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それぞれの成長 元戦乙女隊編
4.鬼教官の次は神の使徒(2)
しおりを挟むむ? 待てよ?
一人だけ捕まえるつもりだったが一網打尽に切り替える。速度を落とし、探知範囲ギリギリの位置を保って追跡。集合場所まで案内してもらうことにした。
しばらくすると悪ガキの速度が落ちた。スタミナ切れでへばったようだと覚る。俺は停止して身を隠し、撒かれたように装う。目視はしていないが、探知で気配は捉えているので問題はない。
悪ガキと付かず離れずの距離をとって進む。既に街外れ。この先は田畑ばかりで、隠れる場所はさらに先にある廃墟群と坑道くらいなもの。
こんな場所に来るということは、もう撒いたと思っていると見て良さそうだ。
集合場所はこの辺りなのだろうと推測。他の二人に見つかると面倒なので、周囲に誰もいないのを確認して手近な建物の屋上に【浮遊】で移動する。
うつ伏せになって様子を見ていると、悪ガキが畦道を駆け出した。やはり向かう先は街外れの廃墟群。これもまた予想通りだった。
そろそろいいかな。
【浮遊】と風術推進で洞窟の天井付近まで一気に上昇し、廃墟群へ移動。探知を使うと、二人が停止している場所があった。俺が追っていた悪ガキはそこに向かっている。
後は【過冷却水球】で氷結拘束し、衛兵隊に届ければ終了の簡単なお仕事。
ステボで時刻を確認するともう午前十一時。時間を無駄にしたなと思いつつ悪ガキの待ち合わせ場所に入ると、先に待っていた二人が「うわーっ⁉」と叫んで窓から逃げ出した。
反応がお早いことで。
悪ガキ三人が合流し、坑道の方に向かう。
ん? なんで坑道なんだ?
わざわざ袋小路に逃げ込むというのはおかしい。ルードから聞いた話だと探しても見当たらなかったということだが、内部の構造が分からないことには何とも言えない。抜け道があるのか、それとも隠れてやり過ごすつもりなのか。
ただ、街に逃げられるよりはマシな気がする。三人とも【疾駆】が使えてはいるが、戦う力は乏しそうだ。魔物がいる坑道に長くはいられないだろう。
ふと思いつく。これは、距離が開いていても従魔スキルが借りれるか試す良い機会ではないか、と。もし可能なのであれば、懲らしめるのにもいいかもしれない。ルードとサブロの復讐も兼ねれるな。
悪ガキ共の背後に【ダークフレイム】を使ってみる。すると問題なく紫の炎が放射された。禍々しい炎が立ち、悪ガキ共はヒィッと短い悲鳴を上げる。
よし、使えた!
思わず小さくガッツポーズ。逃げ出す悪ガキ共の両脇を【ダークフレイム】で塞ぎ、俺は精一杯の悪い顔を作り高笑いした。
「ば、化け物ー⁉」
「否! 我は神の使者なり! 貴様らの悪行、神は許さぬと仰せだ! その行いを悔いながら、我が地獄の業火で焼かれるが良い!」
情けない悲鳴を上げて脱兎の如く逃げる悪ガキ共を飛んで追い掛けつつ、横路を【ダークフレイム】で塞ぐ。
「ごめんなさーい! 許してくださーい!」
「ならぬ! 貴様らの身は罪業に塗れている! それらが消え去るまでは許されることあたわず! 炎に焼かれ苦しみ続けるのだ!」
途中、何人かの鉱夫らしき煤汚れのような黒ずみに塗れたドワーフたちとすれ違う。唖然とされたが「すいません、すぐ消しますんで」と苦笑しつつヘコヘコと頭を下げていく。我ながら腰の低い神の使徒だと思う。
泣き喚きながら坑道に駆け込んでいく悪ガキ共を見送ってから、地に降りてすべての炎を解除する。なんだかんだ楽しんでしまった。魔王の気分だ。
悪ガキどもには坑道探索をやってもらおう。前回は途中で逃げ出したんだからしっかりと続きをしないとね。今回はルードみたいな優しい引率者はいないけれどね。
あとは魔物に怯えて出てきたところを【過冷却水球】で捕縛すれば終了、と。
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