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異世界居候編

5.狐とステボと前科持ち(2)

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 俺が羞恥心で言い淀んでいると、カタセ君が小声でブツブツ言いながら空中で指先を動かし始めた。

 怖いな、おい!

 どう見てもストレスでおかしくなったようにしか見えない。不安になって色々と心配している間に、カタセ君が真面目な顔で呟いた。

「これでどうっすか、ね」

 直後、カタセ君の顔の前にA四サイズほどの薄く透明な板が現れた。

 それを見て俺は言葉を失う。

「見えます?」

「え、あ、ああ、うん。見えるね。何か、硬いフィルムか、薄いアクリル板っぽいものが、ハッキリ見えてる」

「ああ、良かった。ちょっと触ってみたら、タブレット端末みたいに操作できたんすよ。項目ごとにオンオフ切り替えられるみたいですね」

「そ、そうなんだ。凄いね、よく気づいたね、これに」

「いやー、状況的にあり得ないことが起こりまくってるんで、まさかなーと思いながら言ってみた感じですね。そしたらホントに出たんでビックリしました。カガミさんも早く出してみてくださいよ、ほら、ほら」

「あ、うん、分かった。ス、ステータスオープン」

 目の前にステータスボードが現れる。名前、年齢、性別、種族と続き、その下に能力値が載っている。その中で気になる点がいくつか。

「これ年齢が違うね。それと種族が人族ホウライってなってるけど何だろ?」

「表示されてる年齢は実年齢より上っすか?」

「いや、下。十九歳って」

「それなら見た目通りっすね。俺の表示は二十二歳で合ってますし、カガミさんも合ってると思いますよ。やっぱ若返ったんですって」

 若返った?

 俺は自分の顔や体に触れて確認する。目視でも確認するが、確かに肌の張りと潤いが違う気がする。今更だが首や腰も痛くないことに気づく。

「えー⁉ なんで若返ったんだろ⁉」

 カタセ君は「さぁ?」と一言。まるで興味がなさそうに流して言葉を続けた。

「で、えっと、ホウライですね。俺も同じこと書いてあるなぁ。んー、多分、種族の後ろにあるのは出身国名とかじゃないっすかね?」

「いや、それだと日本って書かれてるでしょ」

「そうじゃなくて、今俺たちのいる国の名前ってことですよ。最初に立った土地の出身になるとか。それか、こっちだと日本のことをホウライって呼ぶとか」

 なるほど。まぁ、日本が蓬莱ほうらいって説もあるし、あり得なくはないか。

 いやあり得ないだろう。何を納得しかかっているのか。

 俺は頭を抱える。なんなんだこの状況は。

「そうね。そうかもね。しかしカタセ君は順応性が高いんだね」

「え、そうですかね? まぁ、ゲーマーなんで、こういうのだけは順応早いかもしれないっすね。てかこれ、おかしいんですよね。ライフの数値がないんですよ」

「ライフって生命力のこと?」

「はい、所謂いわゆるHPです」

 確かにそういう表示はない。

 魂格こんかく、魔力量、腕力、脚力、体力、巧力、魅力。これですべて。

「魂格は、表示位置からしてレベルっぽいね。んー、ライフの値がないのもそうだけど、この巧力っていうのは何だろうね?」

「手先の器用さじゃないすかね。手先だけかは分からないですけど」

「どういうこと?」

「指先を巧に使えるってことは、それだけ脳を上手く使えてるってことだと思うんで、総合的に体を上手く使えるってこともあるかなーって」

 そういうことか。と俺は頷く。

「確かに、動体視力とか精密性に関する項目もないね。結構ざっくりしてる。巧力に含まれてるって考えても良さそうだね」

「多分ですよ。多分」

 俺はふと思いつく。

「ライフ表示だけどさ、なくて良かったんじゃないかな?」

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