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カナン大平原編

4.カナン大平原を越えよう(4)

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 さて、その呪いについての情報だが、数年程度では自然に魔物化はしないらしい。魔素に対する抵抗力が上がり、ある程度のところで魔器の魔石化が遅滞するとのこと。

 知らぬ間にゆっくりと浸食を進める病のような呪いだが、その本質は『ある程度魔器の侵食が進んでいる者を任意で魔物化させる』というところにある。

 外部から刺激を与えて呪いを暴走させることで、魔器の魔石化を加速させる。トリガー一つで人を魔物に変化させることができてしまうという訳だ。

 条件は対象との距離。それなりに近づかなければ呪いの暴走を行えないという話だが、そんなことは気休めにもならない愕然とさせられる事実が発覚。

 それは、呪いを掛けた冒険者が数百人に上るということ。しかも、あと一月ほどですべてが暴走対象になってしまうという。

 トリガーを発動できる者がどれだけいるかは分からないが、一人でも十分過ぎるほどまずい。街中を歩きながらそれを行うだけで簡単にアルネスの街が魔物で溢れかえることになる。

 しかもその対処に当たるはずの冒険者たちが魔物に転じてしまうのだから、とんでもなく始末が悪い。

 現場にいる者は、敵が増えて味方が減るのをの当たりにすることになる。当然、仲間が魔物に転じる者も出るだろう。混乱し、士気も落ちるのは目に見えている。

 かといって事前に呪いを受けた者たちを判別し隔離するというのも無理な話。問題山積みで条件が厳しすぎる。領主館で話し合ったときもこの件に関しては揉めに揉めた。

「費用はどうにかするが、街中に隔離施設を用意するのは認められん。余計な争いを生むことになる」

「いや、今も普通に宿とか賃貸物件で暮らしてるでしょ。外に施設を作るのもそんなに意味ねーと思いますけどね。それに、隔離するにしても理由はどうするんすか?」

「魔物化する上に解呪が不可能……とは言えねぇな。そんな情報が出回れば、自棄ヤケになった連中が何をするか分からねぇからな」

「情報統制は必要だろうね。もしかしたらもうそんな噂をラグナス帝国が流布るふしてるかもしれないし。そうでなくても繁華街でノッゾさんたちの魔物化は目撃されてる。身体増強の施術と結びつける人も遠からず出てくると思うよ」

「ねぇ、素朴な疑問なんだけどさ、隔離云々うんぬんの前に判別ってどうするの?」

「フィル君の言う通りなんですね。判別しようにも、私の魔道具だと服を脱いでもらわないと確認できませんからね。結局は自己申告に頼るほかありませんね。隔離方法の前に、判別方法から考えるべきですね」

 そうは言ったものの、誰一人として妙案を出すことができなかった。それで結局は自己申告に頼るしかないという話になったのだが、それではやはりすべてを網羅できないという結論に至る。

 申告者がどう扱われるかもまた問題として提起され、それはもう偉いことになった。
 
 
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