賭けたといったところか。と予想したとき、号令が上がった。

「全軍停止ー! 反転せよー!」

「応! 応!」

「術師隊構えー! 土属性、防壁、合わせー!」

「火属性、火球、合わせー!」

 竜巻からある程度の距離を取ったところで、軍隊が停止し反転。最後尾を走っていた隊が一斉に杖を構えた。すると竜巻との間に巨大な防壁が現れ、その斜め上に千人は飲み込みそうな一つの超巨大な火球が現れる。

「おいおい、マジかよ……」

 予想が裏切られ、俺は頬がったようになる。あんなことまでできるのか。

 暗灰色の雲で覆われた竜巻が防壁に接近する。そこで俺は、竜巻の中に幾つも影があることに気づいた。目を凝らしてみると、それが大樽であることが分かった。

 なんであんなに樽が……?

 軍隊が通過した場所に目を移すと、点々と大樽が置かれていた。【異空収納】から取り出して置いていったとしか思えない。それが竜巻に飲まれていく。

 まさか、嘘だろ――⁉

「放てー!」

 火球が放たれ竜巻に衝突する。その途端、竜巻が爆発した。俺は気づいた瞬間に背後を見つつ距離を取ったが、凄まじい爆風に追いつかれて飲み込まれた。

 かなりの強風に煽られ、上下左右に回転する。が、どうにか軍隊の方を向いて姿勢を維持できた。両手を眼前で交差し目を細め、石や木片などの飛来物から身を守る。

 爆薬まであるのかよ……!

 風が止む。竜巻は消滅し、軍隊からは「応! 応! 応!」と鬨の声が上がっている。俺は早鐘のように打つ胸に手を当て歯噛みした。
 
 
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