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ウェズリーの街編
4.鉱山洞窟の街ウェズリー到着(4)
しおりを挟むさて、サクちゃんのお陰で聞けた話だが、まずはこの街の領主イワンコフ・リーズリー辺境伯について。
元ゴールド冒険者で熟練の鍛冶師。王家の血筋を持つが、血が薄れているので容姿に人間の要素はないとのこと。
そしてアルネスの街の領主エドワードさんとは旧知の仲で、互いに戦士として尊敬し合っているのだとか。
ただその後が反応に困ったよなぁ……。
イワンコフさんもウェズリーの領民も現在の王を認めておらず、エドワードさんを王に据えての王国再建を願っているのだという。
なんだか聞かない方が良かったような物騒なお話まで聞かされてしまったなと思う。
次は国境について。ウェズリー山の稜線の向こうが国境で、その先はラグナス帝国領になるとのこと。
すぐ側が帝国領ではあるが、帝国軍との諍いは皆無と言っていいほど起こらないらしい。
というのも国境の向こう側は魔の森と呼ばれる樹海が広がっている為、それが自然の要塞となって大軍を阻んでいるのだとか。
そういう訳で帝国軍よりワイバーンやハーピーなどの空を飛ぶ魔物やゴーレムが問題になることの方が多いらしいのだが、魔物繋がりでとんでもない情報を最後に聞いた。
なんとウェズリーにはダンジョンが存在したのである。
しかも街中に。
「冒険者ギルドの昇級条件ってどこのダンジョンでもいいんだっけ?」
「大丈夫なはずだよ。ただ属性が違うからその辺に注意かな」
「そういや、アルネスだと水と風の術を使ってくる魔物が多かったっすもんね。他も出ましたけど、火はほとんどいなかったっすわ」
「こっちは火と土の属性が多いってことか。まぁ、今日は場所の確認だけだな」
「長居するつもりはなかったんだけどねぇ。ここはフィルに我慢してもらうしかないなー。でもエノーラさんは大丈夫なのに不思議だよね」
「女性だと大丈夫なのかもね。なんていうか、纏う雰囲気が違うんだよ。さっきの人もそうだったけど声を掛けたとき面倒臭かったでしょ? 悪気はないんだろうけど、話してなくてもそれを感じるというか」
それは確かに不快だ。俺も相手にするのが面倒臭いと思っていたから気持ちがよく分かる。
もしかするとホウライもドワーフとは種族相性が良くないのかもしれない。
そう思ってヤス君に訊いてみたら、やはり余り合わない気がすると答えた。
「やっぱりあるんだね。種族相性」
「いや、俺はあんな受け答えする人は種族関係なく面倒臭いと思うだけっすよ。フィル君みたいな感覚はないっすから、そういうのを経験しない限りは種族相性は関係ないと思いますけどね」
「僕もそう思うかなー。この苦しみは人族の君たちには理解できないよ」
「月の物みたいに言うなよ」
サクちゃんの配慮のない言葉にちょっと心臓が縮んだが、フィルは気にしていないようだったのでホッとした。が、すぐにハッとした。
そういえば二人にはフィルが前世では肉体が女性だったと伝えていなかった気がする。
言葉の端々にはそれと分かるものを加えていたと思うが、ヤス君はともかくサクちゃんは気づいていないのかもしれない。
あとで確認してみよう……。
属性の取得を行い、必要な場所を巡るついでの観光を楽しんだ後の夕食時、フィルに確認をとった上で元女性であったことを二人に伝えたところ、案の定ヤス君は気づいていたが、サクちゃんは気づいておらず、顔を青褪めさせていた。
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