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宿場町~裏社会編

12.ビンゴの祝福(1)

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 本日は曇天なり。

 連日晴天続きだったので、たまには太陽に隠れてもらうのも悪くはない。

 暑さも幾分か和らいでいるように感じられる。湿気はあるが、日本の夏に比べれば大したことはない。

 そんな朝のこと、俺たちはエノーラさんの武具店で購入した装備を身に着け、宿場町へ向かう準備を整えていた。

 俺は革鎧一式の西洋ファンタジー風。ヤス君はゴーグルとツナギの現代サバイバル風。

 サクちゃんは足首まで届く長羽織と前垂れが付いた作務衣のスペースオペラ風。

 レイさん特製の温度調節の呪符が縫いつけてあるとかで、見た目ほど暑くなく、季節問わずに使えるのもありがたい。

 もっとも、魔力は微量に使われるのだが、任意で止めることも可能なので問題はない。

 しかし、どれもこれも映画やアニメで見たことがありそうなコスプレめいた格好だ。

 俺とヤス君はありふれた感じなのでまだ許されそうだがサクちゃんは危ない。当人もなんだか気まずそうだ。武器も棒だし、光ったらアウトだと思う。

 そんなバラエティに富んだ三人組だが、全員の装備が黒色を基調にしたものなので妙に一体感がある。それがなんとも恥ずかしく感じた俺は、黒にした理由を二人に訊いてみた。答えがズレれば一体感の羞恥も薄らぐと思ったからだ。

 するとヤス君が「どうせならせーので言いませんか?」と持ち掛けてきた。

 面白そうだと思った俺は快諾し、サクちゃんも「別にいいぞ」と受け入れた。

 そしていざ理由発表を行った際、せーの、の掛け声の後に出たのは「汚れが目立たないから」というものだった。この瞬間、俺たちが貧乏性の集いだと発覚。

 奇遇だね、と喜びがあるような話なら良いがパーティーメンバーの大半の感覚が主婦という事実に俺だけでなく二人もそれぞれおののいた模様。

 加えて、一言一句、タイミングまで同じの丸かぶり回答になったことで、とんでもない一体感を味わい俺たちは赤面。

 顔を覆って恥じらいに目もくらむ思いをした訳だが、側で見ていたフィルが「合唱か!」とツッコんだときには全員が一瞬で立ち直り、笑顔で頷き合ってフィルを拍手喝采した。

 ただ、フィルに三連星という言葉を掛けられたときは「そういうのやめろよ」と真面目に注意してしまった。

 この世界に作品のファンがいたらどうするつもりなのか。怒られるならまだしも受け入れられた上で誰がどの枠か決められたりしたら仲違なかたがいいの一因になること必至だ。

 という訳で、この旅が終了し次第、俺はまたエノーラさんに染色をお願いしようと思っている。
 
 
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