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宿場町~裏社会編

4.逆転の発想と熟練冒険者との出会い(4)

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「浮けば撃てるんだろうけどな、浮かないから投げるしかない。取り敢えず、考えても分からんから、体を鍛えて投擲力とうてきりょくを上げてみた」

「浮かす、か」

 俺は足元にあった小石になんとなく魔力を繋いだ。そして手で拾い上げるようなイメージで持ち上げてみた。すると小石が目の前まで浮かんだ。

「ユーゴさん⁉」

「あれ⁉ 浮いたぞ⁉」

「待て、ちょっと待て、ユーゴそれどうやった⁉」

 説明すると、すんなりと二人も習得した。

 浮かすだけではなく、左右に動かしたり、投げたりも可能だった。

「なんか、撃つって感じじゃないっすね」

「そうだな。投げてる感じだな」

「浮かすというより、見えない手で受け取って持ち上げてる感覚だね。ちょっと攻撃に使えるか試してみるよ」

 握り拳をイメージして自分の太腿ふとももを軽く殴ってみる。

「うん、普通に感じる。ただ魔力消費量にはまったく見合ってないね。全然痛くないし。攻撃より支えたり投げたりの補助向きって感じ」

「思ったんすけど、念動力っすよねこれ」

「そうか、超能力か。術とか言われるより、そっちの方が釈然しゃくぜんとするな」

「あっという間に全員できちゃうってことは、やっぱり馴染み深さとかが影響するんだろうね。子供の頃、スプーン曲げとかテレビでやってたの真似したなー」

 二人とも何度も首肯してくれた。世代の違う二人から共感を得られたということは、超能力の真似事は男の子の通る道なのかもしれないと思う。

「俺なんて大学入ってもたまに手からビーム出す練習してましたからね」

「分かる。アニメの影響でな。今日辺り出るんじゃないかと思うことはあった」

 二人が談笑している間、俺は手のひらサイズの水球を生成し念動力で目の前に留めていた。水球に一切の動きを与えないように固定して、徐々に水温を下げていくイメージを加える。十秒くらい、眉間が痛くなるくらい思いっ切り集中。

 やがて、カチリと何かがまったような感覚があった。俺がやりたいと考えていることが術に反映されたのだと覚る。不思議だが、完成したという実感があった。

 溜め息を吐くと、二人がこちらに顔を向けて苦笑した。

「ユーゴさん念動力の練習はもういいでしょ。疲れが残りますよ」

「本当、真面目だよな。難しい顔してずっとやって。何もそう根を詰める必要もないだろ。十分過ぎるほど収穫はあったんだから、今日はもうお開きにしよう」

「うん、そのつもり。ただ、訓練の仕上げにこういうのも面白いかなと」

 俺は水球を念動力で弾いた。飛散した水が、見る間に凍りついていく。

「過冷却現象っていうのをイメージしてやってみた。【過冷却水球】です」

「凍って、えぇ……?」

 ヤス君が理解不能だと言いたげに眉根を寄せる。サクちゃんは氷の散った地面と、俺とヤス君を交互に見る。

「どうした? 何かおかしいのか?」

「おかしいっす。めちゃくちゃおかしい」

 サクちゃんが片眉を上げて首を捻る。だから何が? と言いたげな表情だったので、説明することにした。

「カキ氷屋やってるときにね、ローコスト化できないかと思って、氷を作るのと水を凍らせるのとだと、どっちが魔力効率が良いのかを試したことがあったんだ」

「まぁ、儲けは大きい方が良いからな。それで結果は?」

「いやそれがっすね、水を凍らせる方が魔力消費量多いし、時間もやたら掛かるしで話にもなんなかったんすよ。これめっちゃ魔力食ってるんじゃないすか?」

「多いけど、そこまでじゃないね。慣れてないのもあると思うんだけど」

 もう一度作ってみる。さっきより時間も魔力も掛からずに生成できた。

「やっぱり、術として完成したからか消費量が減ってるね。体感だけど、水球より少し多いかなってくらい」

「意味分からんっす……」

「ふふふ、逆転の発想だよ。水を凍らせるのが難しいなら、凍る水を作ればいい。これは鬱陶しいと思うよ」

「難しい顔してると思ったら、俺らが馬鹿話してる間に新術作ってたのかよ」

「思いつきでね。それで悪いんだけどさ、もう一回模擬戦やってもらえない?」

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