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異世界居候編

33.サイコパス扱いされた男に反論の余地なし(1)

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 朱鳥居の前まで来てから振り返り、見送りに来た面々に三人で深く頭を下げる。

 泣き声を上げるウイナちゃんとサイネちゃん、ぐっと堪えて立つサツキ君、そして双子にしがみつかれて困り顔のスズランさんに手を振って俺たちは階段を下りた。

 先に階段を下りていたスミレさんのところへ急ぎながら、俺とサクちゃんは照れ笑いしつつ指で目元を拭う。

「あー、駄目だわ」

「ハハッ、俺もだ」

「二人とも大袈裟っすねぇ」

「ヤス君、君に人の心はあるのか?」

 ヤス君が盛大に噴き出して笑う。

「アハハハハ、なんすかそれ、いくらなんでも失礼っすよ。そりゃ俺だって寂しいっすよ。けど、転移術あるからいつでも会えるだろうって思ったんで」

「それはそうだが、俺たちが使える訳じゃないだろ」

「サクやん、リンドウさんのこと分かってないっすね。あの人なんだかんだ面倒見いいっすから、ちょくちょく様子見に来ると思いますよ。子どもたち連れて」

 俺とサクちゃんは顔を見合わせる。ヤス君が言うと妙に説得力がある。未来予知でもしてるんじゃないかと思うくらいに。だが俺は納得いかない。

「そうかもしれないけどさー。寂しいのはまた別でしょうよー」

「だな、別れの寂しさはキツいよな」

 サクちゃんと二人でうんうん頷き合う。

「あ、スミレさん、ここからアルネスの街までどのくらいの距離っすか?」

「そうですね、五里ほどかと」

「二十キロか。やんわり走って二時間半ってとこっすね」

「走って向かうのですか? 私も街まで付き添うので、できれば辻馬車に乗っていきたいのですけれど」

「あー、いや、そうじゃなくてですね。この二人が俺をサイコパス扱いしたんで、通える距離かどうかを聞いておきたかっただけっす」

「ちょっとちょっと、サイコパス扱いはしてないでしょ」

「いやユーゴはそれっぽいこと言ってたけど、俺もか?」

「サクやんも否定しなかったから同罪っすよ」

 俺たちの言い合いを見て、スミレさんが眉を下げてくすくす笑いながら「サイコパスが何かは分かりませんが、やはり寂しくなりますね」と呟いた。

 それから俺たちはスミレさんの案内を受けて森を歩いた。

 辻馬車が来るのを知っていたので、待ち時間が出るくらいなら体力の消費を抑えようとゆっくり歩くことにしたのだが、鍛練で鍛えられたお陰か感覚が変わっていたらしく、四十分ほどで街道に出てしまった。

 魔物に遭遇することもなく無事に森を抜けたのは喜ばしいが、もう少し距離があるものだと勝手に思っていたので少々拍子抜けした。
 
 
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