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異世界居候編

14.狂喜乱舞する尻尾とお風呂で大騒ぎ(1)

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「な、なんじゃあこりゃあ……」

 夕食の時間、食卓に並べられた料理を見たリンドウが開口一番かいこういちばんに発したのはそんな言葉だった。

 目をいて、立ち上ってくる匂いを深呼吸するようにぎ、ゴクリと喉を鳴らす。

 渡り人の二人を含め他の皆も似たような様子。

 変わらないのはスズランだけかと思ったが、凛とした表情をよく見ると、口の端から細くよだれが垂れていた。見ていてなんだか気の毒になった。とても我慢強い人なのだと思う。

 昼間と席の並びは同じだが、変わったことが一つある。

 距離感。

 サイネが凄く近づいていて、もう寄り添っているような状態。顔を見ると、にへらっと笑う。

「美味しそうなのです」との言葉も頂けた。とても可愛い。

 食卓に並んでいるのは、大根おろしを添えた出汁巻き卵と青菜のお浸し、甘辛あんかけ揚げ出し豆腐、出汁を使った豆腐とねぎの味噌汁、昼間の浅漬を軽く塩抜きして味を整えたものと、ワイルドスタンプの生姜焼き。

 トリミング後の肉を薄くスライスし、酒で洗い、大量のショウガ汁と、砂糖、醤油、酒の合わせ調味料に玉ねぎのスライスと一緒に漬け込んで焼いた。

 皿の上にキャベツの千切りを載せ、それを枕に肉を五枚。その上に炒め煮にしたとろしゃき玉ねぎと、軽く煮詰めた甘じょっぱいタレを掛けて、最後に千切りにしたショウガを少々。彩りにトマトを添えてある。

 調理中に試食したが、まぁ、食べれなくはないか、という感じ。普通、と言われるくらいにはなったと思う。臭みはやはり気になるが、昼間の角煮よりは断然食べやすいだろう。

「それでは皆さん手を合わせてください!」

 え、なに?

 リンドウが突然そんなことを言ったので戸惑う。これは昼食時にはなかったくだりだ。毎回変わるとしたら慣れるのに時間が掛かりそうだ。

「合掌! いただきます!」

 そこからのリンドウは早かった。箸を持ち、出汁巻き卵を掴み、口へと放り込む。それから僅かに硬直した後で、白米を掻き込む。次はおかず、その次が飯というローテーション。

 とにかく勢いが凄い。そして、そんな状態になっているのはリンドウだけではなかった。

「うまっ、美味いぞっ、うまっ!」

「お、美味しいのです!」

「うおお、美味しいのじゃあ!」

「美味いっす! カガミさん、これマジ美味いっす!」

「いや本当に美味しいです。凄いな」

 スズランとマモリ見習いの二人以外から絶賛される。マモリ見習いの二人は、調理中に試食してもらったときの感動した様子を見ているので気にならないが、スズランはどうなのか。

 確認すると、一番せわしなく箸が動いていた。

 顔はリスが頬袋に餌を溜め込んだような状態になっており、どうやら美味いと言う時間も勿体ないと思うほど気に入ってくれた様子。

 そして尻尾が暴れている。他の面子の尻尾にもそれなりの動きはあるが、比較にならない暴れっぷりに驚き、俺はしばらく凝視ぎょうししてしまった。

 それはさておき、カタセ君とマツバラさんも満足してくれたようで何よりだ。

 舌のないサツキも、まったく味を感じないという訳ではないらしく、俺の作った料理は特に美味しいと思えるそうなので、提供した身としては感無量といったところである。

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