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冥界の剣
第十五話 鍵
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クガイが音頭を取り、誰も異論を唱えなかった為、四人は夢現街を急いで後にした。
彼らが取り決めていた次の隠れ場所は、あろう事はクガイが初めてクムと出会ったあのお堂であった。
クゼと邂逅した場所でもあるが、元より周囲に居住者が少ない事もあり、一日二日を過ごすのには十分と判断した為である。
お堂の敷地は、クゼが引き際に起こした爆発による被害はそのままで、それだけ人の手が入っていない事の証明だ。クガイ達にとっては都合が良い。
クガイがここ最近、寝床代わりにしていた為、お堂の中に入ると片隅に茣蓙が敷かれてその上につぎはぎだらけの布団が畳まれている。
お堂の中心にはクガイ手製の囲炉裏があり、中心には凸凹の小鍋が置かれている。傍らには薬缶や縁の掛けた食器類、それにくべる為の枯れ枝が無造作に積まれていた。後は一抱えほどの水瓶とその蓋に置かれた柄杓があるきりだ。
「よしよし、何も盗まれちゃいねえな。ま、金になるもんなんか、俺は一つも持っちゃいねえがよ。それと流石に今日くらいはもう襲撃はないだろう」
「ふむ、雨漏りや隙間風が気になるが、冷え込む季節でないのは幸いだな。長く滞在するのなら修繕しなければならんが、数日なら構うまい」
ハクラは穴の開いた天井や半分外れている戸を見て眉根を寄せたが、今の状況で優先すべきことではないと自分を納得させて、お堂の中に荷物を降ろす。隠れ家から持ち出してきた敷布をお堂の床に広げ、その上に面々が靴を脱いで腰かける。
クムの右手側にハクラ、左手側にクガイ、そして対面にはアカシャという配置だ。
まず先に口を開いたのはハクラである。襲撃の詳細について、淡々と語り始める。
「隠れ家にやってきたのはセイケンと名乗る者が率いる連中だった。全員が不思議な力を持った武器を使っていた。あれが仙術武具なのだろう。
セイケン以外の者共はしばらく戦えないように叩きのめしたが、セイケンは一日も休めば復活する。セイケンは主人に仕えていると言ったが、その主人の名前やクムを狙う理由については話さなかった。襲撃は退けたが、目新しい情報はない」
「いや、クムを無事に守れたのならそれが最大の成果だ。よくやってくれたよ」
「うむ、そう言ってもらえるといくばくか気休めになる。私の方からは以上だが、次はアカシャから情報を聞きたく思うが、どうだろうか?」
「ではお話いたしましょう。クムさんが巻き込まれていると思しい事件と無尽会の関わりについて」
口元を隠す布の奥で、アカシャはいつもと変わらずに微笑んでいるだろう。クムはいよいよ自分が巻き込まれた事件の詳細を知られると、固唾を飲んでアカシャの言葉を待っている。
「まずクム様のお父君の名前はフウナン。この楽都のみならず大陸中にその名を知られた大資産家にして大冒険者であった方です。
十代前半の頃から国のみならず大陸中で大冒険を繰り広げた方で、その旅路を記した本は多くの方々の目に留まっています」
「あのフウナンですか!?」
アカシャの言う通りクムも知っている程の有名人らしい。驚くクムを他所に、クガイはハクラと視線を交わして無言の会話をしていた。
『お前さんはフウナンって知っているか?』
『いや、知らないな』
といった具合だ。共に楽都の外から来た二人でも、片やどこの生まれとも分からぬ風来坊と片や秘境中の秘境出身者となると、大陸規模の有名人の名前を知らない事もあるらしい。
ここで馬鹿正直に知らないと口にしても、アカシャの話の腰を折るのは明白であったから、二人は口を閉ざして話の続きに耳を傾ける。
