上 下
113 / 409
宿場町~裏社会編

30.初絡まれテンプレ展開とダンジョン特急探検隊(8)

しおりを挟む
 
 
 俺としてはもう衛兵にお任せしたかったのだが、三人の劇団化が止められない。サクちゃんが怖い刑事役、ヤス君が優しい刑事役、フィルが情報を挟む書記役。

 絶対楽しんでるだけだと思いつつ観劇していると、ヤス君が恩赦おんしゃをちらつかせたところで若者二人が急にベラベラ喋り始めた。

 その内容は、ドニーが俺たちを騙しているというものだった。ドニーは裏でドグマ組と繋がっていて、俺たちを消そうとしているらしい。

「な、何だって⁉」

 思わず全員が身を乗り出す事態になった。皆、役に集中しすぎておかしくなってそうなので俺が謎の取調官として途中参加する。

「えー、あのね、君、そういうのいいから、本当のこと言いなさい」

「ほ、本当だ」

「嘘はよくないですねー。この場でクイッとやるよ? ん?」

 一人の首に手をあてがうと、悲鳴を上げて嘘だと白状した。ドグマ組のハンとかいう若頭が雇い主だとか。訊くこと訊いたので、とっとと衛兵に突き出した。

 恩赦がどうのこうの喚いていたが、ヤス君は知らん顔した。まぁ、ちらつかせただけで確約はしてなかったけども。

 いやらしい手法だとは思う。でも考えてみれば、相手の方がもっといやらしい嘘をいた訳だから聞かなくていいのか。

「ドグマ組のハンね。誰か覚えておいてね」

「人任せは良くないっすよ。けど危なかったっす。疑心暗鬼になるとこっすよ」

「やり方が汚いんだよな。俺はしっかり覚えたぞ、ドグマ組と若頭のハン」

「僕もドキッとしちゃったよ。ユーゴがいなかったら完全に騙されてたね」

「君らは役に入り込み過ぎるからそうなっただけ。俺はずーっと蚊帳の外から観客として、文字通り客観的に見てたからね。嘘臭くてしょうがなかったよ」

 それから俺たちはまたダンジョンに潜り、昼飯前には十階層、午後一時から午後六時まで数回の休憩を挟みつつ進行し、一日で三十五階層まで踏破した。

 十層目でホブゴブリン、二十層目でラフトロル、三十層目でブラックオーガとボスらしき魔物が現れはしたが、ブラックオーガでようやくちょっと戦った感が出た感じだった。

 ちなみに五階層の蜘蛛はパンチ一発で頭が潰れ、返り血ならぬ返り体液を被り酷い目にあった。

 サクちゃんがそれを見て考えを変えたのは仕方がないことだと思う。捨て駒になった気分だが、俺でもそうする。誰だってそうする。

 中層に入ってからは睡眠攻撃を行うメアシープや麻痺攻撃を行うパララウルフなどという状態異常を扱う魔物が出現しだしたのだが、これも敵ではなかった。

 俺たち渡り人が持つ【無病息災】は、突発的な睡魔や麻痺などを病気と認定してもらえるらしい。

 ヤス君によると、細菌などの生物が関わったものは病気と判定される可能性があるとのことだった。

 つまりメアシープは眠りを誘発する細菌、パララウルフは麻痺を発生させる細菌を撒き散らしているということだ。

 試しにイビルバイパーという蛇の魔物を倒し、牙で皮膚を刺してみたらしっかり毒を受けた感じがした。

 ステボには状態異常表示がされない仕様な為、体感で判断する他ないが、患部が腫れて熱や痛みも伴ったので間違いないだろう。

 ヨナさんの解毒薬で回復したが、毒は細菌性のものではなく、物質なので病気とは判断されなかったということのようだ。検証数は少ないが今のところそういう認識でいる。

「転移装置も見つかったし、そろそろ上がりにしませんか? 途中で何回か休憩してるとはいえ、流石に疲れましたわ」

「異議なし。ところで受けた依頼って何だったっけ?」

「イビルバイパーの……あれ? おいダンジョン初日で終わったぞ」

「わ、ホントだ! すっかり忘れてたけど、もう十匹は倒して収納したよ!」

「ならもう帰るか。明日、ビンゴさんが手紙持ってくって言ってたし、そのまま俺たちも乗せてってもらおう」

 そう提案したが、四十層までは終わらせたいという意見がヤス君とフィルから上がったので、明日の早朝からそれをこなすことで話は決まった。

 今晩、何事もなければいいが。

 なんとなく嫌な予感がして、この日の晩は寝付きが悪かった。
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

異世界召喚された俺は余分な子でした

KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。 サブタイトル 〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...