上 下
103 / 409
宿場町~裏社会編

20.宿場町に到着したなら毒の沼地で遊びましょう(4)

しおりを挟む
 
 
 デモディアを倒したことで、能力値に変化が出ていないか確認すると、魂格が二に上がっていた。フィル以外は全員魂格上昇。フィルが上がらない理由は、一人だけ魂格が十を超えているから。現在は十二。

 幼年期のマイナス補正が解けるまで、里を出ることも魔物を狩るのも許されなかったらしいが、隠れて小型の魔物を狩って魂格を上げていたという。

「また無茶したね。死ぬ可能性あるでしょそれ」

「そうは言っても暇だったし。考えられる? 二十年も能力値が激減してるんだよ。人族は八歳とかで解除されるのにさ。外見もそうだけど、里の若いエルフは皆文句垂れまくってたよ。不公平だーって」

「多分っすけど、魔力量や術の威力も落ちるってことはないでしょ。暇潰しと命を天秤にかけるタイプには見えないっすよ、フィル君は」

「うっ、ヤスヒトって鋭いよね。確かに術の威力を確認してから行動したよ。ただやっぱり威力も魔力量も落ちてはいたから、デビラビって兎みたいな小さな魔物しかまともに狩れなかったよ。お陰でまったく危険はなかったけど。まぁ、僕が狩りをしたのは、何か手伝わないと里に居辛かったっていうのもあるんだけどね」

「気遣い癖はそれが原因か。もう里を出たんだ。忘れろ」

「それが染みついちゃってるんだよねぇ」

 フィルが肩を竦める。自分から苦労話を聞かせたので、取り敢えず頭を撫でておいた。よしよし、よくやった。褒めてるんだからにらむなよ。

 この世界の不思議な点なのだが、幼年期は物凄く戦いにくい仕様になっている。子供が争いに駆り出させられることをうれいた神が与えた慈悲というのが一般論だが、子供から抵抗する力を奪っているとも言える。

 つまり人攫ひとさらいや奴隷商人の格好の餌食ということ。神様詰め甘し。

 俺はフィルが説明してくれるまで、年齢補正というものがあることすら知らなかった。知らないといえばステボのパーティー機能もそうだ。

 これはヤス君も知っていたが、ステボでパーティー設定しておかないと魂格を上昇させる為に必要な褒賞値の共有ができないらしい。所謂いわゆる、経験値のことだが、この褒賞値というものについても俺は首を傾げている。

 褒賞値は魔物を殺さないと得られない。人や他の動物では駄目。そういう仕様になっている。これも戦争や動物の無闇な淘汰を防ぐ為に神が慈悲をどうのこうのというのが一般論だが、魔物は動物ではないのかと思う。

 聞いた話では、魔物は魔素を多く取り込んでしまう環境下に置かれた動物が変異したものなので、俺としてはどうにも腑に落ちていない。魔物になってからは魔物同士で繁殖するとはいえ、始まりが動物なのは変わらないのだから。

 これまで誰とも話したことがなかったので、歩きながら皆に訊いてみたところ、ヤス君が真っ先に口を開いた。

「それなんすけど、俺も考えてたんすよ。どうして経験値って表示じゃないんだろうって。それで行き着いたのが、神の褒賞でした」

 吹き溜まりなどから魔素を移動させるには、動物などの動く生き物に吸わせて運ばせるしかない。

 ただ、吸わせただけでは世界に還元されないので、魔素を溜め込んだ生き物を殺す必要がある。そんな内容の話をヤス君がしてくれた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

ハイブリッド・ニート ~二度目の高校生活は吸血鬼ハーフで~

於田縫紀
ファンタジー
36歳無職、元高校中退の引きこもりニートの俺は、ある日親父を名乗る男に強引に若返らされ、高校生として全寮制の学校へ入学する事になった。夜20時から始まり朝3時に終わる少し変わった学校。その正体は妖怪や人外の為の施設だった。俺は果たして2度目の高校生活を無事過ごすことが出来るのか。

異世界で生きていく。

モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。 素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。 魔法と調合スキルを使って成長していく。 小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。 旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。 3/8申し訳ありません。 章の編集をしました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...