「はい、そのフウナンです。大陸中を旅して多くの秘境、迷宮、異界を踏破して山のような財と世に轟く名声を得た彼は、この楽都にて最期を迎えました。大冒険の成果である膨大な財宝をこの街のどこかに隠したまま」
「あ、じゃ、じゃあ、私が追いかけまわされているのって、その財宝のありかを知っているかもしれないからですか?」
「それしか考えられません。フウナンには妻があり、子もありましたが、彼女達が受け継いだのは表向きの遺産だけで、隠された財宝について一切を知らなかったようです。
楽都の物騒な方々は血で血を洗いながら、フウナンの隠し財宝を求めて今や無尽会が最も近い場所に至り、そのほかの者達を牽制しています。ただ、彼らも財宝の隠し場所には辿り着けても、蔵の鍵を見つけられていないようで手を拱いているのです」
「なるほど。あの、同じ無尽会の人達で競っているらしいのですけれど、それは一体?」
「それは無尽会の若手筆頭株同士の功績争いです。フウナンの隠し財宝の中には希少な仙術武具はもちろん、本物の仙人の道具や神宝の類も数多く含まれています。手中に収められたなら、この都市の覇権争いに大きく利するところとなりましょう」
「でも、私は父親が誰かさえ知らないし、そんなすごい宝物のことだってなにも……」
クムにとっては理不尽でしかない隠し財宝を巡る争いの事情を聞かされて、俯いて小さな肩を震わせる少女を、ハクラは心から案じて見守っている。クガイもまたクムの穏やかならざる心中が心配だったが、彼にはアカシャに確認しなければならない事があった。
「クムが狙われる事情は分かった。そうなるとクムが財宝の蔵を開けられるか、それとも開けられないってのがはっきりするまで、狙われちまうわけだ」
「はい。彼らが財宝を諦めない限りは」
「そうなるとクゼとラドウの親玉である無尽会の会長を叩きのめして、諦めさせるのも手か」
「それはお止めになった方がよろしいかと。無尽会でもっとも強く、狡猾なのは会長です。数千年、あるいは万年を超えて生きる大仙人にして大魔導師があの方。今のクガイ様とハクラ様では大変厳しいかと」
「まあ、幹部だけであれだけやる連中だ。会長の周りにも手強いのがゴロゴロしているだろうし、悔しいが現実的ではねえわな。ところで、だ。アカシャ」
「はい」
「さっき、お前さんに教えてもらった情報なんだがな、夢現街で紙芝居をやっていた男が名前は伏せていたが、大筋で同じ話を俺にしていった」
「クガイ様に? どのような青年でしたか?」
「けばけばしい道化めいた衣装を着こんだ、毛先が薄桃色の白髪に紫水晶の瞳を持った顔の良い男だ。紙芝居の腕は大したもんだったし、おそらくだが戦いの方も相当にやる。名前はヨウゼツ」
「ヨウゼツ……私の知る限り該当する方はいらっしゃいませんが、タランダと共に調べておきましょう」
「そうしてくれると助かる。料金は……悪いが、要相談の後払いで頼む」
手持ちが寂しいというどうしようもない現実に、クガイはバツが悪そうにするのを見て、アカシャは鈴を転がしたような声で笑った。クガイを馬鹿にしたのではなく、その仕草が愛らしいのだと告げるような笑い声に、クガイはますます肩身が狭くなる。
「では、またクガイ様ご自身に対価となっていただきましょう」
「へいへい。好きにこき使ってくれ。それとな、そのヨウゼツって男の後を追っていったら、ラドウっていう連中と戦ったぜ。タランダ以外の情報屋を雇って、俺達の居場所を突き止めたようだ。ラドウ自身は仙術武具の刀剣を操る、凄腕の達人だった。
隠れ家を離れた俺を抑えつつ、その間に手勢にクムを捕まえさせる算段だったんだろう。ハクラのお陰でクムは守れたから、奴らにとっちゃ俺とハクラの存在は予想外だったろうぜ」
ラドウが直接関わったという情報の提供に、アカシャはそうですか、と答える。既にクゼが直接動いていたが、その競争相手であるラドウも自ら動いたとなればこれは価値のある情報だ。クガイなりのささやかな対価のひとつであった。
