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それぞれの成長 元戦乙女隊編
18.おじいちゃんさっき食べたでしょ(2)
しおりを挟むまったく、どうしようもない男だな、俺は。何様だよ。
思わず鼻で笑う。自嘲がくだらない自己分析から現実に引き戻してくれた。
「あ、昼食はもう準備できてるから、先に食べてて」
笑い続けている女子たちにそう声を掛けて、俺は一旦、訓練場に戻った。そこで空になったバットを【異空収納】に収め、サブロには水球で喉を潤してもらい【殺菌光】を掛けた後で勾玉に入ってもらった。
うーん、何度見ても凄いよなー。
サブロが光になって入っていく度に、本当に不思議な物だと思う。この中に部屋が入っているのか、それともどこかの空間へと繋がる転移装置のようなものなのか。
考えたところで分かりはしないが、指先で摘まんだ勾玉をつい繁々と眺めてしまう。装飾品の価値など分からないが、これは見た目にも綺麗だと思う。
ただ、色が一色というのはいただけない。ゆくゆくはパーティー全員が持つことになる訳だから、染色が可能かどうかも知っておきたい。同色だと、誤って入れ替わるなんて事態も起こり得る。例えば、風呂とかで。
丁度、サブロの従魔の証も新しいのを用意しないといけないことだし、そのときにでも訊こうと思う。
ま、証があろうがなかろうが、サブロを連れて街中を歩くのは無理なんだよな。
幅を取るので往来の邪魔になる。そして大いに目立つ。許可が必要だと叱られるサイズであることは間違いない。という訳で、従魔用の道具関連の解決は後回しで良い。
なんにせよ、今はとにかく昼食だ。
冒険者ギルドに戻ると、女子たちは俺の用意したテーブル席に着いていた。料理は昨日フィルとサクちゃんにも出した豚汁と塩むすびにした。
「あれ?」
先に食べていて構わないと言ったのに、誰も手を付けずに待っていた。俺が言いたいことが分かったのか、エリーゼが苦笑して答えた。
「そんな顔するほど意外だった? 私たちは、皆で食べたかったんだ」
「用意、してくれたのに、先に、食べれない」
「待ちくたびれたぜ。早く食前の挨拶してくれよ。皆待ってんだからよ」
「あら? おかしいですわね。旦那様より先に食べるのは駄目だって真っ先に止めたのは誰でしたかしら?」
う、うるせぇ! と顔を真っ赤にして言うイザベラ。それでまた皆が笑う。四人掛けのテーブル席なのに、わざわざ間を詰めて、俺用に椅子まで用意してくれていた。
旦那様って、何を言ってるんだか。でも、嬉しいよな。本当。
俺は苦笑しつつそこに腰かけて「いただきます」と言わせてもらう。皆の声が後に続いて、美味しそうに食べてくれている姿を見ていると、それだけでなんだか胸がいっぱいになって……ん? いや、これは胸じゃなくて腹だな。
なんでこんなに満腹中枢が働いてんだ?
あ、そうだ。俺、坑道入る前にホットドッグ食べてたわ。
道理で腹が減ってない訳である。孤食が嫌と言いながら、しっかりと軽食を一人で済ませていた。頭は老化したままなのかもしれないと真面目に思うひとときだった。
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