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それぞれの成長 元戦乙女隊編
7.凸凹フィットアドベンチャーと家電系術師(3)
しおりを挟むその直前、俺の見る世界はスローモーションになっていた。
お股に魔石⁉ それは駄目だ!
それだけは駄目だって!
そう心で叫んでいたが、何もできなかった。危機を回避したいという思いは暴走していたが、体はまったく動いてくれなかった。
願い虚しく、魔石は俺のデリケートゾーンに勢いよくフィットしてしまった。
二ヶ所の出っ張りが、俺の凸と凹にゴリゴリとその存在感を主張してきた。
声にならない息が漏れ、しばらく地べたに這いつくばって悶絶。いずれも小学生のとき以来の苦痛な上に同時被弾。しかも相手は石。そして俺自身の体重も増えている。当時より遥かに深刻なダメージを受けたことは間違いない。
か、回復術を……。このままじゃ、パンツが汚れちゃう……。
同室のフィルに「女子か!」とかツッコまれるのは嫌なので素早く回復。
下品過ぎる……。
痛みは引いたが、恥部を押さえて回復術を直接当てたことに対しての精神的なショックで中々起き上がれなかった。
誰もいなくて本当に良かったと思う。前と後ろを押さえて、真っ直ぐになって震える姿など誰にも見られたくはない。もし見られていたら、しばらく立ち直れなくなっていたところだ。
馬鹿だよな、俺って……。
ちょっと考えれば分かることなのに、喜びのあまりそれを怠る。反省してもまた何かしら違ったことで失敗を繰り返す。だが、俺は同じことで失敗はしない。この手痛い経験を活かし、術の発生位置を自分の体から離すことで問題を解決した。
術の発生位置に【異空収納】を開くことで指定した対象が放り込まれる訳だが、それだけではなかった。なんと、この術と共に移動すると、対象が追い掛けてくるという驚きの効果を発揮してくれたのである。
自分で作っておいて何だが、かなり優秀な術だと思う。
その【吸引】と効果通りの安直な命名をした術を、自分の足下に固定して発生させて【浮遊】で移動することで、大量に鉱物資源を収集しながら奥に向かうことができた。
ホクホク気分で進んでいるうちに、坑道とは明らかに雰囲気が違う歪な大穴が空いている場所に着いた。そこだけレールも続いていないし、崩落しないような支えや固定もされていない。純粋な洞窟だ。
行けば分かるとはよく言ったものだと思う。物凄く分かりやすい。日本のあらゆる物事に付いて回るやたらと長い利用規約なんかもこのくらい分かりやすいと助かるのだけれども、などと考えながら大穴の中を覗く。
探知を使っても何の反応もないので、そのまま中に入る。大穴に入る前と同じく途中で枝分かれしているが、取り敢えず最も広い道を進む。
間もなく下り坂が多くなっていき、地熱を感じるようになったので【冷涼薄霧】を掛けることにした。魔力量がそれなりにあるので、出し惜しみはしない。
あれ? 考えてみたら、俺の術ってほぼ家電系統⁉
不意にその事実に気づき愕然とする。自分がパーティー内でお母さんの位置にいるのだと察してしまい、狼狽えた結果、体の操作を誤り壁に衝突した。
痛い……。精神と肉体のダブルパンチじゃないの……。
両手両膝を地に着けて震える。ああ、涙が出そう。
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