するとおそるおそるといった調子でクムが口を開く。彼女なりにこれまでの話を聞いて、考えたことがあった。
「あの! クガイさん、ハクラさん、アカシャさん、今回の件で市役所に保護してもらうのはどうなんでしょうか? 一応、私は税を納めている市民のつもりなのですけれども」
まっとうなクムの意見に、ハクラは真面目な顔のまま彼女の意見を口にする。楽都に来てから三日の彼女には、楽都の市役所ひいては統治機構について詳しくない。
「うむ、私からは良い意見を口に出来そうにない。楽都に入る時に手続した役所の人間くらいしか知らないから」
「お前さんならそうだろう。俺もそう長い方じゃないが、ここの治安を守っている都市警察の連中は犯罪者や魔界の連中への殺意が凄いのは理解している。治安の悪いあたりや立ち入り禁止の地区じゃ、しょっちゅう血みどろの殺し合いが起きているのを見ているからな。
今回の遺産争いの件は無尽会に力を着けさせてなるものかって、対抗意識を燃やすのは間違いないだろう。ただクムの身の安全は確保されても、遺産は市に没収されるんじゃねえかと思うが、アカシャ、どうだい?」
クガイはクゼとラドウら無尽会と市警察の間で大規模な戦闘が発生すると推測し、クムの身の安全だけは保証されても、相当数の死傷者が出ると推測してあまり積極的ではない様子だ。
「そうですね、市警察の長官や市長は善良な市民に対しては寛容な方ですが、同時に軍事力の強化には貪欲な方々です。フウナンの遺産の大部分は没収されて、金銭だけクム様に渡されるでしょう。
戦闘が発生すれば無尽会の完全壊滅までは目論まぬとしても、ラドウ様とクゼ様達は皆殺しにしようとされるのは間違いないかと。おそらく市警察の精鋭部隊“斬滅隊”も投入される大規模なものになりましょう」
「斬滅隊か。話だけなら俺も聞いたことがある。魔界の魔神や魔族との交戦も想定した、人間離れした連中だけ集めた精鋭って話だな。よほどの相手じゃなければ出番はないんだよな?」
「はい。過去には、楽都にて眠りに就いていた魔神の討伐や妖怪達の武装組織壊滅で名を馳せた方々です。彼らを要する市警察に保護を訴え出るのであれば、あちら側の要求の大部分を飲む形であれば、クム様の安全と今後の生活は保障されると考えてよろしいかと」
アカシャはクムの目をまっすぐに見つめて語る。あくまで推測と可能性を提示しただけで、決めるのはあくまでクムだ。クガイとハクラも意見を口にはしても、こうしろ、と指示する事はしない。
「う~ん。私としては名前も知らなかった父親の遺産なんか要らないですし、少しでも早く屋台の営業を再開したいです。そうなるとやっぱり保護を求めた方が良いのでしょうか?」
「ただあちらもそれは想定の内です。警察署に向かうまでの道に監視は置いているでしょうから、そう容易に事は運ばないと心得ておいてください。
いずれにせよ、彼らはまだクム様にこだわるでしょう。今日一日はお休みしても罰は下りませんでしょうから、ゆっくりと一晩休まれてから皆さんでご相談なさってください」
アカシャはそう言うと立ち上がり、クガイ達三人にそれぞれ一礼して頭を下げてからお堂を後にした。アカシャの気配が遠ざかり、お堂の周囲にも不審な気配がないのを確認してから、クガイが分かりやすく気を抜いて足を崩す。
考え込んでいるクムに気を抜いていいんだぞ、と暗に告げる為にわざと大仰な仕草を取ったのだ。
「少しは状況が見えてきたな。ここはあの隠れ家と比べたら居心地は決して良くはないだろうが、肩の力を抜いて楽にしなよ。あんだけ派手に戦ったんだ。クムもかなり気疲れしているだろう」
「えっと、あはは、そうですね。色々とあって確かに疲れちゃいましたね」
「まずは荷解きをしておきなよ。俺はちょいと仕込みをしてくらあ。大したものはないが、あるものは全部好きにしていいぜ。ハクラ、クムを任せる」
