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1章 ダンジョンと少女

人間か魔物か

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『また、ずいぶんと大物だな』
 村に入る際に言われたその言葉の真意を、見抜くべきだったのかもしれない……

 村に戻った凍花は、ひとまず獣人の子を屋根裏部屋に寝かせて、ロゼッタに相談することにした。
 小さな子がダンジョンの近くで一人だったことと、人間ではないが大人しそうであったこと。

「まぁええよ。トラちゃんも上にいるんやろ?
 それなら何かあっても大丈夫やと思うし」
 そう言ってくれるロゼッタには、感謝の気持ちでいっぱいだ。
 とにかく依頼の報告も必要だったため、店番を任せて申し訳なく思いつつも凍花はギルドへ向かうことにした。

 ギルド長の部屋へ案内され、凍花は見たままのダンジョンの姿を報告する。
 入り口から奥まではほぼ一本道であり、どの道もコアの存在は確認できなかったこと。
 出てくる魔物はスライムのみで、帰りにはも見受けられず、新たな魔物の発生は無いのではないかという見解。
 そして美味しそうな山菜や果実がなっていたので、どれが食べられるのかを教えてほしいこと。

「コアが無いってことは時々あるんだが……
 よしわかった。今回のダンジョンについても問題無しってことで良さそうだな。
 資源が取れねぇのは残念だが、最初はなっから無かったと思えば、なんてことはねぇ」
 ギルド長はそう言うと、凍花に報酬として銀貨を3枚手渡す。
「300ラメも貰っていいんですか?」
 普段見る銅貨や小銀貨の上の貨幣で、小銀貨の10倍の価値を持つ銀貨。
 それを3枚ともなれば、日本円にして約10万円以上であろう。

「貰っちゃっていいんですよ。
 テバちゃんの稼ぐはずだったも含まれてますから」
 凍花の横に立っていたプリトが、突如そんな事を言うもので、凍花にはそれが何の
ことなのか理解できない。
 聞けば、アレンが代わりにイベントで稼いでくれていたという事だったそうだ。

「受付で見たゴンズの表情ったら、ヤバかったわよー。
 あれはもう、テバちゃんに完全敗北を認めたって顔だったわね」
 プリトがそう言って笑い、ギルド長は頭を掻きむしっている。
「あまり力をーー」

 ギルド長は凍花に忠告をしようとする。
 それが凍花のためであり、村のためであると思ってのことだ。
 そもそも魔物の召喚自体、情報がなく目をつけられやすいのだ。
 大の大人が好き勝手やって目をつけられて理想されるのなら自業自得かもしれないが、それを使っているのは小さな少女に他ならない。

 物事が判断つくまでは……という事を言いたかったわけなのだが。

 コンコンッ
「すみませんギルド長!」

 扉の向こうから声が聞こえたため、その忠告を遮られてしまう。
 扉が開かれ、職員の1人は村に発生したトラブルについて報告し始める。

「魔物がだと?」
「はい。話では広場の近くで目撃されて、屋根伝いに逃げるとどこかに隠れてしまったと……
 後片付けをしていた実行委員の者が多く目撃しています」

 逃げた魔物が村のどこかに潜んでいるということで、ギルドではすぐに討伐依頼が貼り出されることになるそうだ。
 それと同時に、屋内にいた冒険者全てに声がかかり、ギルドの中は一瞬にして騒がしくなってしまう。

「テバちゃんも一回帰った方がいいみたいやね。
 疲れただろうし、今日のところは男たちに任せておきなよ」
「うん……邪魔になりそうだし、そうします」
 マイペースでこなす採取依頼とは違い、冒険者同士で連携する様子であった。

 そうして凍花はギルドを出て、パン屋へ急ぎ戻る。

 そもそも魔物は逃げるものなのか?
 広場、屋根伝い、変わった出来事。

 それらが一つの答えを導き出すヒントであったことは、後になってようやく知ることになった凍花であった。

「……ロゼッタさん?
 ……っ!?」
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