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【第10話】困惑
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パティは新たに出現した核を即時破壊して、雨の中帰路につく。
寒さもあったのだろうが、何よりもマナの消費が一番堪える……
魔族だって人なのだ……体調を崩せば熱も出る。
今はまだ良い。
暖かい布団が用意され、襲われる心配もまず無いだろう。
「ようやくお嬢様のお帰りか?」
町の入り口でベルクラウスはパティを見つけてそう呟いた。
だがよく見れば、酷い格好をしており息も絶え絶えなのである。
当然パティの姿を見て焦ったであろう。
「いったいどうしたんだ⁈
おいっ、連れてってやるから乗れっ」
パティは知っている。ベルクラウスは口は悪いが根は優しいのだ。
ただ、この時は近寄られて困るのも事実。
「ほ……放っといてちょうだい……
誰も待ってて……なんて、頼んでない……」
きっとアビルマの言っていた話なんかを聞いて、勝手に待っていたのだろう。
そしてその予想は正しかった。
「ちっ……そうかいそうかい。
まぁ無事がわかって安心したつもりだが、周りの心配は関係ないってか?
あの小僧もそうだが、お前もまだガキだってことだな」
イライラした様子でベルクラウスは去っていく。
ここまで来たのだからもう危険など何も無いのだ。
「待つだけ無駄だとわかるだろうに……」
気持ちは嬉しいのだが、それは自身にではなく他に向けてくれればいいのに。
ただでさえ怖い顔つきで避けられがちなのだから……
そう小さくほくそ笑んで、パティはフラフラとギルドに戻っていった。
こんな時間になるとは思っていなかった。
朝は早く戻れるだろうと言って出てきたのだ。
ここ数年、出現頻度が増えたとはいえ、日に二度も出てくるなど滅多にない。
それが既に今年に入って3回目なのだから、不穏な様子は伺えていた。
「やはり言うべき……か」
これまではどうにかヴァルと2人で始末できていたが、このペースではマナがもたない。
それに、このまま同じことを続けていても、永遠に終わらない防衛戦を続けるのみである。
様々な気持ちが渦巻き、体調も相まって考えがまとまらない。
そうこうしている内にギルドの前に立つ。
とにかく今は……
「疲れた……早く横になりたいわね……」
全身を使って入り口の扉を押し開ける。
ボーッとする中、暖かいギルドに入るとアビルマの姿が見える。
やっと落ち着けるのだと安心した矢先、急に背中に何かが触れた。
「シン……」
戦いと2度の能力解放でマナの感覚は鋭敏になっていた。
いや、疲れもあって制御など出来やしなかったのだろう。
かけられたタオルを振り払ってしまった際、間違いなく手を見られてしまった。
すぐに隠しはしたが、驚いたシンの表情が頭から離れない……
しまったなぁ……なんでこんな失敗をしちゃうかなぁ……
絶対に変に思われただろう。
いや、そんなことよりもやらなければならないこともある……
だが、パティはもう何も考える気にはなれなかった。
今は目の前のアビルマの腕の中に、静かに埋もれていくのみであった……
次に気付いた時には既に布団の中で、シンの姿はそこにはない。
スッと自分の腕を上げると、もう人の手に戻っていた。
未だボーッとする頭で思い返しても、間違いなくシンは見たと思う。
次に会った時は聞いてくるだろうか?
いや、それとももう来なくなるだろうか?