クガイは囲炉裏の傍に積んでいた枯れ枝を掴み取ると、お堂の外へと出る。隠れ家に仕込んだ枝矢と石弾をここでも用意する為だ。以前は自分一人が寝泊まりしているだけだったから必要なかったが、クムという守る対象が居る以上、備えは必要であった。
敷地に落ちている石畳の破片や枯れ枝も拾いながら、クガイはこれからの行動について思案していた。
「ヨウゼツはクムが鍵を持っているが、それに気づいていないと言っていたな。本当にその通りなら改めてクムに確認しておかないとか」
お堂の敷地をぐるりと囲う木塀に沿って枯れ枝を刺し、他にも数十本の枯れ枝と石礫をばらまいておく。これで悪意をもって敷地に足を踏み入れた者に、自動で襲い掛かる罠の完成だ。
お堂の敷地をぐるりと一周してから、クガイはお堂へと戻る。クガイはヨウゼツと出会い、ラドウと戦い、ハクラとクムはセイケンらに襲われて、となんとも忙しい一日となった。
せめて今夜一晩くらいは、クムにゆっくりと休んで欲しいとクガイは願って止まなかった。
クガイがお堂の外に出て、彼に勧められた通り荷物を降ろしてから、改めて敷布に腰を下ろすと気の抜けた様子で大きな溜息を零した。なんとも重く、疲れた響きの溜息だ。まだ十を少し数えただけの少女の吐いていい溜息ではない。
「はあ」
マントを羽織ったままのハクラは、クムの傍らで囲炉裏に火を起こす作業を行っていた。先に囲炉裏の下に細かく折った枯れ枝を積み重ねて置き、ハクラは両手に持った枝を勢いよくこすり合わせる。
たったそれだけの動作で、ハクラの怪力と速度によって凄まじい摩擦が生じて、二本の枝にあっという間に火が着く。それを積み重ねた枝の中に差し入れる。
パチパチという音と共に火の勢いが増してゆくのを見届けてから、ハクラはおもむろにクムを抱き寄せた。
「え、わわ、ハクラさん?」
「顔色が良くない。私にも責任のある話だが、これまでの心労が祟ったのだろう。すまないな、私がすぐにお前の状況を解決できれば何も問題はないのに」
「そんな、そんな事はありません。ハクラさんがあの日、私の護衛を買って出てくれなかったら、私は訳も分からない内にクゼさんか別の人達に攫われて、きっといいように使い捨てられていたから」
「だとしてもだ。自分一人で精一杯生きているクムに、このような理不尽な仕打ちがあっていい筈がない。私はそれを許せず、そしてお前を助けてやれない自分が情けないのだ。だから、これからするのは私の身勝手だ」
クムの返事を待たず、ハクラは抱き寄せたクムの肩に手を回して自分の方へと向き直させると、力強く、けれど優しい仕草で彼女の小さな頭を胸の内に抱き寄せる。
「あの、あの」
ハクラに抱き寄せられるのは今日二度目だが、隠れ家をセイケンらに襲撃された時とはまるで異なる状況だから、クムは間近で見るハクラの芸術品めいた美貌や甘やかな匂い、ふわふわとした民族衣装の感触やらに、思わずドギマギとしてしまう。
そうしてクムが戸惑っている間に、ハクラはクムの背中に回した左手で優しく少女の背中を撫で始める。
「怖いだろう。辛いだろう。クムは賢い。心の中の苛立ちを大声で叫んで、怒って、泣いてそれで解決しないのを理解しているから、じっと耐えている。私にはそれこそが悲しい。
クム、私に出来る事は少ないが、こうして気の済むまで胸を貸す事くらいはできる。クガイの奴はしばらくは戻ってこないだろう。彼の事は気にせず、泣きたければ思い切り泣けばいい。怒りたいなら好きなだけ怒ればいい」
ハクラはそれだけ言うと、もう言いたいことは言い切ったとばかりに口を閉ざして、ただただ幼い妹を慈しむ姉のようにクムを抱きしめ、その背中を撫で続ける。そうしてどれだけの時が経ってからか、クムの瞳からぽろぽろと大粒の涙が零れ始め
「う、ううう、うううう~~~」
