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雨の降る日は

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「いやー、本当にすごい動きでしたよ。
 僕なんか一体倒すだけでも大変だっていうのに」
 ストライクバードの林から戻り、シンはギルドで報告を行っていた。
 持ち帰った魔物は12匹、これだけあれば当面の生活費には困らない。
「私は師匠に頼まれて見に行ったまでだ。
 報酬は全てシンが受け取ればいい」
 それは悪い……と思いながらも、今日は全く狩りをしていないわけで。
「じゃ、じゃあお言葉に甘え……ようかなぁ……」
 シンは恥ずかしかった。
 自力ではほとんど狩ることができないどころか、大枚を叩いて得た剣の効果もろくに使えていない。
 それでいてカッコつけるためにパティへのプレゼントまで拵えていたのだ。
 自分は一体何をしているのだろうかと考えてしまう。

「や、やっぱり僕……ちょっと行ってきます!」
「あっ、おいシンっ!」
 呼び止めるフェルトと積まれたストライクバードを残し、シンはギルドから出る。
 稼ぐために町に来たというに、未だ自分の力で稼いでるとは到底言えない。
 噂話や魔物の情報ならそれなりに集めてきた。
 初心者でも比較的簡単に倒せて、その爪や牙が研磨剤となる魔物、ランビット。
 ピアラビット同様に小さなうさぎのような魔物で、こちらは倒木を齧っている。
 噛まれればかなり痛いが、素材としての価値は薬草よりも数倍は高い。

 そんなシンを見送ることとなったギルド内は、なにやら妙な雰囲気になってしまう。
「おいおい……なんか不穏気な言い方だったな。
 もし町の外に行くなら、今からじゃ日暮れには間に合わんのじゃないか?」
 1人の冒険者がそう口にしたのを皮切りに、アビルマも続けて言う。
「今日は雲の動きが怪しいからねぇ。
 夜まで降らなきゃいいが……」
 その後も追いかけようかと提案したトゥーラは、行き先も分からないのに迂闊に出歩くんじゃないよと言われ断念する。

 成果をあげられない新米冒険者が、躍起になって魔物狩りに向かうのはよくあること。
 朝の早い時間や天気の良い日ならば特に問題は起きないが、その条件が外れれば危険度は一気に増す。
 周囲に人の気配がなくなるのだ。
 なにかあった場合、助かる可能性は低くなる。
 それも夜間であれば捜索すら困難を極めてしまう。

 アビルマは町の出入り口付近で情報を集めるようにトゥーラへ指示を出す。
 町の中であれば問題はそう起こるまいと考えてのことだ。
「心配をかけさせるなよ新米……」
 中にはそうボヤきながらも近くの狩場を確認に回ってくれる冒険者もいる。
 誰だって駆け出しの頃はあるのだし、挑戦するのはまだ構わない。
 だが、勝手をするのは論外だ。
 周りを信用せず裏切る行為に等しく、その為に不利益を被る者も現れる。
 この時のシンは、どうにか冒険者として稼ぎを生み出したい一心で、周囲が見えてはいなかったのである……
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