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それぞれの成長 パーティー編
31.確認したいこと試してみたいこと(4)
しおりを挟む「と、飛んでる⁉ ユーゴ、飛んでるよ⁉」
「そうだな。言ってなかったけど、俺、飛べるんだよ」
円錐型の【障壁】を風除けにして加速する。徒歩なら下山で半日はとられるが、飛べば一瞬。下山後二日は掛かるカナン大平原東部も一時間あれば着く。
「エリーゼ、怖がってないで見てみなよ。俺もあんまり高いところは得意じゃないけどさ、普通は見れない景色だよ」
「飛んでるのよ、ね? 全然、風も感じないけど」
「【障壁】で覆ってるからね。怖くないなら下りてもいいよ」
「や、やだ。できない」
普段は言葉遣いが堅めだが、時折それが崩れて乙女に変化するのがエリーゼの可愛らしいところ。だけど首に回した腕の力はあんまり可愛くないんだ。
「エリーゼ、もう少し腕の力を緩めてもらっていいかね?」
「あ、ごめんなさい!」
「ハハハ、離せとは言ってない。慌てなくていいよ。不安にならない程度に掴まって。一緒に景色を楽しもう。ほら、絶景だろ?」
太陽、雲、カナン大平原の淡い緑が一望できる。左側には森と海。ドゴンたちの暮らすワブ族の集落と、中央にそびえる黒い石柱、ユオ族の集落。
俺は少し高度を上げる。アルネスの街の防壁が小さく見えた。
「凄い、雲がこんなに近い」
「雲より前を見て。アルネスの街まで見えるよ」
「本当だ。凄い」
エリーゼが軽く息を吐いて続ける。
「不思議だな。下にいると遠いのに、ここから見ていると、近く感じる」
「実際、飛べばそんなに遠くないんだよな」
方向転換して北上。人気のないところで下降し、ゆっくりと地に降り立つ。
「何もないけど、ここで何をするんだ?」
「それがね、ここかダンジョンの大部屋じゃないとできないことがあるんだよ」
お姫様抱っこ中のエリーゼを下ろし、俺はサブロを呼ぶ。胸にある勾玉から光が放たれ、全長三メートルほどある黒い竜が目の前に現れる。
その姿を見た途端、エリーゼはヒィッと短い悲鳴を上げて俺の背に隠れた。
「グァウ……」
「あー、やっぱり大きくなっちゃってたかー」
エリーゼに怖がられたことにショックを受けたのか、サブロが項垂れた。俺は苦笑しながら歩み寄って頭を撫でる。
すると、慰めて、と言いたげに顔を寄せてきた。角と翼は立派に成長し、顔立ちも精悍になっている。でも中身は子供で甘えん坊。よしよし、気にしなくていいぞ。
「サ、サブロなの?」
エリーゼの問い掛けに、サブロが「グァウ」と鳴いて頷く。エリーゼは恐る恐る手を伸ばし、サブロの顔に触れる。
「ゴツゴツしてる。手触りも顔つきも全然違う。でも、サブロなのよね」
「そうなんだよ。昨日までは小さかったんだけどね。ダンジョンの階層主を四十回くらい討伐したら魂格が三十八まで上がっちゃってさ」
「三十八⁉ 私よりずっと……いえ、ちょっと待って、おかしいのはその前よ。ユーゴ、階層主を四十回討伐とか言わなかった?」
「言った。四十階層のマーダードールベアの討伐。と言ってもアトラクションルートを延々周ってただけだから、厳密に言うと討伐ではないんだけどね」
エリーゼがその場にへたり込む。
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