それでも声を押し殺して、クムはハクラの胸に抱かれて泣き始めた。ハクラは黙って天涯孤独の少女を抱きしめ続けるのだった。
彼らが取り決めていた次の隠れ場所は、あろう事はクガイが初めてクムと出会ったあのお堂であった。
クゼと邂逅した場所でもあるが、元より周囲に居住者が少ない事もあり、一日二日を過ごすのには十分と判断した為である。
お堂の敷地は、クゼが引き際に起こした爆発による被害はそのままで、それだけ人の手が入っていない事の証明だ。クガイ達にとっては都合が良い。
クガイがここ最近、寝床代わりにしていた為、お堂の中に入ると片隅に茣蓙が敷かれてその上につぎはぎだらけの布団が畳まれている。
お堂の中心にはクガイ手製の囲炉裏があり、中心には凸凹の小鍋が置かれている。傍らには薬缶や縁の掛けた食器類、それにくべる為の枯れ枝が無造作に積まれていた。後は一抱えほどの水瓶とその蓋に置かれた柄杓があるきりだ。
「よしよし、何も盗まれちゃいねえな。ま、金になるもんなんか、俺は一つも持っちゃいねえがよ。それと流石に今日くらいはもう襲撃はないだろう」
「ふむ、雨漏りや隙間風が気になるが、冷え込む季節でないのは幸いだな。長く滞在するのなら修繕しなければならんが、数日なら構うまい」
ハクラは穴の開いた天井や半分外れている戸を見て眉根を寄せたが、今の状況で優先すべきことではないと自分を納得させて、お堂の中に荷物を降ろす。隠れ家から持ち出してきた敷布をお堂の床に広げ、その上に面々が靴を脱いで腰かける。
クムの右手側にハクラ、左手側にクガイ、そして対面にはアカシャという配置だ。
まず先に口を開いたのはハクラである。襲撃の詳細について、淡々と語り始める。
「隠れ家にやってきたのはセイケンと名乗る者が率いる連中だった。全員が不思議な力を持った武器を使っていた。あれが仙術武具なのだろう。
セイケン以外の者共はしばらく戦えないように叩きのめしたが、セイケンは一日も休めば復活する。セイケンは主人に仕えていると言ったが、その主人の名前やクムを狙う理由については話さなかった。襲撃は退けたが、目新しい情報はない」
「いや、クムを無事に守れたのならそれが最大の成果だ。よくやってくれたよ」
「うむ、そう言ってもらえるといくばくか気休めになる。私の方からは以上だが、次はアカシャから情報を聞きたく思うが、どうだろうか?」
「ではお話いたしましょう。クムさんが巻き込まれていると思しい事件と無尽会の関わりについて」
口元を隠す布の奥で、アカシャはいつもと変わらずに微笑んでいるだろう。クムはいよいよ自分が巻き込まれた事件の詳細を知られると、固唾を飲んでアカシャの言葉を待っている。
「まずクム様のお父君の名前はフウナン。この楽都のみならず大陸中にその名を知られた大資産家にして大冒険者であった方です。
十代前半の頃から国のみならず大陸中で大冒険を繰り広げた方で、その旅路を記した本は多くの方々の目に留まっています」
「あのフウナンですか!?」
アカシャの言う通りクムも知っている程の有名人らしい。驚くクムを他所に、クガイはハクラと視線を交わして無言の会話をしていた。
『お前さんはフウナンって知っているか?』
『いや、知らないな』
といった具合だ。共に楽都の外から来た二人でも、片やどこの生まれとも分からぬ風来坊と片や秘境中の秘境出身者となると、大陸規模の有名人の名前を知らない事もあるらしい。
ここで馬鹿正直に知らないと口にしても、アカシャの話の腰を折るのは明白であったから、二人は口を閉ざして話の続きに耳を傾ける。
「はい、そのフウナンです。大陸中を旅して多くの秘境、迷宮、異界を踏破して山のような財と世に轟く名声を得た彼は、この楽都にて最期を迎えました。大冒険の成果である膨大な財宝をこの街のどこかに隠したまま」
「あ、じゃ、じゃあ、私が追いかけまわされているのって、その財宝のありかを知っているかもしれないからですか?」
