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もう一人の渡り人編

3.スキンヘッドドゴンべチーン(3)

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「まぁいいや。それで? 俺たちの襲撃はチエから言われたの?」

 ドゴンがきょとんとする。

「ええ、依頼でさぁ」

 ドゴンは【異空収納】を使えないらしく、受注書は他の男が持っていた。

 それを見せられた俺たちは絶句した。規定違反も何も、受諾されてもいない。ただ受注用紙に適当に文字が書いてあるだけの真っ赤な偽物だった。

「ドゴン、ちなみに今の冒険者階級は?」

「階級? 何ですかい、そりゃあ?」

 俺は冒険者カードを出してドゴンに見せる。

「こういうカードを見たことは?」

「いや、ありやせんね」

 一味全員にも確認したが、誰一人として持っていなかった。よくよく話を訊いてみると、身分証明に使っていたのは傭兵ギルドのカードとステボ。冒険者ギルドにはカードはないと登録時にチエから言われたという。

「ちなみに、これまで受けた依頼の内容と数は?」

「全員で受けたのはこれが初めてなんで、俺一人の話になりやすが、数は四件だったか。罪人を捕まえて届けたり、乱暴者をとっちめたりって感じでさぁ」

 報酬についても訊いたが、金貨二十枚から。皆が皆そんな感じだった。話を聞き終えると、ヤス君が痛そうな場面を目にしたときのような表情をする。

「これ、最低な行為だと思うんすけど。この人たちどうなるんすか?」

「数件の重犯罪行為だからね。極刑は免れないと思う」

 フィルの言葉に、ドゴンたちがざわつく。

「どういうことですかい?」

「冒険者ギルドでは罪人捕縛の依頼は滅多に出ない。衛兵がいるからな。出た場合も、捕縛した者を連れて一度冒険者ギルドで預かり、そこから衛兵に引き渡す仕組みになってる。それに報酬が金貨二十枚というのはあり得ん」

「ドゴンたちは捕まえた罪人を直接誰かに引き渡した訳だろ? もしそれが罪人じゃなかったとしたら? 受け渡す相手が奴隷商や人買いだったら?」

「そんな⁉ じゃあ、俺たちゃあ、チエに騙されてたってことですかい⁉」

「言われたことだけやってきたツケが回ってるねこれは」

 フィルがドゴンに憐れなものを見るような目を向けて言う。だがそれだけではないような気がして訊ねてみたところ、認識の違いがあると分かった。

 ラグナス帝国で似たような仕事を受けていたので、何ら疑いを抱かなかったという。

「それも騙されてそうっすけどね」

「無頓着なんだろうな。今のこいつらの顔を見てると分かる。本気で青褪めてるからな。真っ当な仕事をして金をもらっていると思っていたんだろう」

「倫理とか道徳とかは備えてるんだろうけど、その質と判断能力はお粗末だね」

「まぁ、チエが犯人なのは明らかになったし、冒険者ギルドに行こうか。あ、多分だけど、ドゴンたちはもう罪をなすり付けられてると思うから、この辺りに隠れてた方がいいよ。後でまたこっちに来るから、下手に動かないでね」

 落胆するドゴンたちを置いて、俺たちは冒険者ギルドへと向かった。
 
 
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