上 下
303 / 409
それぞれの成長 パーティー編

9.大きくなっちゃった(2)

しおりを挟む
 
 
「ん? 待てよ?」

「ねぇ、さっきから何してんのさ? 僕は洗濯物じゃないんだけど」

「いや、ちょっと実験中なんだよ。サブロ、俺に【ダウン】を掛けてくれ」

 サブロは困ったような顔で小首を捻る。俺に攻撃したくないようだと覚る。

「実験だから大丈夫だ。かけてくれ」

 渋々といった様子で、サブロが俺に【ダウン】を使った。能力値が二割落ちた状態から更に二割低下していた。

 どうやらサブロと一緒なら重ね掛けができるようだ。これはとんでもない力を得たなと思ったが、すぐにまた二割に戻る。

「あ、そうか、効果時間」

 確認してみたところ、十五秒ほどだった。魔力消費量も一回につき五十と結構多め。三属性融合だからかやたらと消費量の多い【迅雷】と変わらない。

「で、終わったの?」

「うん、終わった。能力値減衰スキルの効果を試してたんだ。ところでフィルよ、ある数値の二割引き後の二割引きってどうなる?」

「えーっと、三十六パーセント引きくらいじゃない?」

 フィルが少し考えた様子を見せて答え、ハッとした顔をする。

「まさかそんなに減衰させられるってこと⁉」

「十五秒くらいだけどね。でも基本は二割だろうな」

 興奮して唾を飛ばし始めたフィルを下ろし、代わりにサブロを抱っこする。撫でるとつぶらな黒目を閉じて笑う。ちょっと重量感が出て迫力も増してしまったが、まだまだ可愛い。

 しかし、これはもう肩に乗せるのは難しいな。どうしようかね。

 従魔の証であるブレスレットは無事だった。左前足、というか今は左腕と表現した方がしっくりくるその手首に緩めて巻いてあった。

 おそらく成長を予期したサブロが自分で外し、成長後に付け直したのだと思う。俺でも巻き直すのが難しそうだと思っていたのに、上手く巻き直されていた。

 俺の視線に気づいたのか、サブロが誇らしげに胸を張り、従魔の証を見せてきた。

 ちゃんと巻けてるでしょ、褒めて褒めて、と言っているように感じたので「よーしよしよし」と全身を撫で回してやる。

 サブロはくすぐったいのかギャピギャピ鳴きながら転げ回る。可愛い。

「ユーゴ、思ったんだけどさ、こんなに大きくなっちゃったら、サブロはもう肩に乗せられないんじゃない?」

「うん、それは俺も考えてた。だけど隣を連れて歩くのも歩幅が違いすぎるからね。こっちに合わせて無理しちゃうだろうし、どうしようかなって」

 そんな会話をしていると、サブロがいそいそと俺の手から逃れて立ち上がり腕組みした。誇らしげに胸を張って、鼻息をふんすと吐き出す。
 
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

異世界八険伝

AW
ファンタジー
これは単なる異世界転移小説ではない!感涙を求める人へ贈るファンタジーだ! 突然、異世界召喚された僕は、12歳銀髪碧眼の美少女勇者に。13歳のお姫様、14歳の美少女メイド、11歳のエルフっ娘……可愛い仲間たち【挿絵あり】と一緒に世界を救う旅に出る!笑いあり、感動ありの王道冒険物語をどうぞお楽しみあれ!

異世界はモフモフチートでモフモフパラダイス!

マイきぃ
ファンタジー
池波柔人は中学2年生。14歳の誕生日を迎える直前に交通事故に遭遇し、モフモフだらけの異世界へと転生してしまった。柔人は転生先で【モフった相手の能力を手に入れることのできる】特殊能力を手に入れた。柔人は、この能力を使ってモフモフハーレムを作ることができるのだろうか! ※主人公が突然モヒカンにされたり(一時的)、毛を刈られる表現があります。苦手な方はご注意ください。 モフモフな時に更新します。(更新不定期) ※この作品はフィクションです。実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 カバーイラストのキャラクターは 萌えキャラアバター作成サービス「きゃらふと」で作成しています。  きゃらふとhttp://charaft.com/ 背景 つくx2工房 多重投稿有

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...