「それしか考えられません。フウナンには妻があり、子もありましたが、彼女達が受け継いだのは表向きの遺産だけで、隠された財宝について一切を知らなかったようです。
楽都の物騒な方々は血で血を洗いながら、フウナンの隠し財宝を求めて今や無尽会が最も近い場所に至り、そのほかの者達を牽制しています。ただ、彼らも財宝の隠し場所には辿り着けても、蔵の鍵を見つけられていないようで手を拱いているのです」
「なるほど。あの、同じ無尽会の人達で競っているらしいのですけれど、それは一体?」
「それは無尽会の若手筆頭株同士の功績争いです。フウナンの隠し財宝の中には希少な仙術武具はもちろん、本物の仙人の道具や神宝の類も数多く含まれています。手中に収められたなら、この都市の覇権争いに大きく利するところとなりましょう」
「でも、私は父親が誰かさえ知らないし、そんなすごい宝物のことだってなにも……」
クムにとっては理不尽でしかない隠し財宝を巡る争いの事情を聞かされて、俯いて小さな肩を震わせる少女を、ハクラは心から案じて見守っている。クガイもまたクムの穏やかならざる心中が心配だったが、彼にはアカシャに確認しなければならない事があった。
「クムが狙われる事情は分かった。そうなるとクムが財宝の蔵を開けられるか、それとも開けられないってのがはっきりするまで、狙われちまうわけだ」
「はい。彼らが財宝を諦めない限りは」
「そうなるとクゼとラドウの親玉である無尽会の会長を叩きのめして、諦めさせるのも手か」
「それはお止めになった方がよろしいかと。無尽会でもっとも強く、狡猾なのは会長です。数千年、あるいは万年を超えて生きる大仙人にして大魔導師があの方。今のクガイ様とハクラ様では大変厳しいかと」
「まあ、幹部だけであれだけやる連中だ。会長の周りにも手強いのがゴロゴロしているだろうし、悔しいが現実的ではねえわな。ところで、だ。アカシャ」
「はい」
「さっき、お前さんに教えてもらった情報なんだがな、夢現街で紙芝居をやっていた男が名前は伏せていたが、大筋で同じ話を俺にしていった」
「クガイ様に? どのような青年でしたか?」
「けばけばしい道化めいた衣装を着こんだ、毛先が薄桃色の白髪に紫水晶の瞳を持った顔の良い男だ。紙芝居の腕は大したもんだったし、おそらくだが戦いの方も相当にやる。名前はヨウゼツ」
「ヨウゼツ……私の知る限り該当する方はいらっしゃいませんが、タランダと共に調べておきましょう」
「そうしてくれると助かる。料金は……悪いが、要相談の後払いで頼む」
手持ちが寂しいというどうしようもない現実に、クガイはバツが悪そうにするのを見て、アカシャは鈴を転がしたような声で笑った。クガイを馬鹿にしたのではなく、その仕草が愛らしいのだと告げるような笑い声に、クガイはますます肩身が狭くなる。
「では、またクガイ様ご自身に対価となっていただきましょう」
「へいへい。好きにこき使ってくれ。それとな、そのヨウゼツって男の後を追っていったら、ラドウっていう連中と戦ったぜ。タランダ以外の情報屋を雇って、俺達の居場所を突き止めたようだ。ラドウ自身は仙術武具の刀剣を操る、凄腕の達人だった。
隠れ家を離れた俺を抑えつつ、その間に手勢にクムを捕まえさせる算段だったんだろう。ハクラのお陰でクムは守れたから、奴らにとっちゃ俺とハクラの存在は予想外だったろうぜ」
ラドウが直接関わったという情報の提供に、アカシャはそうですか、と答える。既にクゼが直接動いていたが、その競争相手であるラドウも自ら動いたとなればこれは価値のある情報だ。クガイなりのささやかな対価のひとつであった。
するとおそるおそるといった調子でクムが口を開く。彼女なりにこれまでの話を聞いて、考えたことがあった。
