上 下
315 / 409
それぞれの成長 パーティー編

21.初めてのダンジョン周回は効率重視でした(2)

しおりを挟む
 
 
 三人で宝箱に手を添え、せーの、の掛け声で開ける。すると目の前にステボのようなパネルが表示された。そこには黒くつやめく勾玉の映像と『従魔の勾玉』との表示。説明文も出ているが、フィルから聞いた内容そのままだった。

「じゅ、従魔の勾玉⁉ でたー⁉」

 俺とフィルが同時に叫ぶ。手を取り合っての大興奮。

「も、もう一回、同じこと言うけど、一発目から出たね⁉ 凄いよね⁉」

「す、凄まじい強運が発揮されたとしか言えないよ⁉ これ凄いよ本当に⁉」

「そんなこと言って、意外とポンポン出たりするんじゃないか? ほら、これが必要なのはユーゴとサブロだろ? 使ってみたらどうだ?」

 俺は一瞬で冷や水を浴びせられたような気分になった。フィルを見ると、すんっ、となっていた。今までの興奮はいずこへ飛び去ってしまったのだろうか。

「僕の昂揚感こうようかんに翼が生えてダンジョンの外に羽ばたいて行ったよ」

「そうか。じゃあダンジョンを出たら探してみよう。見つかるといいな」

 偶然にも思いがシンクロした模様。それには少し驚く。心を読まれたかと思った。

 なにはともあれ淡白なサクちゃんに促されたので、お言葉に甘えて従魔の勾玉を手に取る。するとまたパネルが開き、『所有者登録』と表示された。説明を読んだところ、登録した時点で所有者の従魔以外が利用することはできなくなるとのこと。

「何してんの? ステボの確認?」

「いや、所有者登録ってのが出たから、それを済ませてた」

「そういうのまであるのか」

 登録後、サブロに勾玉を見せてみる。入れるか訊ねると「ピギッ!」と頷いて光に変化し勾玉に吸い込まれていった。呼び掛けると光が放射されてサブロが現れる。

「うわ、なにこれ超便利⁉」

「凄いね⁉ 中はどうなってるのかな⁉」

 フィルに言われて気づいた。もし快適な空間でないのならば、あまり入れたくない。それでサブロに訊いてみたのだが、嬉しそうな身振り手振りの説明で、広さが十分にあり、気温も問題なく快適らしいと分かった。

「ふむー、こりゃアクセサリーに加工してもらわなきゃいかんなぁ」

 独り言のつもりだったがフィルに聞こえていたようで「それなら革紐があるから使いなよ」と【異空収納】から取り出した頑丈な焦げ茶色の革紐を手渡された。

「なんか立派な感じだけど、無料ただでもらっちゃって良いの?」

「良いよ。いつも美味しいご飯食べさせてもらってるからね」

 フィルに礼を言って、勾玉を革紐で結びネックレスにする。そこでふと勾玉を服の中に仕舞った状態でもサブロの出入りが可能なのかが気になった。

 試してみたところ、特に問題なく行えるようだったので、服や装備品が破ける事故の心配もなさそうだと安堵した次第。そういうのはエドワードさんに任せたい。

 その後、三人で話し合い、一度マーダードールベアと通常の戦闘を行うことにした。俺は手を出さずに見学。サクちゃんとフィルの二人で倒せるかを試した。

 おそらく無理だろうと高をくくって参加する気でいたが、フィルの【風壁】とサクちゃんの半月斧の攻撃で短時間で危なげなく倒せてしまった。俺は唖然としただけでなく、思い切り引いた。
 
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

異世界八険伝

AW
ファンタジー
これは単なる異世界転移小説ではない!感涙を求める人へ贈るファンタジーだ! 突然、異世界召喚された僕は、12歳銀髪碧眼の美少女勇者に。13歳のお姫様、14歳の美少女メイド、11歳のエルフっ娘……可愛い仲間たち【挿絵あり】と一緒に世界を救う旅に出る!笑いあり、感動ありの王道冒険物語をどうぞお楽しみあれ!

異世界はモフモフチートでモフモフパラダイス!

マイきぃ
ファンタジー
池波柔人は中学2年生。14歳の誕生日を迎える直前に交通事故に遭遇し、モフモフだらけの異世界へと転生してしまった。柔人は転生先で【モフった相手の能力を手に入れることのできる】特殊能力を手に入れた。柔人は、この能力を使ってモフモフハーレムを作ることができるのだろうか! ※主人公が突然モヒカンにされたり(一時的)、毛を刈られる表現があります。苦手な方はご注意ください。 モフモフな時に更新します。(更新不定期) ※この作品はフィクションです。実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 カバーイラストのキャラクターは 萌えキャラアバター作成サービス「きゃらふと」で作成しています。  きゃらふとhttp://charaft.com/ 背景 つくx2工房 多重投稿有

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...