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プロローグ

駿のヒミツ

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「光一!日曜の合コン超かわいいK大女子来るんだってよ!」
「まじ!?」

 4限の講義の移動中合コン仲間の高橋とすれ違った。高橋はおれの肩を組むと耳打ちし、それを聞いておれが耳元で大声をあげたので高橋はしかめ顔で耳を抑えている。

「うっさ~、もちろん来るべ?」
「行く行く!……あっ」

 「どした?」と高橋は尋ねる。おれはうな垂れて今の己のおサイフ事情を明かす。

「わりぃ、金欠だからパス」
「うわ~まじ? ざんね~んお気の毒~」
「うぜぇ!」

 高橋は両手をパタパタ振り謎の舞を踊りながら去っていった。連絡先だけでも教えてもらえるよう後で頼んでおこう。
 
 あの日から3日が経ったが、おれは毎日例の動画でシコってしまっている。男同士のHで興奮するなんてまるでホモみたいだと思ってしまうが、エロいもんはしょうがない。そう、しょうがない。

 ハヤトという男のアカウントのフォロー欄を見ると別の男たちのアカウントがあり、そのどれもが1万フォロワー以上のその界隈では有名な人たちだった。そのうちの一人におれは興味を示した。
 
 『リョウタ』と名乗るその男はセックス初心者のアナル開発の動画をよく投稿していた。指や玩具で丁寧にほぐし、最終的にはちんこも挿れていた。動画に映る自称初心者の男は皆初めてとは思えないような乱れぶりで正直疑わしいが、リョウタさんは投稿文を見る限り丁寧で真面目そうな人っぽいし、チャレンジしてみてもいいかもしれない。

「と、いうわけで早速連絡しようと思います」
「なんで俺に毎回報告するの?」

 4限の講義は駿と同じだからいつも一緒に受けている。隣の席に座る駿におれのスマホの画面を見せる。

「この人にしようと思うんだけど」
「無視かよ」

 といいつつも駿はおれのスマホを眺め、「あ~」と納得したように頷く。

「いいんじゃね?」
「おっまじ?」
「危ないことしない人だしいいと思う」
「え、知り合い?」
「知らないけど、評判はよく聞く」
「へー、じゃあこの人に決めた!」
「おい、ちょっと待て」

 おれがメッセージ文を入力しているとまたしても駿に止められる。

「何?」
「お前裏垢作ってねぇだろ、表垢から連絡する気か?」
「ふふーん、ちゃんと作ったんだぜ、ほら!」
「ほう?」

 流石におれも学習したのでバッチリ昨日用意しておいたのさ! おれは自身のアカウントを開き駿に見せる。

『コウキです!大学2年生の20歳です!よろしくお願いします!』

「ちゃんと名前も変えたし写真も後ろ姿だからバレない! これでどーよ!」
「まあ問題はねぇが、フォロワー0人の男が相手にされるかねぇ」
「うぐ、それは確かに……」
「相手だって誰でもいいわけじゃないし、人柄も顔もわからん奴からメッセージ来られても俺なら無視するね」
「じゃあどうしたらいいんだよ~」

 駿は机に突っ伏すおれをしばらく眺めると、軽く息を吐きそしておれに告げる。

「俺がその人にお前を紹介してやってもいいけど」
「えっ」

 駿は自身のスマホを開くと、とあるアカウントをおれに見せる。

「これ俺」

 そういって差し出したアカウントは、3日前に駿がおれに送りつけてきたハヤトのアカウントそのものだった。

「エ?これ、お前?」
「俺」
「マ?」
「マ。」
「……」

 3日間、おれがこの男の動画を見て抜きまくった事実が一瞬でフラッシュバックする。そういえば相手の男は駿のタイプそうなガタイの良い人ばっかだったな、とか、何か聞いたことあるような声だったな、とか、つまり駿は昔ゲイビ出てたってこと? とか妙に冷静な思考で振り返る。

 しかしやはりおれがハヤト、もとい駿のセックスを見てめちゃくちゃシコりまくった事を理解すると、全身に鳥肌が立つと同時に耳や頬が真っ赤に染まり口からは声にならない声が漏れ出ている。そしてそのおれの様子を見て駿は殴りたくなるような表情をしながら笑いをこらえている。
 
「……ふふっ」
「おまっ、ふざけんな!!!」

 やっと絞り出した声を発すると同時に始業のチャイムが鳴った。




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