「あの! クガイさん、ハクラさん、アカシャさん、今回の件で市役所に保護してもらうのはどうなんでしょうか? 一応、私は税を納めている市民のつもりなのですけれども」
まっとうなクムの意見に、ハクラは真面目な顔のまま彼女の意見を口にする。楽都に来てから三日の彼女には、楽都の市役所ひいては統治機構について詳しくない。
「うむ、私からは良い意見を口に出来そうにない。楽都に入る時に手続した役所の人間くらいしか知らないから」
「お前さんならそうだろう。俺もそう長い方じゃないが、ここの治安を守っている都市警察の連中は犯罪者や魔界の連中への殺意が凄いのは理解している。治安の悪いあたりや立ち入り禁止の地区じゃ、しょっちゅう血みどろの殺し合いが起きているのを見ているからな。
今回の遺産争いの件は無尽会に力を着けさせてなるものかって、対抗意識を燃やすのは間違いないだろう。ただクムの身の安全は確保されても、遺産は市に没収されるんじゃねえかと思うが、アカシャ、どうだい?」
クガイはクゼとラドウら無尽会と市警察の間で大規模な戦闘が発生すると推測し、クムの身の安全だけは保証されても、相当数の死傷者が出ると推測してあまり積極的ではない様子だ。
「そうですね、市警察の長官や市長は善良な市民に対しては寛容な方ですが、同時に軍事力の強化には貪欲な方々です。フウナンの遺産の大部分は没収されて、金銭だけクム様に渡されるでしょう。
戦闘が発生すれば無尽会の完全壊滅までは目論まぬとしても、ラドウ様とクゼ様達は皆殺しにしようとされるのは間違いないかと。おそらく市警察の精鋭部隊“斬滅隊”も投入される大規模なものになりましょう」
「斬滅隊か。話だけなら俺も聞いたことがある。魔界の魔神や魔族との交戦も想定した、人間離れした連中だけ集めた精鋭って話だな。よほどの相手じゃなければ出番はないんだよな?」
「はい。過去には、楽都にて眠りに就いていた魔神の討伐や妖怪達の武装組織壊滅で名を馳せた方々です。彼らを要する市警察に保護を訴え出るのであれば、あちら側の要求の大部分を飲む形であれば、クム様の安全と今後の生活は保障されると考えてよろしいかと」
アカシャはクムの目をまっすぐに見つめて語る。あくまで推測と可能性を提示しただけで、決めるのはあくまでクムだ。クガイとハクラも意見を口にはしても、こうしろ、と指示する事はしない。
「う~ん。私としては名前も知らなかった父親の遺産なんか要らないですし、少しでも早く屋台の営業を再開したいです。そうなるとやっぱり保護を求めた方が良いのでしょうか?」
「ただあちらもそれは想定の内です。警察署に向かうまでの道に監視は置いているでしょうから、そう容易に事は運ばないと心得ておいてください。
いずれにせよ、彼らはまだクム様にこだわるでしょう。今日一日はお休みしても罰は下りませんでしょうから、ゆっくりと一晩休まれてから皆さんでご相談なさってください」
アカシャはそう言うと立ち上がり、クガイ達三人にそれぞれ一礼して頭を下げてからお堂を後にした。アカシャの気配が遠ざかり、お堂の周囲にも不審な気配がないのを確認してから、クガイが分かりやすく気を抜いて足を崩す。
考え込んでいるクムに気を抜いていいんだぞ、と暗に告げる為にわざと大仰な仕草を取ったのだ。
「少しは状況が見えてきたな。ここはあの隠れ家と比べたら居心地は決して良くはないだろうが、肩の力を抜いて楽にしなよ。あんだけ派手に戦ったんだ。クムもかなり気疲れしているだろう」
「えっと、あはは、そうですね。色々とあって確かに疲れちゃいましたね」
「まずは荷解きをしておきなよ。俺はちょいと仕込みをしてくらあ。大したものはないが、あるものは全部好きにしていいぜ。ハクラ、クムを任せる」
クガイは囲炉裏の傍に積んでいた枯れ枝を掴み取ると、お堂の外へと出る。隠れ家に仕込んだ枝矢と石弾をここでも用意する為だ。以前は自分一人が寝泊まりしているだけだったから必要なかったが、クムという守る対象が居る以上、備えは必要であった。
