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異世界居候編
16.狂喜乱舞する尻尾とお風呂で大騒ぎ(3)
しおりを挟む脱衣所の籠に浴衣のような着替えを置いて、礼儀正しく一礼した後にスミレが出ていく。それと入れ替わるようにウイナとサイネがちょこちょこやってきた。
「どうしたの?」
「一緒に入るのじゃ」
「そうなのです」
俺とマツバラさんでアワアワしながら丁重にお断りした。
「なんかめっちゃ懐かれてますね」
「そうだね。何でだろ?」
「謎ですね」
そんな会話をしながら服を脱ぎ洗い場へ。
俺は左胸、カタセ君は腰に水飛沫のような痣ができており、マツバラさんは背中の右肩付近に砕けた鉱石のような痣ができていた。どちらも変な痣じゃなくて良かったとホッとする。
「どんな形ですか?」
俺とカタセ君は同じ痣なので確認できたが、マツバラさんは口頭で説明するしかなく、デザインが気になるようだった。俺たち同様、ちょっと小洒落たタトゥーのようだと伝えておく。
「あれ? シャワーが……あ、そうか。そういうことっすね。うわぁ、これ面倒臭いやつじゃないっすか? 鏡も見当たらないし」
「浴槽からお湯を汲み取って頭と体を洗わなきゃいけない感じだね。桶と石鹸はあるけど、浴槽のお湯が減り過ぎるのも困るし、ちょっと大変かもね」
「あ、もしかしてあの子たちが術でなんとかしてくれるつもりだったんですかね? リンドウさんに手伝ってやれって言われたとか言ってたような……」
マツバラさんが言いつつ固まる。俺とカタセ君も。それは十分にあり得る話だった。
「あー、しまったなー。そうかー、そんなとこまで頭回らなかったっすわー」
「俺も犯罪だって発想しかなかったよ」
「俺もです。あ、でも、カガミさんとカタセさんは水属性ですよね?」
「あっ! そうか! マツバラさんナイス! カタセ君、俺たちでやってみよう!」
「おおっ、そうっすね! 分かりました!」
裸の付き合いというのは不思議なものだと思う。おかしなテンションになっていた。
二人で頷き合い、片手を前に出してお湯が出ないかを念じてみる。すると体の中心から何かが手に向かう感覚があった。それを感じてすぐに、手の平からちょろちょろと温い水が出始める。
「ああっ、出た! 出ましたよ、カガミさん!」
「うん! 俺も出た! 出たけど、なんか気持ち悪いねこれ! ハハハハ」
全員でどっと爆笑する。病的に手汗が酷いようにしか見えない。
カタセ君がゲラゲラ笑いながら床に両膝を着いて桶の裏をバシバシ叩く。妙なテンションここに極まる。
術が使えたという喜びがなければ不安に負けていたと思う。
これ、止まらなかったらどうしよう。
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