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アルネスの街編
12.ミチル烈伝と入寮前のアレ騒ぎに複雑な同居人(4)
しおりを挟む俺たちはミチルさんに引き連れられて寮の二階に上がった。一階に入った時点から思っていたことだが、造りはホテルだ。真ん中に通路が走っていて両側の壁に扉。廊下は板張りで、二部屋間隔でランプが備え付けてある。
訓練場とも隣接しているので、入居する部屋次第では窓から訓練の様子が見れるかもしれない。
「皆さんの部屋はこちらと、こちらです」
案内されたのは出入口から最も遠い突き当たりの部屋だった。
これは移動が大変だ……。
歩いているうちになんとなく気づいてはいたが、やはりといった感じ。押さえの指示で空室にしておかねばならないとしたら、利便性の低い場所が回されるのが当然。
それも、いつ入居するか分からないという話ならまだしも、入居しない可能性もあるのだから尚の事そういった対処がなされるだろう。
俺たちが冒険者になる時期をリンドウさんに相談していたなら、こうはなっていなかったのかもしれないが……。
それはそうとして――。
「二部屋?」
「はい。一部屋につき二人に住んでもらっていますから、皆さんは三人なので二部屋です。うち、一部屋は既に一人入居していますので、皆さんの中から一人、先輩冒険者と暮らしてもらうことになります」
そうか。そういうこともあるのか。
俺はヤス君、サクちゃんと視線を交わす。二人とも、言葉には出さずとも俺が何をしようとしているのかを理解しているようだった。しかも、腰を落として利き手をやや引き気味にした構えまで。既に準備は整っているようだ。
「恨みっこなしで」
「もちろんっす。グーパーっすか?」
「いや、普通で。最初はグーでいこう」
全員が頷く。最初はグー。ジャンケンポン。全員バラけてあいこ。大人三人が深く息を吐き出し、手首をぷらぷら動かしたり、ストレッチしたり首を回したりしながら場を離れ、一度仕切り直す。リラックスタイムを終え、再度集合。
次の勝負、気合を入れてグーを出したら一人負けした。
俺は膝から崩れ落ち、両手両膝を地面に着けた。
「何でだっ!」
「よっしゃあ、サクやんよろしくっす」
「おう、こちらこそ。ユーゴ、頑張れよ」
二人がハイタッチして部屋の扉を開け、中に入っていく。俺は立ち上がり、膝と手についた埃を払って姿勢を正す。
「ミチルさん、同居人の紹介お願いします」
「あ、はーい」
それまで黙って傍観してくれていたミチルさんに頭を下げ、同居人との顔合わせの覚悟を決める。怖そうな人だったら嫌だなと思っていたが、ミチルさんがノックした後に返ってきたのは涼やかな高めの声。
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