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第三章
10 明日に備えて
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ワタルとエルが二人そろって地図部屋に戻ると、リーヤとキリヤが腕組みをして待っていた。
「何をしていたんだ、この大事な時に」と渋い顔をするリーヤに
「どうせ猫でも追いかけていたのだろう。いよいよ明日だというのに、呑気なことだ」とキリヤ。
そういえば、エルは念願のネコチャンにきちんと会うことができたのだろうか、とワタルは思った。塔の最下層で一瞬その姿(緑色に光る?)を垣間見て以降、猫の世話係を追いかけまわしていたわけだが。
「何をにやけているワタル。もう一度、明日の打ち合わせをするから、気を引き締めろ」とリーヤ。
「ゲンヤは来ないのか?」と少し慌てるワタルに、
「我々が何をするつもりか、報告はしてある。だが、長老としては、公平さを保ちたいそうだ。公平さ、ときたもんだ。あいつも、前の長老も、なぜあのようなことなかれ主義の態度をとるのか謎だ」とキリヤは憤懣やるかたなき様子。
「パウさんは?」
「ゲンヤと一緒にいた。最近特に長老にべったりだ。あれはあれで、不安になる」
と言ったリーヤに、ワタルは顔を曇らせ、問う。
「不安になるってどういうことだ? パウは長らく前長老の右腕だった。就任して間もない新たな長老の補佐役に回るのは当然ではないか」
「おい」と割って入ったのはキリヤだ。
「お前がゲンヤやパウを庇いたくなる気持ちはわかるが、権力の集中は、よからぬ結果を招くことがある。例え権力を手にした者が、どんなに高潔でも、あるいは、どんなに奇人変人で権力などに興味のない人間であっても」
とキリヤは言って、リーヤ、エル、ワタルを順番に見た。
「では、明日のおさらいをもう一度しようか」
「何をしていたんだ、この大事な時に」と渋い顔をするリーヤに
「どうせ猫でも追いかけていたのだろう。いよいよ明日だというのに、呑気なことだ」とキリヤ。
そういえば、エルは念願のネコチャンにきちんと会うことができたのだろうか、とワタルは思った。塔の最下層で一瞬その姿(緑色に光る?)を垣間見て以降、猫の世話係を追いかけまわしていたわけだが。
「何をにやけているワタル。もう一度、明日の打ち合わせをするから、気を引き締めろ」とリーヤ。
「ゲンヤは来ないのか?」と少し慌てるワタルに、
「我々が何をするつもりか、報告はしてある。だが、長老としては、公平さを保ちたいそうだ。公平さ、ときたもんだ。あいつも、前の長老も、なぜあのようなことなかれ主義の態度をとるのか謎だ」とキリヤは憤懣やるかたなき様子。
「パウさんは?」
「ゲンヤと一緒にいた。最近特に長老にべったりだ。あれはあれで、不安になる」
と言ったリーヤに、ワタルは顔を曇らせ、問う。
「不安になるってどういうことだ? パウは長らく前長老の右腕だった。就任して間もない新たな長老の補佐役に回るのは当然ではないか」
「おい」と割って入ったのはキリヤだ。
「お前がゲンヤやパウを庇いたくなる気持ちはわかるが、権力の集中は、よからぬ結果を招くことがある。例え権力を手にした者が、どんなに高潔でも、あるいは、どんなに奇人変人で権力などに興味のない人間であっても」
とキリヤは言って、リーヤ、エル、ワタルを順番に見た。
「では、明日のおさらいをもう一度しようか」
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