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アルネスの街編
13.ミチル烈伝と入寮前のアレ騒ぎに複雑な同居人(5)
しおりを挟むえ、女の人? いやそんな訳ないよな。
「フィル君、ミチルです。同居人が決まりました」
「はーい、どうぞー」
開かれた扉の先にいたのは十歳くらいの白いローブを着た中性的な美少年だった。男と分かるのは、女性と相部屋になる訳がないからだ。
そうでなければ少女と見間違えたかもしれない。思わず見入ってしまうぐらい顔立ちが整っている。
「フィル君、こちら今日登録したばかりの人族のユーゴさん。ユーゴさん、こちらは亜人族のフィル君。登録は……一ヶ月ちょっと前に済ませたんでしたっけ?」
「はい、そうです。それからここに一人で住んでます。ユーゴさん、よろしくお願いします」
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」
フィルがお辞儀をしたので俺も返す。
まだ小さいのに、凄くしっかりしていて驚いた。
「じゃあ、私は行きますんで。困ったことがあったら、フィル君に訊いてください。それじゃあフィル君、後は任せますね」
「はーい」
ミチルさんに手を振って見送るフィル。可愛らしいが、俺は少し考えていた。一ヶ月サイネちゃんと一緒に生活した後に、今度は十歳くらいの少年との相部屋。
大丈夫なのかこれ?
やや深刻に悩みだしたところで、扉を閉めたフィルに指でベッドを示された。
「ユーゴさんは、そっちのベッドを使ってください。僕はずっとこっちなんで」
「あ、うん、分かったよ。いやー、それにしても、フィル君は凄いね。まだ小さいのに、ちゃんとしてるし、物怖じしないというか。俺みたいな大きいのが入ってきたら、ちょっと緊張したりとかしない?」
フィルがベッドに腰を下ろして苦笑する。そして、俺にも座るように手で示した。俺はそれに応じて、自分に宛てがわれたベッドに腰を下ろす。
「ユーゴさんは、人族の何歳?」
「俺は、十九歳だね。今年で二十歳」
「あ、じゃあ僕と同い年だね」
「へ? 同い年?」
俺は間の抜けた声を出した。子供なら笑ってもおかしくないような情けなく裏返った声だったのだが、フィルはどう説明したものかといったような困った微笑みを浮かべただけだった。
「んー、ミチルさんが言ってたでしょ? 僕は亜人族でね、人族より成長が遅いんだ。だから、生まれてからの年数は二十年なんだけど、見た目は十歳」
フィルが空中を操作してステボを出した。そして、立ち上がり、俺に見せに来る。能力値は非表示にされていたが、非表示にできない名前と種族は手で隠し、年齢だけを俺に見せた。そこには確かに二十歳と表示されていた。
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