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もう一人の渡り人編
4.舐められ隊長と輩ムーブに戸惑う責任転嫁(1)
しおりを挟む舗装された道と街並みが望める畦道で、俺たち訳ありパーティーは異常に気づいて足を止めた。遠くで三十人ばかりの衛兵が道を阻んでいる。
「ヤス君の探知でも届かないほど離れてるね。遠すぎてしっかり確認できないな」
「ふふーん。ここは僕に任せてよ!」
フィルが胸を張って言い、氷の双眼鏡らしきものを作り上げる。
「なんすかそれ⁉」
「新水術【氷遠眼】だよ。ちょっと待ってね」
まずはフィルが覗いてピントの調節をしないといけないらしい。それが済むごとに順に手渡される。俺は最後でいいよ。冷たそうだから。
「おい、これ冷たくないぞ⁉」
「え、嘘、あ、本当だ⁉ なにこれ⁉」
「これは普通の術だから、名前の中にそういう術式が組んであるんだろうね。冷たいと持つのも覗くのも嫌だから、開発者がその辺に情熱燃やしたんじゃない?」
「冷めたコメントっすね。うわ、めっちゃ見える。いいなーこれ」
確かによく見えた。フィルに後でアイスをあげよう。
板金鎧の衛兵たちの中で、一人だけ赤い腕章をつけ、兜に赤い羽根がついている者がいる。おそらくあれが隊長なのだろう。その隊長に何やら話しているのはチエだ。隣には身を小さくしたモンテさんの姿もある。
「ドゴンの襲撃に引き続き、まさかここまでやるとは第二弾って感じっすけど」
「本当だよね。よっぽどルードの依頼を失敗させたいみたい。何でだろ? 私怨?」
「そこは考えるだけ無駄でしょうよ。それよりどうしようかねぇ。あれ、絶対に俺たちが何か悪いことした感じにされちゃってるよね」
「本当のことを言えば良いだけだろ」
「チエが嘘を吐いてるだけならユーゴとヤスヒトが誤解を解いて解決するんだろうけどさ、宿場町の件もあるからね。衛兵も賄賂で動いてるかもよ」
「そんな連中なら、ぶっ飛ばせば済む話だろ」
「本日のサクやん血気盛ん。けど俺も賛成っす。単純明快だし」
「いや、君たちさ、相手はこの街の正規兵だからね? 僕たちが暴れて大事になっちゃったら、それこそチエの思うつぼかもしれないよ?」
フィルの言う通りなんだよなー。難癖つけられてルードまで巻き込みかねないし。
俺は腕組みして考える。このまま進んで衛兵たちと話した場合、サクちゃんの言った通りのことしかできないだろう。とはいえ取り調べるからと連行された場合、ヤス君の出発が遅れる恐れがある。どちらも俺の望むところではない。
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