またコピーに大切なものを奪われてしまうのか……
こうしていてもモヤモヤした気持ちが晴れることはない。
起き上がり窓際に立つと、深夜にも関わらず雨上がりの町の風景が、いつもより賑やかそうに感じられてしまった。
「ほんとうに……ズルいなぁ……」
こんなにも皆は楽しそうだというのに、自分は一体何のために生きているのか……
熱に浮かされてそう思うだけかもしれないが、自分だけが損をしているようで口惜しかった。
視界もぼんやりとし、窓際でへたり込む。
暗がりの部屋の隅、うずくまってパティは小さく泣いていたのだった……
寒さもあったのだろうが、何よりもマナの消費が一番堪える……
魔族だって人なのだ……体調を崩せば熱も出る。
今はまだ良い。
暖かい布団が用意され、襲われる心配もまず無いだろう。
「ようやくお嬢様のお帰りか?」
町の入り口でベルクラウスはパティを見つけてそう呟いた。
だがよく見れば、酷い格好をしており息も絶え絶えなのである。
当然パティの姿を見て焦ったであろう。
「いったいどうしたんだ⁈
おいっ、連れてってやるから乗れっ」
パティは知っている。ベルクラウスは口は悪いが根は優しいのだ。
ただ、この時は近寄られて困るのも事実。
「ほ……放っといてちょうだい……
誰も待ってて……なんて、頼んでない……」
きっとアビルマの言っていた話なんかを聞いて、勝手に待っていたのだろう。
そしてその予想は正しかった。
「ちっ……そうかいそうかい。
まぁ無事がわかって安心したつもりだが、周りの心配は関係ないってか?
あの小僧もそうだが、お前もまだガキだってことだな」
イライラした様子でベルクラウスは去っていく。
ここまで来たのだからもう危険など何も無いのだ。
「待つだけ無駄だとわかるだろうに……」
気持ちは嬉しいのだが、それは自身にではなく他に向けてくれればいいのに。
ただでさえ怖い顔つきで避けられがちなのだから……
そう小さくほくそ笑んで、パティはフラフラとギルドに戻っていった。
こんな時間になるとは思っていなかった。
朝は早く戻れるだろうと言って出てきたのだ。
ここ数年、出現頻度が増えたとはいえ、日に二度も出てくるなど滅多にない。
それが既に今年に入って3回目なのだから、不穏な様子は伺えていた。
「やはり言うべき……か」
これまではどうにかヴァルと2人で始末できていたが、このペースではマナがもたない。
それに、このまま同じことを続けていても、永遠に終わらない防衛戦を続けるのみである。
様々な気持ちが渦巻き、体調も相まって考えがまとまらない。
そうこうしている内にギルドの前に立つ。
とにかく今は……
「疲れた……早く横になりたいわね……」
全身を使って入り口の扉を押し開ける。
ボーッとする中、暖かいギルドに入るとアビルマの姿が見える。
やっと落ち着けるのだと安心した矢先、急に背中に何かが触れた。
「シン……」
戦いと2度の能力解放でマナの感覚は鋭敏になっていた。
いや、疲れもあって制御など出来やしなかったのだろう。
かけられたタオルを振り払ってしまった際、間違いなく手を見られてしまった。
すぐに隠しはしたが、驚いたシンの表情が頭から離れない……
しまったなぁ……なんでこんな失敗をしちゃうかなぁ……
絶対に変に思われただろう。
いや、そんなことよりもやらなければならないこともある……
だが、パティはもう何も考える気にはなれなかった。
今は目の前のアビルマの腕の中に、静かに埋もれていくのみであった……
次に気付いた時には既に布団の中で、シンの姿はそこにはない。
スッと自分の腕を上げると、もう人の手に戻っていた。
未だボーッとする頭で思い返しても、間違いなくシンは見たと思う。
次に会った時は聞いてくるだろうか?
いや、それとももう来なくなるだろうか?
またコピーに大切なものを奪われてしまうのか……
こうしていてもモヤモヤした気持ちが晴れることはない。
起き上がり窓際に立つと、深夜にも関わらず雨上がりの町の風景が、いつもより賑やかそうに感じられてしまった。
「ほんとうに……ズルいなぁ……」
こんなにも皆は楽しそうだというのに、自分は一体何のために生きているのか……
熱に浮かされてそう思うだけかもしれないが、自分だけが損をしているようで口惜しかった。
視界もぼんやりとし、窓際でへたり込む。
暗がりの部屋の隅、うずくまってパティは小さく泣いていたのだった……
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