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海辺の開拓村編

4.スパイキークラブ物語(4)

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「ユーゴ、例の術で凍らせてくれ」

「あ、分かった!」

「規定違反だよね、この依頼。これって魔物だよ。サイズも害虫じゃないし」

「現物を持ち帰って受付で見せてやれば良い。ギルドが依頼を受諾して斡旋あっせんしたんだ。間違いがあれば、俺たちに補償金が出るだろ」

「おー、流石サクやん、頭いいっすね。それめっちゃ儲かるやつだ」

 捕獲方法が実践されて上手くいったこともあって、全員がサクちゃんに同意。村内でスパイキークラブの大捜索が始まった。

 ヤス君が見つけて、サクちゃんが押さえて、俺が【過冷却水球】を当てて凍結。

 死んだスパイキークラブをフィルが拾って【異空収納】に放り込むという作業をひたすら繰り返している。

「いいなぁ、その術。俺もそれ使いたいんすけど、氷点下を水の状態で維持って、何回試してもできないんすよね。凝固点無視しちゃってるじゃないすか」

「イメージは、ゆっくり超冷たく冷やす感じだよ」

「分かるんですけど、まるで感覚が掴めないんすよ。【水球】からだとまったく冷えないし、【水球】を出さずに念じるとバッキバキの【氷球】になっちゃうんすもん」

「やっぱり相当難しいんだな。触れたら凍るって便利だから、火じゃなくて水属性取ろうかと迷い始めてたんだが、普通は凍らないんだろ?」

「氷は作れても、何かを凍らせるってのはできないね。先に水を掛けてそれを凍らせるのも、水自体が流れちゃうから魔力を繋ぐのが相当難しいって聞いてる。ユーゴが異常なんだよ。狂ってるんだよ」

 呆れたように言うフィルを変な顔で睨んでやる。お返しに可愛く舌を出された。お互い歳のことは言うまい。今を生きよう。

「でもそれ、ユーゴだけじゃないみたいだぞ。この前、訓練場で知らない子供らに『変な術使う人たちだ』って指差されたからな。多分、俺たちも含まれてるぞ」

「いやー、ハハハ、俺は例外でしょ。大したことしてないっすもん」

「はぁ、ヤスヒトも十分変わってるよ。蟹を見つけるの一番早いじゃないか。毒も無いとか言うし。あと、サクヤの『武器作成』も速度と硬度がおかしいから」

「そういうフィルも絶対含まれてるよね。サイガさんも『あのカキ氷は誰にも真似できなかった』って言ってたし」

 フィルが心外だと言いたげな不満そうな顔をする。

「僕のは既存の術の精度を上げただけだから君たちとは違うよ。君たち、独自の術を使ってるって気づいてる? はっきり言って異常だよ?」

 俺はヤス君とサクちゃんの顔を見る。二人とも首を傾げたり竦めたりした。

「既存の術をほとんど知らないし、こういうのあったらいいなと思ってやってるだけっすからね。それをどうこう言われても分かんないっすよ」

「だーかーらー、それが普通はできないの。心詠唱だってちゃんとできる人少ないからね。僕も威力を留めたままの心詠唱は相当練習したんだから」

「あ、その心詠唱ってさ、口に出さないで心で詠唱するってことでしょ? 前々から思ってたんだけどさ、俺のは何か違う気がするんだよね」

「というと?」

「えーっとね、そうだ、サクちゃんは武器の術使うとき心で何て言ってる?」

「『棒』とか『槍』とかだな。今回は『刺又』。その時によって違うな」

「だよね。でもフィルが言うには、それって『武器製作』って術なんだよね?」

「そういやそうだな。確かに『武器製作』とは唱えたことがない。てことは、俺の術は全部が独立した新術ってことか? ヤスヒトはどうなんだ?」

「俺はもっと適当すね。さっきも『蟹は何処かな』って思ったら、位置がなんとなく分かった感じだし。『毒あるかな』とか、そんな感じっすね」

「な、何それ? 思っただけって……」
 
 
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