上 下
201 / 409
カナン大平原編

17.カナン大平原を越えよう(17)

しおりを挟む
 
 
「ど、どうしたんすか⁉ 急に涙ぐんで⁉」

 俺は照れ笑いしながら、鼻をすすって涙を拭う。

「あー、いや、話してなかったけどね、俺にはクルス・コーキって友達がいたんだよ。一文字違うけど、クリスとも読める漢字だったし、予言の中にも示すものがあったから、多分、本人だと思う」

「ってことは、ユーゴは初代国王の友達?」

「そういうことだね」

 えーっ! という声が揃う。

 質問が色々と飛んできたので、俺はコーキと自分の関係について話した。コーキの家族がどうなったのかも、すべて。

 不思議と胸に穴が空いたようだった。コーキがこちらで生きていたことを知って嬉しかったが、既にこの世を去っている。それが無性に寂しかった。

「結構、複雑っすね。せめて時代が俺たちと重なってたら」

「悲しいよね。ユーゴも会いたかったよね」

「うん。でもそれだとクリス王国は存在してないでしょ? 俺たちは死んでたんじゃないかな?」

「そうだな、リンドウさんがいないことに……。おい、五百年前なら、イノリノミヤと関係があるんじゃないか?」

 心臓が大きく脈打った。サクちゃんの言う通りだ。

 もしかしたら何らかの繋がりがあるかもしれない。

 俺は口を開きかけたが、俺より先にヤス君がアープに話し掛けていた。

「族長さん、イノリノミヤ神教とクリス王国についてなんすけど、何か口伝が残ってたりします?」

 アープは頼まれて嬉しかったのか、フフンと鼻を鳴らして胸を張った。

「イノリノミヤ様はー、初代様と共に戦った二人の聖女様の一人ですー。戦場では獅子奮迅の大活躍をしたと言われていますー」

「繋がった! ユーゴさん、これ、あり得ますよ!」

 ヤス君が興奮気味に言って俺の肩を掴んで揺する。

「ヤス君、分かったから落ち着いて。二人の聖女って聞いたでしょ? そこにもっとヒントがあるかもしれないから、喜ぶのはちゃんと聞いてからにしよう」

「ハハハ、そっすね! 族長さん、もう一人の聖女様について教えてください!」

「もう一人の聖女様はー、サーヤ・シンドゥー様ですー」

「サーヤ・シンドゥー様っすか。またオリエンタルな……」

 突然、ヤス君が動きを止めた。あれほど興奮していたのに、まるで凍りついたように硬直している。

「サーヤ様はー、クリス王国建国後にー、遥か東方のシッダーマリ皇国を滅ぼしー、シンドゥー王国の初代女王となられた女傑ですー。イノリノミヤ様と並んでー、クリス王国二大聖女と呼ばれていたそうですー。今は――」

 俺は説明を続けるアープを手で制し、ヤス君の肩を揺する。

「ヤス君、大丈夫? どうしたの?」

「どうされました? お加減でも悪くなられましたか?」

 デネブさんが心配そうに様子を見に来る。

「進藤沙綾。山で死んだ、俺の、友達です」

「え?」

 ヤス君の顔がくしゃっと歪む。笑い泣きしている。

「サアヤ・シンドウっす……! 生きてたんすよ……! こっちで……!」
 
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界を服従して征く俺の物語!!

ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。 高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。 様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。 なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

カラスに襲われているトカゲを助けたらドラゴンだった。

克全
ファンタジー
爬虫類は嫌いだったが、カラスに襲われているのを見かけたら助けずにはいられなかった。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

王女の夢見た世界への旅路

ライ
ファンタジー
侍女を助けるために幼い王女は、己が全てをかけて回復魔術を使用した。 無茶な魔術の使用による代償で魔力の成長が阻害されるが、代わりに前世の記憶を思い出す。 王族でありながら貴族の中でも少ない魔力しか持てず、王族の中で孤立した王女は、理想と夢をかなえるために行動を起こしていく。 これは、彼女が夢と理想を求めて自由に生きる旅路の物語。 ※小説家になろう様にも投稿しています。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話

天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。 その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。 ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。 10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。 *本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています *配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします *主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。 *主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません

処理中です...