敷地に落ちている石畳の破片や枯れ枝も拾いながら、クガイはこれからの行動について思案していた。
「ヨウゼツはクムが鍵を持っているが、それに気づいていないと言っていたな。本当にその通りなら改めてクムに確認しておかないとか」
お堂の敷地をぐるりと囲う木塀に沿って枯れ枝を刺し、他にも数十本の枯れ枝と石礫をばらまいておく。これで悪意をもって敷地に足を踏み入れた者に、自動で襲い掛かる罠の完成だ。
お堂の敷地をぐるりと一周してから、クガイはお堂へと戻る。クガイはヨウゼツと出会い、ラドウと戦い、ハクラとクムはセイケンらに襲われて、となんとも忙しい一日となった。
せめて今夜一晩くらいは、クムにゆっくりと休んで欲しいとクガイは願って止まなかった。
クガイがお堂の外に出て、彼に勧められた通り荷物を降ろしてから、改めて敷布に腰を下ろすと気の抜けた様子で大きな溜息を零した。なんとも重く、疲れた響きの溜息だ。まだ十を少し数えただけの少女の吐いていい溜息ではない。
「はあ」
マントを羽織ったままのハクラは、クムの傍らで囲炉裏に火を起こす作業を行っていた。先に囲炉裏の下に細かく折った枯れ枝を積み重ねて置き、ハクラは両手に持った枝を勢いよくこすり合わせる。
たったそれだけの動作で、ハクラの怪力と速度によって凄まじい摩擦が生じて、二本の枝にあっという間に火が着く。それを積み重ねた枝の中に差し入れる。
パチパチという音と共に火の勢いが増してゆくのを見届けてから、ハクラはおもむろにクムを抱き寄せた。
「え、わわ、ハクラさん?」
「顔色が良くない。私にも責任のある話だが、これまでの心労が祟ったのだろう。すまないな、私がすぐにお前の状況を解決できれば何も問題はないのに」
「そんな、そんな事はありません。ハクラさんがあの日、私の護衛を買って出てくれなかったら、私は訳も分からない内にクゼさんか別の人達に攫われて、きっといいように使い捨てられていたから」
「だとしてもだ。自分一人で精一杯生きているクムに、このような理不尽な仕打ちがあっていい筈がない。私はそれを許せず、そしてお前を助けてやれない自分が情けないのだ。だから、これからするのは私の身勝手だ」
クムの返事を待たず、ハクラは抱き寄せたクムの肩に手を回して自分の方へと向き直させると、力強く、けれど優しい仕草で彼女の小さな頭を胸の内に抱き寄せる。
「あの、あの」
ハクラに抱き寄せられるのは今日二度目だが、隠れ家をセイケンらに襲撃された時とはまるで異なる状況だから、クムは間近で見るハクラの芸術品めいた美貌や甘やかな匂い、ふわふわとした民族衣装の感触やらに、思わずドギマギとしてしまう。
そうしてクムが戸惑っている間に、ハクラはクムの背中に回した左手で優しく少女の背中を撫で始める。
「怖いだろう。辛いだろう。クムは賢い。心の中の苛立ちを大声で叫んで、怒って、泣いてそれで解決しないのを理解しているから、じっと耐えている。私にはそれこそが悲しい。
クム、私に出来る事は少ないが、こうして気の済むまで胸を貸す事くらいはできる。クガイの奴はしばらくは戻ってこないだろう。彼の事は気にせず、泣きたければ思い切り泣けばいい。怒りたいなら好きなだけ怒ればいい」
ハクラはそれだけ言うと、もう言いたいことは言い切ったとばかりに口を閉ざして、ただただ幼い妹を慈しむ姉のようにクムを抱きしめ、その背中を撫で続ける。そうしてどれだけの時が経ってからか、クムの瞳からぽろぽろと大粒の涙が零れ始め
「う、ううう、うううう~~~」
それでも声を押し殺して、クムはハクラの胸に抱かれて泣き始めた。ハクラは黙って天涯孤独の少女を抱きしめ続けるのだった。
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